各種調査
2023年06月16日
アルバイトが見つからない高校生と、人材不足の職場 -「<学生版>求職者の動向・意識調査2023」分析レポート-
人材不足が一段と厳しくなり、「人が足りない」「採用できない」という課題に直面する企業が増える一方、2023年1月に実施した「<学生版>求職者の動向・意識調査2023」の結果、特に高校生が、アルバイトをしたくてもアルバイトが見つかりづらい状況にあることが分かりました。人を採用したい企業はあるものの、高校生は働けない。本レポートでは、このミスマッチが起きている実態を示したうえで、その理由と、高校生アルバイトの可能性について考えます。企業の皆様においては、高校生採用が人材不足解消の有効な打ち手になりうるのかなどを、本レポートを通して検討いただけると幸いです。
調査ダイジェスト
◆ アルバイトを探しても、10人中3~4人しか見つからない
はじめに、高校生のアルバイト探しの実態を見ていきます。「<学生版>求職者の動向・意識調査2023」で最近1年以内(2022年1月~12月)におこなったアルバイト探しの決定状況を聞いたところ、結果は以下の通りでした。「仕事が決まったので終了した」と答えた高校生は35.2%で、アルバイト探しをしても、10人中3~4人しかアルバイト先が決まらなかったことが分かります。なお、大学生等は61.6%で、26.4ポイントの差が開いています。
また、高校生がアルバイト探しに苦労していることは、タウンワークのフリーワード検索の結果からも見受けられます。「2023年2月 タウンワーク求人検索ワードデータ」より、各地域で検索されているフリーワードの上位を見ると、「高校生」が全地域で5位以内に入り、東北・北陸・甲信越・中国・四国・九州・沖縄では2位。アルバイト先が見つかりづらい状況で、高校生を積極的に募集している求人が探されていることが予想されます。
一方で、企業の採用活動にも目を向けてみます。東京都新宿区を取り上げると、2023年5月11日時点、タウンワークに掲載されている求人は全部で11,213件、そのうち検索条件に「大学生歓迎」が含まれるものが5,557件に対し、「高校生応援」は1,582件という結果でした。「高校生応援」でないと応募できないという訳ではないですが、全体の14.1%、「大学生歓迎」の28.5%に留まり、高校生を積極的に募集している企業は限定的だと言えそうです。
◆ 高校生と大学生等で、働ける時間・日数に違いはあるのか
高校生のアルバイト探しが比較的難しいことが分かりましたが、その理由は何でしょうか。同じ「学生」という括りでは、高校生と大学生等でそこまで大きな違いはあるのでしょうか。
企業が高校生のアルバイト採用に積極的になれないのは、勤務時間の制限のためかもしれません。18歳未満であれば22:00以降に勤務させられないうえ、ほとんどの高校生は、平日は毎日夕方頃まで学校があるため、働ける時間が限られています。
では、それが高校生がアルバイト探しに苦労する理由なのでしょうか。「<学生版>求職者の動向・意識調査2023」の結果を見ると、確かに22:00以降に働けない制限はあるものの、高校生と大学生等で、1週間で働ける勤務時間数や日数に大きな違いは見られませんでした。もし高校生の勤務時間や日数をネックに感じて、採用に消極的なのであれば、それは誤ったイメージである可能性があるので、一度見直しても良いかもしれません。
◆ アルバイトは社会勉強や成長の場
また、社会人としてのコミュニケーション能力やマナーがないことを理由に、高校生の採用に積極的になれないという声も聞かれます。確かに高校生は、異なる年代や立場の人と関わってきた経験が比較的少ないので、そう感じることもあるでしょう。しかし、「高校生だから」という理由だけで、一概に採用対象から外してしまうのは、意欲的・真面目にアルバイトに取り組む高校生がいることを踏まえると、良い人材を採用する機会を逃しているとも言えそうです。
今回の調査に参加した高校生にアルバイトへの意欲を聞いたところ、お金を稼ぐ以外にも、「社会勉強のために働きたい」「将来のために、アルバイトをして視野を広げたい」といった、自己成長や将来を意識したコメントも聞かれました。また、アルバイトを通して身につけたいことを調査すると、「異なる年齢・立場の人と、コミュニケーションを取れる」が52.1%で最多、「適切なマナーを守れる」が46.8%で続き、高校生自身も、企業が不安に思っているコミュニケーション能力やマナーを身につけたいと考えていることが分かります。
確かに雇い入れ当初は、アルバイトの実務以前の基本的なことから教える労力・時間はかかるかもしれません。しかし、意欲のある高校生であれば、教えたことをすぐ吸収して、貴社の戦力として活躍することも十分期待できます。大手のファストフードチェーンやコンビニエンスストアでは、高校生が接客している様子がよく見られますが、彼らが他のアルバイトスタッフと比べて、接客の言葉遣いやマナーが特段悪いと感じることは少ないのではないでしょうか。
全体的なイメージだけで、「高校生だから」「●●だから」と一概に判断するのではなく、まずは一度会って、その人個人の意欲や個性を見てから採否を判断するというスタンスが、人材不足解消には欠かせません。
*=*=*= 【企業の声】 高校生アルバイトの採用を始めた介護施設 *=*=*=
首都圏を中心に介護施設を運営し、約5年前から、複数施設で高校生アルバイトの採用を開始した事例です。高校生採用を始めるために、計画的に取り組んだほうが良いことや、採用して良かったことについて聞きました。
〇 計画的に取り組んだほうが良いこと
・現場の業務を細かく分解する。有資格者や経験者のみができる専門的な仕事と、未経験の高校生にも任せられる仕事を明確に分ける
・進学などのタイミングで退職時期が重なることがあるため、予め高校生の意向を把握し人員計画を立てる
・雇い入れ当初は、既存職員が高校生アルバイトの教育に不慣れな可能性があるので、育成方法・計画をしっかり作成する
〇 良かったこと
・既存職員が専門的な仕事に専念できるようになった
・年齢層が高く落ち着いた職場だったが、高校生が入ったことで雰囲気が明るくなり、施設利用者の方々にも喜んでもらえた
・知り合いの高校生を紹介してくれて、リファラル採用が進んだ
人材不足の解消だけではなく、サービス面でも良い効果があったようです。新たな採用活動に取り組むには、多くの検討事項がありますが、是非本事例を参考にしてみてください。
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日本の人口減少は進み、人材不足は今後より深刻になることも予想されます。そうした状況で、高校生に限らず、「これまで採用したことがないから」「何となく一緒に働くイメージがないから」で採用するターゲットを絞ってしまっては、いつまでも人材不足に悩むことになりかねません。これまでの経験やスキルだけではなく、アルバイトへの意欲も同様に重視して、高校生アルバイトの受け入れを検討してはいかがでしょうか。ましてや、アルバイトをしたくてもできない高校生がいて、高校生採用に取り組む企業も限られるなか、今こそが良いタイミングと言えるのかもしれません。