採用の知恵袋

2023年05月19日

#アルバイト・パート#外国人材#学生・若年層

採用の知恵袋 2023年5月号 ―留学生アルバイト、小さな意識で大きな戦力―

日本に来る外国人留学生は2019年度約31万人から、コロナ禍で21年度約24万人まで減少しました。今後の回復が期待されるとともに、政府は2033年までに40万人に増やすことを目標に掲げています。人材不足解消のためには、従来の採用ターゲットに固執せず、新たな層を受け入れることも重要です。本記事を参考に、増加が期待される外国人留学生の、貴社での活躍可能性を検討してはいかがでしょうか。
「採用の知恵袋」では、企業から寄せられる質問に対して、調査研究の結果や企業・行政団体との取り組み事例をもとに回答します。今回はセンター長の宇佐川が答えます。

Q.

個人で飲食店を経営しています。先日ホールスタッフのアルバイトを募集したところ、地元の日本語学校に通う外国人留学生から複数の応募がありました。採用を検討したいのですが、留学生を受け入れたことがないためノウハウがなく不安です。受け入れのポイントや注意点があれば教えてください。(東海エリア/飲食業)

A.

アルバイトに熱心な留学生を受け入れることはメリットがありますが、彼らが貴社で安心して働くためには、留学生だから感じる不安や疑問を理解することが重要です。お互いのバックグラウンドの違いを認識し、先輩スタッフから頻繁にコミュニケーションを取りに行くことで、お互いが食い違いやストレスを感じずに働ける職場を目指しましょう。

解説

◇ お金だけではない、アルバイトは学び・成長の場

はじめに、留学生アルバイトの受け入れを検討するため、弊社の「留学生1,000人のアルバイト実態調査 2023」から、留学生アルバイトの特徴を見ていきます。まず、日本でアルバイトを始めた理由では、「日本で生活するための生活費が必要だから」が51.6%で最多、「学費としてお金が必要だから」が39.5%と、経済的な理由が大きいことが分かります。ただ同時に、お金を稼ぐだけではなく、「日本で働くことに興味があるから」45.6%や「日本語を勉強できる機会が欲しいから」39.8%も上位にあがり、アルバイトを学びや成長の場として捉えている留学生も多いようです。

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また、留学生が希望する働き方は以下の通りでした。特に長期休暇中は週5日希望が34.7%、8時間以上希望が30.4%でそれぞれ最多となり、たくさん働きたいという意向が強いことが分かります。

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◇ バックグラウンドの違いを認識し、まずは不安・疑問を解消しよう

前向きな意欲があり、たくさん働きたいという留学生を受け入れることは企業にもメリットがありますが、彼らに活躍してもらうには、以下のような点をケアすることが重要です。

まずは他スタッフとのコミュニケーションです。アルバイトをしている留学生に苦労することを聞いたところ、「一緒に働く日本人スタッフとのコミュニケーション」が30.2%で最多でした。自ら望んで日本に来たとはいえ、言語も文化も違う環境でアルバイトをすることに、不安を感じる人もいるでしょう。働きはじめのうちは特に気にかけて、先輩スタッフから頻繁に声がけなどをすることで、留学生が壁を感じず、質問・相談をしやすい雰囲気をつくることが必要ではないでしょうか。

次いで、「日本の職場では当たり前のマナーやルールの理解」が26.9%で2位ですが、日本で長く暮らした人同士だから伝わるニュアンスや共通認識を極力除き、はっきりと言葉にして伝えることも大切です。仕事内容に限らず、身だしなみや欠勤・遅刻するときの対応方法、出退勤時間のルールなど、「言わなくても分かるだろう」と説明を怠ることで、入社後の食い違いやお互いのストレスにつながりかねません。異なるバックグラウンドであることを理解して、面接時や入社初日に詳細まで説明する、間違っていたら放置せず指摘することで、双方の認識のずれが一日でも早くなくなる状態を目指しましょう。

また、留学生に安心して働いてもらうには、本人の日本語レベルに応じて、段階的に仕事を任せることも効果的です。例えば、飲食店のアルバイトで考えてみると、日本語レベルが十分でないうちから接客を任せても、難易度の高さに挫折してしまうかもしれません。そこで、はじめはキッチン内の業務や補助的業務からスタートし、日本語が身についてから接客を徐々に任せるなど、段階的なスキルアップを支援することで、職場への定着が期待できます。

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◇ 法律面の確認事項

上記に加えて、留学生アルバイトを受け入れるために、主に以下2点にも留意しましょう。
① 当該留学生が、「留学」の在留資格と、資格外活動許可を有していること
② 当該留学生の週の労働時間が、入管法で定められた範囲内であること
・学期中 → 週28時間まで
・長期休暇中 → 1日8時間、週40時間まで
※複数のアルバイト先で働いている場合は、労働時間を合計

原則として留学生自身がルールを認識し、順守するものですが、雇用した企業にも罰則が課せられる場合もあるので、公的機関の情報なども確認しながら受け入れを進めましょう。
・参考:東京外国人雇用サービスセンター

人材不足がひっ迫するなか、留学生に限らず、「これまで受け入れたことがないから」という理由だけで不採用にしてしまっては、人材不足の解消は進みません。採用した経験がない層でも、まずはフラットな視点で活躍可能性があるのか、受け入れでネックになることはないのかなどを検討することが必要ではないでしょうか。