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2023年10月10日

#シニア#正社員

ミドルシニアが望む定年後のキャリアとは -「シニア層の就業実態・意識調査2023」分析レポート-

2021年に改正された高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保が事業主の義務になりました。「定年引き上げ」「定年廃止」などを講じる必要がありますが、もっとも多く採用されているのが「継続雇用制度」です(参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」)。ジョブズリサーチセンターがおこなった「シニア層の就業実態・意識調査2023」では、ミドルシニア自身も定年後のキャリアとして継続雇用を希望する割合が高いことが分かりました。今回は調査結果をもとに定年後のキャリア選択の実態、継続雇用が希望される背景などを見ていきます。

【本レポートのポイント】
・就労意欲のあるミドルシニアのうち定年後の継続雇用希望は7割強
・定年後の再スタートより、これまでの環境を変えたくないという声が多数
・企業のシニア採用が進まないことも再就職をためらう一因に

参考:「シニア層の就業実態・意識調査2023」に関する発信物
基本報告書(個人編)
基本報告書(企業編)
分析レポート「シニアの就労参加は進むのか、企業の採用実態とミスマッチをひもとく」

※本レポートではミドルシニアを「55歳から64歳まで」と定義しています。
※本レポートでは継続雇用を「定年後も定年前と同じ会社で働くこと」、再就職を「定年後に定年前とは違う会社で働くこと」と定義しています。
※「シニア層の就業実態・意識調査2023」は55歳から74歳までを調査対象としていますが、すでにリリースした基本報告書(個人編)では60歳から74歳までの聴取結果を主に掲載しています。取り扱う年代の違いから、基本報告書と本レポートのグラフの数値が異なることがあるのでご注意ください。

調査ダイジェスト

◆ 【個人の意向】 定年後のキャリア。就労意欲のあるミドルシニアの約7割が継続雇用希望

はじめに定年退職を予定しているミドルシニア(55~64歳)に今後の就労意欲を聞きました。「ぜひ就労したい」36.0%、「やや就労したい」23.6%となり、約6割が今後も働きたいと答えています。一方「あまり就労したくない」「全く就労したくない」計は2割ほどに留まります。55~64歳というシニアのなかでは年齢が若いこともあり、健康・体力面の不安が少ないことや、老後の金銭的な心配などにより就労意欲が高いことが想定されます。

定年退職を予定しているミドルシニアのうち「ぜひ就労したい」~「どちらともいえない」計の約8割に対して定年退職後の希望を聞いたところ「ぜひ現在の勤務先で働きたい」31.7%、「出来れば現在の勤務先で働きたい」40.4%に上り、7割以上*が継続雇用を希望しているようです。3割弱が現在の勤務先で働きたくないという意向ですが、これまでの経験を活かして再就職や起業、フリーランス、もしくは興味があった別分野にチャレンジすることなども考えられます。
*定年退職を予定している55~64歳全体の7割以上ではないことに要注意

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◆ 【個人の意向】 継続雇用で働く人の半数以上が「職場や勤務地など環境を変えたくない」

すでに継続雇用として働いている人は、なぜ定年前と同じ会社を選んだのでしょうか。「職場や勤務地など環境を変えたくないから」52.6%、「今まで培ったスキルやノウハウをそのまま活かせるから」44.2%が上位に挙がりました。新しい環境で再スタートを切るより、経験を活かせる環境でキャリアを終えたいという人が多いのでしょう。

一方「会社の方から継続を頼まれたから」や「転職して、いちから新しい人間関係を構築したくないから」のような転職への忌避感が見られる選択肢にも回答が集まりました。積極的に選んだ人ばかりではなく、受け身や消極的選択により継続雇用で働く人もいるようです。

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◆ 【企業の実態】 再就職の難しさも継続雇用希望の一因に

転職を避けたいという背景には、企業がシニア採用に消極的だという実態があります。定年引き上げ・廃止や継続雇用など、既存従業員の雇用維持の取り組みは進められていますが、積極的にシニアを新規採用している企業は限定的です。企業にシニア採用への積極性を聞いたところ、正社員、アルバイト・パートどちらの雇用形態でも7割弱が積極的ではないという結果でした。この傾向は2016年から大きく改善していません。

新しい環境にチャレンジしたい気持ちがあっても再就職が簡単ではない状況で、勤務先で継続雇用が可能な場合にはそちらを選ぶ人もいるでしょう。

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企業のシニア採用意欲が変わらない限り、再就職のハードルは下がらず、今後も多くの人が継続雇用を希望するでしょう。しかし、受け身や消極的な選択では、その後のモチベーション低下につながりかねません。継続雇用=ベテランだからと任せきりにせず、継続雇用に切り替わるタイミングなどで改めて会社・個人でコミュニケーションを重ねましょう。継続雇用で会社が期待すること、個人が希望することをすり合わせて役割を与えることで、個人のモチベーション維持につながり、それが結果として会社の利益にもなるのではないでしょうか。