採用の知恵袋

2023年09月14日

#シニア#採用#育成・定着

採用の知恵袋 2023年9月号 ―シニア雇用vol.2 採用・定着のポイントを知る―

働くシニアの活躍が注目されていますが、弊社が行った調査ではシニア雇用に「積極的ではない」と回答した企業の割合は約7割で、この数字は2016年、2018年、2021年調査から大きく変化していません。前回の8月号では「なんとなく〇〇」というシニアへのイメージを払拭することについてお話ししました。今月は、固定的なイメージを払拭した上で、シニアを採用し定着・活躍してもらうためのポイントについてお伝えします。
「採用の知恵袋」では、企業から寄せられる質問に対して、調査研究の結果や企業・行政団体との取り組み事例をもとに回答します。今回はセンター長の宇佐川が答えます。

Q.

最近、アルバイト・パートの募集をかけると、シニアからの応募が増えました。現在弊社にはシニア従業員がおらず、積極的に採用できずにいます。とはいっても少子高齢化が進んでいるので、継続的に人材を採用していくためには、シニアに向けた仕事づくりや短時間勤務の働き方などをつくっていくべきでしょうか。(九州エリア/IT関連業)

A.

シニアだから特別な仕事を用意しないと、短時間勤務の仕事をつくらないと、と思いすぎていませんか。もちろん体力や健康状態に配慮することは必要ですが、年齢だけで判断せず、面接時や働く中ですり合わせていくことが大切です。また短時間勤務などの働き方は、シニアだけでなく、主婦・主夫や学生も求めています。柔軟性のある働き方を準備することは、シニアに限らず採用力の向上に繋がります。

8月号、9月号の2号に渡ってシニア雇用について考えます。8月号は「実態を知る」、9月号は「採用・定着のポイントを知る」をテーマにお届けします。※本記事内では、シニアを60歳以上と定義しています。

解説

◇ シニアの採用のポイント:希望の勤務日数や勤務時間数は?

まず、シニアの応募を獲得するためには、シニアが希望する勤務時間や勤務日数を提示する必要があります。弊社が行った「シニア層の就業実態・意識調査2023」において、希望の勤務日数と勤務時間数を確認してみましょう。シニアが最も希望する働き方であるアルバイト・パートでは、希望する勤務日数については、週3日程度が42.2%と最も多く、次いで週4日程度が27.2%でした。希望する勤務時間数については、4時間程度が28.7%と最も多く、次いで5時間程度が25.8%でした。現在の就業状況や雇用形態によって傾向は変わりますが、全体的にはフルタイムよりも短い時間、少ない日数を希望している人が多いことが分かります。

graph_chie0914.png

◇ シニアの定着・活躍のポイント:ソフト面の希望の働き方は?

次に、入社後に長く活躍してもらうために、ソフト面の希望の働き方を見てみましょう。希望の働き方について、AとBどちらの考えに近いかを聞いた調査結果からは、定着・活躍してもらうためには、これまでの経験が職場で活かせている実感を持ってもらうこと、仕事の範囲を広げすぎず、本人の希望や能力に合わせて割り振っていくことなどが重要といえそうです。一方で、「後進の指導・育成をする/自分で成果を出す」「社会に貢献できる仕事をする/自分の興味がある仕事をする」などはAもBも半々程度であるため、「シニアだから」と決めつけすぎることなく、個人に合わせた仕事づくりが必要です。

graph_chie0914_2.png

◇ 「個人に合わせた仕事づくり」はシニア採用のためだけではない

短時間の仕事を新たにつくるのは大変だ、という企業も多いのではないでしょうか。しかしながら、1日4時間程度、週3日程度などの柔軟性のある働き方を希望しているのは、シニアだけの特徴ではありません。子育て世代の女性、特に現在非就業で今後就業意向のある女性や、学業の合間で働く学生も求めています。
※参考※
20~49歳・既婚・子どもあり女性 10年前(2013年)、コロナ前(2019年)と2023年の比較レポート p13
<学生版>求職者の動向・意識調査2023 Vol.3「学生のアルバイト探しの今が分かる」 p10

少子高齢化だからシニアが活躍できる会社にしないといけない、ではなく、シニアが働きやすい環境を整備することで、自ずとそれ以外の人たちも働きやすい環境となるでしょう。多様な人が働くようになった今、働き方も多様性を求められています。まずは、「自社においてシニアが活躍できる環境とは」を考えることが大切です。