採用の知恵袋

2023年01月18日

#アルバイト・パート#学生・若年層#育成・定着#飲食業

採用の知恵袋 2023年1月号 ―「アルバイトがすぐ辞める」はどうして?―

アルバイトがすぐ辞めてしまった。その理由を「最近の若い人は長続きしないから...」で片付けてはいないでしょうか。人材不足が深刻な今、せっかく採用できた人材には、やはり長く活躍して欲しいものです。新人アルバイトが今後も長く働き、一人前に成長するために、企業にはどのような取り組みが求められるでしょうか。
「採用の知恵袋」では、企業から寄せられる質問に対して、調査研究の結果や企業・行政団体との取り組み事例をもとに回答します。今回はセンター長の宇佐川が答えます。

Q.

繁華街で飲食店を経営しています。学生のアルバイトを定期的に採用していますが、最近入社したうちの数名が、入ってすぐに辞めてしまいました。これからも学生採用に力を入れたいのですが、もっと長く働いてもらうためには何ができるでしょうか。
(中国四国エリア/飲食業)

A.

「採用」がゴールになってはいませんか? 採用して終わりではなく、長く働いて活躍してもらうには、入社後の育成が欠かせません。一方、忙しくて育成まで手が回らない、という声も聞かれます。しかし、育成といっても、必ずしもいちからマニュアルを作らなければいけない、人員体制を見直さなければいけない、という訳ではありません。学生アルバイトとコミュニケーションを重ねて、「放置されている」と不安に思わせないための取り組みが必要です。

解説

◇仕事の多さや忙しさが、飲食業の退職理由・改善点の上位に

弊社調査(ジョブズコミュニティレポート2022年12月号)で、1年前と比べた人手不足について事業者にアンケートをおこなったところ、飲食業では「1年前よりも人手不足が悪化した」が69.2%、「1年前と同程度の人手不足を感じる」が23.8%に上り、合計9割以上の飲食事業者で人手不足が悪化・継続していることが分かりました。人手不足が深刻な状況で、コストをかけて採用できたアルバイトが早期退職してしまうのは、何としても避けたいことでしょう。

学生アルバイトの早期退職理由を考えるにあたって、まずは弊社が実施した「飲食業での働き方の実態・イメージ調査」より、飲食業の退職理由や、飲食業就業者がどのような課題を感じているのかを見ていきます。

飲食業を退職した人の退職理由の上位として、「一時的に就いた仕事だから」や給与への不満のほか、「仕事内容が体力的にきついから」「仕事量が多いから」にも多くの回答が集まっています。

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また、飲食業で働いている人に、現在の勤務先で必要だと思う改善点を聞いたところ、「パート・アルバイト・契約社員の増員による業務負荷の軽減」が1位、「正社員の増員による業務負荷の軽減」が2位タイという結果でした。

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どちらの結果からも、業務負荷の重さが、飲食業で働く人が不満を感じやすい要因になっていると言えそうです。
※調査結果の詳細は、レポート本文からご覧いただけます

◇忙しさを理由に、新人育成がなおざりに

早期退職してしまう学生アルバイトのケースを考えてみましょう。入社直後は、仕事を覚えることや、アルバイトと学業の両立に慣れることに必死な時期です。学生の場合、初めてのアルバイトという人もいるため、仕事内容や日々の生活のこと、職場の人間関係など、不安なことは多岐にわたるでしょう。そうした不安を抱える学生に必要なのは、業務負荷の軽減よりも、「ここでならアルバイトを続けられる」という気持ちを持てることです。

しかし、新人育成をする立場にある店長や先輩従業員が忙殺されていると、アルバイトが入社しても、育成に十分な労力を割くことができません。その結果、入社すぐで何も分からないなかで放置され、学生は「誰も教えてくれない」「皆忙しそうで質問できない」という状況に陥り、「ここでは続けられない」とすぐに退職を決めることも十分考えられます。

◇コミュニケーションを重ねて、「放置されていない」安心感を

「分かってはいるけど、そこまで余裕がない…」ということもあるでしょう。十分に時間をとって育成できなくても、まずはコミュニケーションを丁寧に重ねることで、「放置されている訳ではない」という安心感を新人アルバイトに持ってもらうことが欠かせません。

例えば、アルバイト初日のオリエンテーションで、「手が回らなくて、丁寧に教えられないこともあるかもしれない」と正直に伝えておく。周りが忙しくて質問できないという状況に陥らないように、「店長や先輩従業員が忙しそうにしていても、気兼ねなく質問して欲しい」や、「忙しくてすぐ教えられなくても、後で必ず説明する」ことを約束する。アルバイトが始まってからは、少しでも手の空いたタイミングで、「何か困ったことはない?」と小まめに声がけすることも効果的です。先輩スタッフを育成担当にするなど、職場全体で新人アルバイトを育てることもできるでしょう。

新たにアルバイトを受け入れるときは、どうしても労力がかかるものです。しかし、忙しいからといって育成を全くしなければ、新人アルバイトはどうしていいか分からずに、すぐ退職してしまうかもしれません。

マニュアル作成などまで手が回らなくても、まずは新人アルバイトとしっかりコミュニケーションを取るところから始めることで、定着が進み、貴社で長く活躍してもらえる人材が育つのではないでしょうか。