各種調査
2024年02月14日
継続雇用時の給与減額、2016年からの変化 -「シニア層の就業実態・意識調査2023」分析レポート-
「ミドルシニアが望む定年後のキャリアとは」では、継続雇用を選ぶ個人側の志向や背景を見ていきました。企業側でも60代従業員への取り組みとして「継続雇用」75.0%と多く、導入が進んでいます(参考:基本報告書(企業編)p.27)。お互い理解があるうえで働けること、定年前の人脈・スキルを活かせることなど、企業・個人双方にメリットがあり選ばれているのでしょう。
しかし、継続雇用時に定年前と比べて給与が減額され、モチベーションが下がるケースがあることが指摘されてきました。今回はジョブズリサーチセンターがおこなった「シニア層の就業実態・意識調査2023」と過去調査を用いて、2016年からの変化・現状を見ていきます。
参考:「シニア層の就業実態・意識調査2023」に関する発信物
基本報告書(個人編)
基本報告書(企業編)
分析レポート「シニアの就労参加は進むのか、企業の採用実態とミスマッチをひもとく」
分析レポート「ミドルシニアが望む定年後のキャリアとは」
※本レポートの継続雇用者は、基本報告書(個人編)の定年退職の経験(p.20)において「定年退職の経験があり、定年退職後も同じ組織(会社・職場)で働いている」と回答した人を指します。
調査ダイジェスト
◆ 定年前と同じ仕事内容8割、勤務時間5割
はじめに定年前後で仕事内容はどのように変わるのでしょうか。継続雇用中の人に変化を聞くと「仕事内容に全く変化はなかった」が52.4%を占めます。2016年46.2%から6.2%増加。「仕事内容にあまり変化はなかった」をあわせると8割が同じ仕事に従事しており、70~74歳であっても同様です。
次に勤務時間の変化を聞くと、定年前を100とした場合「100%以上(定年前と同じかそれ以上)」50.7%でこちらも半数を超えました。2016年36.9%から13.8%増えています。特に60~64歳では65.3%(2016年比16.3%増)が定年前と同じ勤務時間で働いています。また、仕事内容と比べ、勤務時間は経年変化や年齢による違いがより大きく表れています。
◆ 定年前と変わらず働いても7割が給与ダウン
継続雇用に切り替わっても、仕事内容も勤務時間も定年前と変わらない人が増えているようです。では、給与は定年前の水準を維持できているのでしょうか。給与の変化を聞くと「100%以上」は14.1%に留まります。2016年8.4%から増えてはいるものの、仕事内容と勤務時間どちらも半数以上で変化がないなか、給与の変化がないのは1割強。8割が下がっています。
さらに仕事内容も勤務時間も全く変化がなかった人に限ると「100%以上」は30.8%。定年前と変わらず働いても7割は給与が下がり、80%未満まで減額も半数以上います
なお、給与が減額された場合でも、60~64歳で条件を満たしていれば、国から支給される高年齢雇用継続給付*によって減額分が補填されることがあります。企業によっては給付金受給のために給与額を調整している可能性もあることに留意が必要です。
※60~64歳で雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある一般被保険者について、60歳以降の賃金が60歳時点に比べて75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給される。詳しくはこちら
人材不足や少子高齢化に直面する日本において、シニア人材の活躍は重要なテーマです。継続雇用に限らず給与水準の改善に取り組み続けることは重要ですが、長くいきいきと働き続けてもらうために働き方の改善(例:通勤しやすい勤務地、残業なし、柔軟なシフトなど)にも取り組み、総合的な満足度アップに努めてはいかがでしょうか。