採用の知恵袋
2023年03月14日
採用の知恵袋 2023年3月号 ―面接辞退防止、見落としがちな求人票の穴―
「アルバイトの応募が来ても、辞退が多くて採用につながらない...」それを仕方のないことだと諦めてはいないでしょうか。辞退を必ずゼロにするのは難しい場合もありますが、応募者の動向・意識を知り、応募獲得後のコミュニケーションなどに活かして、辞退減少を目指しましょう。
「採用の知恵袋」では、企業から寄せられる質問に対して、調査研究の結果や企業・行政団体との取り組み事例をもとに回答します。今回はセンター長の宇佐川が答えます。
福岡市の繁華街で居酒屋を経営しています。ホールスタッフの募集を始めたところ、応募は集まったのですが、面接日程の調整中に連絡が取れなくなったり、面接時間になっても応募者があらわれなかったり、ということがありました。また、面接できて採用したいと思っても、辞退が続いてしまい困っています。このような辞退を減らすために、どのような対策ができるでしょうか。(九州エリア/飲食業)
貴重な1件の応募を逃さないためには、スピード感のある選考や、面接に参加する負担を減らすことで、まずは面接に来てもらうことが重要です。
しかし、無事に面接をできて安心、ではありません。面接後や採用連絡後に辞退されないために、見落とされがちなのが正確な求人情報の発信です。求人票の仕事内容やシフト・給与などの条件面を、幅を持たせて書いたがために、面接で実際に話を聞いて「思っていたのと違う」と不信感を持たれることもあります。求職者の志向を知り、自社に何が足りていないのか、何ができそうなのかを考えてみましょう。
解説
◇ 応募者と企業どちらもスピード感を重視
応募を獲得した後、各社はどのような取り組みをしているのでしょうか。ジョブズコミュニティレポート2月号で、応募を面接につなげるために、特に効果的だと感じる工夫を聞いたところ、結果は以下の通りでした。
「応募があった当日・翌日には、応募者に連絡をする」が最も多く、約半数の企業が、選考のスピード感が辞退防止に効果的だと感じています。「履歴書などの事前準備をなくす」が22.0%で続き、応募者が「準備が大変だから面接に行くのをやめよう」と感じないために、事前準備などの負担を減らすことも有効ではないでしょうか。
一方で、求職者側の選考辞退理由と照らし合わせてみましょう。居酒屋のホールスタッフにも多い学生に対して、弊社の「<学生版>求職者の動向・意識調査 2023」でアルバイトの選考辞退理由を調査したところ、以下の回答になりました。
最も多い「すでに別の仕事が決まった」35.6%や、「応募後の連絡が遅く、志望度が下がった」16.2%を見ると、やはり選考のスピード感は欠かせないと言えそうです。また、「履歴書などの準備が手間だった」にも15.0%の回答が集まりました。
◇ 応募者視点での求人づくりとコミュニケーションを
面接実施のために、選考のスピード感や負担軽減を意識して取り組む企業は多いですが、採用を見据えたときに見落とされがちなのが「希望する仕事内容ではないと感じた」と「希望する条件(給与・シフトなど)ではないと感じた」です。応募者が面接などを通じて、求人票の内容と実際のものが違うと感じるケースが想定されますが、「求人票は間違っていないから当社は大丈夫」と思っても注意が必要。例えば、貴社の求人票で、以下のような書き方をしていないでしょうか。
【認識がずれやすい表現例】
● 仕事内容:メインで任せたい業務以外に、「もし可能であれば」と思って、それ以外の業務も書いておく
● 給与:「時給1,000円~1,400円」のような幅を持たせた書き方をしているが、即戦力の経験者以外は、基本的に一律1,000円からスタート
● シフト:本当は夜の時間帯が欲しいが、まずは応募をもらえるように「オープンからクローズまでのどこかで働ける人」と幅広く募集する
勿論、こうした表現が全て誤りという訳ではありません。しかし、求人票の内容自体は正確に書けていても、応募者側と企業側で認識がずれてしまうリスクがあります。応募者側の心理としては、仕事内容やシフトについて「書いてあるものから選べる」と受け取る可能性があります。また、給与については、未経験だから下限金額からスタートではなく、記載されている幅のなかで適切な金額が提示されると期待しているかもしれません。しかし、面接で詳しく聞いてみると、希望条件が叶わないことが分かり、「書かれていることと違う」と不信感を持って辞退される可能性が考えられます。
採用の可能性を広げるために、上記のような表現がポジティブに働くケースもありますが、応募者がどのように受け取るかも理解して、コミュニケーションを取ることが重要です。一方的にこちらの事情を伝えて、応募者の要望が通らないことを説明しても、応募者側の不信感は拭えません。応募者の要望も聞いたうえで妥協点を探るほか、「今すぐは難しいが、将来的に叶えられる」のように歩み寄るコミュニケーションが必要ではないでしょうか。
せっかく獲得できた貴重な応募を、1件でも多く採用につなげるために、各社が取り組んでいるスピーディな選考や負担軽減などに加えて、応募者が安心感を持って貴社でアルバイトすることを決められるように、正確な求人情報の発信や、応募者に歩み寄ったコミュニケーションを意識してはいかがでしょうか。