各種調査
2026年01月27日
求職者の評価は何で決まるのか -ジョブマッチングに関する実証分析-
日本の労働市場では、人手不足とミスマッチが拡大し、労働移動の円滑化が重要な課題の一つとなっている。しかし、そのプロセスは依然としてブラックボックスである。人材紹介サービス『リクルートエージェント』のデータを用いて、ITエンジニア求職者の評価の構造に対する示唆を得ることを目的とし、単純集計から得た基礎的知見を示す。
今、なぜ労働移動の円滑化が重要なのか?
内閣府の『令和7年度 年次経済財政報告』によると、日本の労働市場では人口減少に伴う労働供給の縮小が見込まれるなか、全産業で人手不足感が歴史的な水準にまで高まっており、企業側が求めるスキルや属性を有する労働者を確保することが一段と困難になっている1。また、職種ごとの欠員率のばらつきは大きく2、人材と職務の適合が進まないミスマッチの問題も拡大している。こうした人口減少下での労働力不足やミスマッチの問題に対応する手段の一つとして、外部労働市場を活用し、人材が必要とされる分野へ円滑に移動できる環境を整えることは重要である。
また、求職者のキャリア形成の観点からも、新たな機会へと踏み出しやすく、成長分野や個人の志向に合った仕事へと円滑に移動できる環境を整備することは重要である。AI・デジタル化による急激な産業構造の変化によって、求められるスキルが絶えず更新される一方で、職業人生は長期化しており、個人がライフステージの変化に応じてキャリアを柔軟に再設計していく必要性が高まっているためである。こうした課題に対し、経済産業省の『我が国産業における人材力強化に向けた研究会 報告書』では、「人生100年時代の社会人基礎力」を「ライフステージの各段階で活躍し続けるための力」と定義し、個人が主体的に学び直し、自らキャリアを形成していく重要性を指摘している3。このような背景から、経済成長や個人のウェルビーイングの向上につながる「健全な労働移動」が可能となる環境をいかに実現するかが問われている。
本研究シリーズでは、人材紹介サービス『リクルートエージェント』のデータを用いてマッチングプロセスの実態を明らかにし、労働移動の健全性や円滑な労働移動の推進に対する示唆を提供することを目指す。あくまで『リクルートエージェント』に蓄積されたデータに基づく限られた分析であることに留意が必要であるが、民間職業紹介を通じた求人が増えている状況4を踏まえれば、これらのデータを用いた実証分析は現代の労働移動を理解する上で意義があると考えている。
1 内閣府(2025)『令和7年度 年次経済財政報告』第2章第3節, P259-260
2 同上、P265-266
3 経済産業省(2018)『我が国産業における人材力強化に向けた研究会 報告書』, P29-30
4 内閣府(2025), P260-261. 正社員およびパート・アルバイトのいずれにおいても、2018年以降は民間職業紹介経由の求人の伸びがハローワーク経由を上回る推移が確認される
調査ダイジェスト
内定との関連がある可能性が示唆された「スキル・属性情報」
・職種一致は選考が進むほどスコアが上昇し、年齢が上がるほどその傾向が明確になることが示唆された。ただし、「24歳以下」ではそのスコアは低い。職務クラス一致もスコアが上昇する傾向が見られた。
・ただし、「35~49歳」以上のカテゴリーでは、スコアは相対的に低い。職種一致の内定者は、年齢が上がるほどプロジェクト経験や総合的なITスキルが増加する傾向。
・職種不一致の内定者は、「25~34歳」以下のカテゴリーでは特定のスキルの傾向は見られないものの、「35~49歳」以上のカテゴリーではIT関連や『課題設定』『改善案検討』が増える傾向。
内定との関連が限定的である可能性が示唆された「スキル・属性情報」
・業界一致は選考が進むほどスコアが上昇し、年齢が上がるほどその傾向が明確になる一方で、内定時点でも不一致が多数を占めている。
・資格一致・語学一致は全体としてスコアの変化が少ない。ただし、要件を設定している一部の企業に限ると、選考が進むほどスコアが上昇し、特に若年層においてはその変化量が大きい傾向が見られた。
※ 無料でダウンロードできます。




