採用の知恵袋

2024年08月30日

#シニア#人材不足#求職者調査

採用の知恵袋 2024年8月号 ―「仕事を探していない人」の可能性を探る―

採用活動をおこなう際、仕事を探していない人をつい見落としてはいないでしょうか。仕事を探していない=応募・採用の可能性がない、とは必ずしも言えません。ジョブズリサーチセンター「求職者の動向・意識調査2023」で仕事探しの意向を聞いたところ「仕事探しをしていないが働きたい」「きっかけがあれば検討する」という、就職・転職活動をしていないものの就業可能性のある人(以下 潜在層)が多くいることが分かりました。本レポートではその調査結果を深掘りし、雇用形態や性・年代別の特徴を紹介します。

解説

【全体結果】仕事を探している人の背後に2~3倍の潜在層

「求職者の動向・意識調査2023」の事前調査に参加した11万9,103人に対し、今後の仕事探しの意向を聞きました。
実際に仕事を探している人は14.0%(=①)、働きたいという人は31.7%(=①+②、以下 働きたい計)、働く可能性がある人は50.7%(=①+②+③、以下 可能性あり計)となり、仕事を探している人の背後にはより多くの働きたい・可能性がある人が存在します。

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Q. 新卒以外での仕事探しについて、あなたの今後の意向にもっとも近いものをお選びください。(単一回答)【対象:全員】

【就業者/雇用形態別】転職意欲のある正社員でも、行動にうつすのは半分以下

ここからは就業状況ごとに見ていきます。まずは調査時点で就業中だった人です。雇用形態別の結果は以下の通りでした。
その他就業者を除いたすべての雇用形態で可能性あり計が5割を超えました。派遣社員では仕事を探している人も約4人に1人と多いですが、可能性あり計は71.9%を占め、転職をまったく考えていない人はむしろ少数のようです。
「①現在仕事探しをしている」との比較では、正社員と契約社員で働きたい計が2.5倍、可能性あり計が4倍をそれぞれ上回り、転職活動をしている顕在層は一部であることが分かります。

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Q. 新卒以外での仕事探しについて、あなたの今後の意向にもっとも近いものをお選びください。(単一回答)【対象:就業者】

【非就業者/性・年代別】年代があがるほど、誘いなどのきっかけづくりが重要に

次に非就業中だった人を性・年代別で見ていきます。男女問わず15-59歳で働きたい計が3~4.5割程を占め、非就業中ではあるものの働きたいという人が一定数存在します。

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Q. 新卒以外での仕事探しについて、あなたの今後の意向にもっとも近いものをお選びください。(単一回答)【対象:非就業者】

女性30-69歳では働きたい計が「①現在仕事探しをしている」の2倍ほどで男性を上回ります。働きたくても仕事探しに至らない理由は何でしょうか。「女性の就業に関する1万人調査2023」で非就業中の女性のうち就業意向がある人に、就職で不安なことを聞きました。「人間関係においてうまくやっていけるか」がもっとも多く、30-49歳では「家事と両立させることができるか」、40-69歳では「体力面で感じる不安」なども仕事探しを始めるハードルになっていそうです。

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Q. 就職にあたりどのようなことが不安に思われますか。(複数回答)【対象:非就業者の女性のうち今後就業意向がある人】

男性60-69歳と女性50-59歳で可能性あり計が①の3.5倍、女性60-69歳でじつに5.0倍に上ることも注目です。可能性あり計に占める「③就職・転職したいという気持ちはなく、仕事探しもしていないが、友人・知人からの誘いなどのきっかけがあれば検討する」の割合は60-69歳でとりわけ高く、きっかけづくりや働きかけが企業のシニア採用や、地域・行政のシニアの就業促進には重要なのかもしれません。
年代があがるほど体力・健康不安を抱えがちなので、身体的負荷が少ない仕事、少日数・短時間から柔軟に働ける体制づくりなどで不安を取り除くことも欠かせないでしょう。

今回分かったように採用対象は必ずしも仕事探しをしている人だけではありません。たしかに実際に行動している人のほうが就職・転職意欲が高く、採用に繋がりやすいかもしれません。しかしその背後にはより多くの「仕事探しをしていないが働きたい」「きっかけがあれば検討する」という人が存在します。そうした就職・転職市場にはあらわれない潜在層にアプローチするための手法も検討してはいかがでしょうか。

【参考:潜在層へのアプローチ成功事例 箱根DMO(一般財団法人 箱根町観光協会)】
箱根DMOが地域住民とのコミュニケーションツールとして利用していた公式LINEにて、人材不足に直面する町内宿泊業事業者などの求人情報を配信。応募した人のなかには、働くつもりはなかったが配信を見て興味を持ったという人、配信を見た知人に勧められて応募したという人も見られ、それまでの採用手法でアプローチできなかった層に求人情報を届けることに成功した。