人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2021年03月30日

外国人人材の積極採用による多様性が原動力!外国人観光客減少でも新たな取り組みにチャレンジするホテル

株式会社コスモスホテルマネジメントスタッフのオウ インタクさんとダマラ ラビンドラ プラサドさん

今回クローズアップする人材活用の事例は「コスモスホテルマネジメント」

グローバル化が進展していく中で、外国人人材のマネジメントは企業の重要なテーマになりつつあります。多様な人材の活躍躍進、キャリア形成につなげるには、企業はどのようなことに留意すればいいのでしょうか?
今回は、フロントスタッフの9割以上に外国人を採用し、多様性を活かしたホテル運営に取り組むコスモスホテルマネジメント「MIMARU」を取材しました。新型コロナウイルス禍で外国人観光客減少による苦境が続く中、外国人スタッフのモチベーション維持についても伺いました。

  • ● 社名/株式会社コスモスホテルマネジメント
  • ● 創業/2017年10月
  • ● 所在地/東京都港区芝5-34-6新田町ビル
  • ● 資本金/9,000万円

多国籍の外国人スタッフがフロントで迎える外国人観光客に人気のホテル

訪日外国人の中長期滞在に対応したアパートメント型のホテルとして2018年2月に第1号施設が開業した「MIMARU」。運営するコスモスホテルマネジメントは、2021年3月現在約70名いるホテルで働くスタッフの9割超は、23の国や地域を出身とする外国人スタッフが占めるなど、グローバルな職場環境を実現しています。

ファミリーが心地よく過ごせる広い室内、利便性の高い立地、外国人観光客のニーズに即したサービスなどが評価され、旅行プラットフォーム「Tripadvisor」が発表した「旅好きが選ぶ! 外国人に人気の日本のホテル2020」で複数の施設が上位に選出されるなど、インバウンド需要の高まりとともに好調な伸びをみせていました。

ところが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、海外からの観光客は激減。ゲストのメインが外国人から日本人に変わるなど、「MIMARU」で働く外国人スタッフにとっても、その影響はかなり大きなものだったそうです。

日本語を学ぼう。自発的に生まれた取り組み

現場で働いていた外国人のスタッフはどのように感じていたのでしょうか? フロントスタッフとして勤務するオウ インタクさん(中国籍)に伺いました。

「もてなすお客様が外国の方から日本の方に変わり、一番不安に感じたのはコミュニケーションの問題でした。欧米の方は会話を楽しんだり、褒めてくださったり、フレンドリーに接してくださる方が多いのですが、日本人のお客様は感情を表に出さない方が多いので、日本語がうまく伝わっていないのではないか? サービスに満足されていないのでは? と悩むことが多かったですね。今は、日本人の友人も増え、日本への理解も深まりました」。

中国籍スタッフのオウ インタクさん
オウ インタクさん。「コロナ禍で日本語が上達。敬語の使い方も上手になりました」

「コロナ禍前は、日本語を使用する機会が少なかった」と現場のマネジメントを担当する田中壮作さんは言います。そんな折、“Go Toトラベルキャンペーンが始まる前までに、日本語の不安を解消しよう”と、スタッフ発信で日本語勉強会がスタートしました。

「スタッフ同士が自発的にウェブで繋がり、お互いを励ましあっていたのです。日本語を教えるスキルを持った日本人スタッフを中心に、テキストを作成するなどしていたそうです。会社でもその試みに取り組もうと、オンデマンドで学べる動画作りをサポートしました」(田中さん)。

スタッフのマネジメントについて語る 首都圏運営一部 部長 田中壮作さん
首都圏運営一部 部長 田中壮作さん。スタッフの自発性を促すマネジメントに注力。

多国籍の外国人スタッフを中心とする多様な表現が「MIMARU」の強み

外国人との意思疎通の問題から、特に観光業界では英語など言語スキルに長けた外国人を採用する傾向がありますが、「MIMARU」が外国人人材を積極的に採用するのは、「それだけが理由ではない」と田中さんは言います。

「言葉ができれば外国人と良い関係が築けるかと言うとそうとは限りません。言葉だけの問題なら、翻訳機能を備えたロボットを使えばいい話。当社が大切にしているのは、さまざまな人との交流から生まれる多様性です。ゲストに対して、それぞれの個性を生かしながら最善のサービスを提供する。そこで生まれる新しい発見や、ユニークなアイデアを尊重し、みんなで共有することが、ほかにはない『MIMARU』というブランドの強みになると思っています」。

日本橋水天宮前のフロント業務を担うダマラ ラビンドラ プラサドさん(ネパール籍)は、インドのお客様から、「2カ月くらい日本に住む予定で、携帯を買いたいがどんなものがいいか」と相談を受けたことがあったそうです。「私はインドの言葉も話せるので、お客様が携帯ショップに行く際ご一緒し、キャリアや料金プランやデータ容量などについてその場で翻訳して差し上げました。目の前にいるお客様をハッピーにしたいという気持ちから自然に生まれた行動です」と話します。

ネパール籍スタッフのダマラ ラビンドラ プラサドさん
ダマラ ラビンドラ プラサドさん。ホテルの仕事は「MIMARU」が初めて。

「MIMARU」のサイトでは、スタッフ自らが日本で体験したおすすめの観光情報や日本文化を発信しています。コロナ禍の今も “英語のみの接客で日本人ゲストに海外旅行気分を楽しんでもらう宿泊体験”など、さまざまなアイデアがスタッフ発で生まれているそうです。

多国籍な環境こそ重要なのは人を束ねる「方向性」

「MIMARU」では、個々のキャリアパスを大切に、多様な人材が活躍できる人事制度を採用しています。「ビザや在留資格の制限など難しい問題はありますが、今も本部で3名の外国人スタッフが働くなど、ひとり一人の事情やキャリアパス、希望を踏まえて適切な配置を考えています」と総務人事部の平山千紗さんは言います。

人事制度について語る総務人事部の平山千紗さん
「MIMARU」の人事制度について語る総務人事部の平山千紗さん。

2019年に人事制度を定め運用を開始。人事制度を運用する中で、現場から「従業員に企業理念が浸透していないかもしれない」という課題が浮上したそうです。

日本の企業が日本語で作った企業理念について、日本語の理解度も価値観も異なる多国籍なスタッフがそろえば、捉え方がそれぞれ異なるのは当然の事と言えるでしょう。しかしながら、多様な人々が働く職場こそ、指針となる明確な「方向性」を打ち出し、皆で共有することが強く求められます。

解決に向けて田中さんと人事が連携した「企業理念ブレイクダウンプロジェクト」がスタートしました。「言葉の表層ではなく、自分ごととして捉えてもらえるように、企業理念を噛み砕き、浸透させていくのが狙いです。企業理念についてのアンケートを実施し、ヒヤリングを行った上で、有志でのディスカッションプログラムを開催するなど、できるだけ話し合いの習慣を持つようにしています」。

多様性を生かすには、言葉のやりとり以上に、お互いを認めるコミュニケーション力が必要。「MIMARU」の取り組みは、多様化する組織に悩む企業にとって、大きなヒントとなりそうです。