STEP 5 活躍事例〈 CASE 3 戦略的ママ活用 〉

マニュアル通りにはいかない育児体験談が接客の価値になる
(株)ミキハウス 吉馴真弓さん(41歳)

販売員の枠を超え育児の悩みを一緒に解決

2人の娘を持つ、吉馴真弓さん。出産後の最初の復職は銀行の事務だったが、洋服や雑貨が好きで、アパレル販売の仕事がしたいという思いからミキハウスに応募した。2010年からは1年間のプログラムに参加して認定される、マタニティ&ベビーの接客スペシャリスト「子育てキャリアアドバイザー(KCA)」として活躍。子育て経験を活かしながら新米パパ・ママに親身なアドバイスをし、勤務する百貨店のベストスマイル賞、ミキハウス年間最優秀KCA賞などを受賞している。
「毎日いろんなママが来店します。お買い物に来る方ももちろんですが、子育てが不安で悩みを話したい方も多いです。育児って、マニュアル通りにはいかないですよね。だからこそ、体験した人にしかできないアドバイスがある。私自身の体験を話しながら一緒に悩みを解決して、お客様から感謝の言葉をいただいたときなんか、本当に嬉しいですね」と、吉馴さん。ママならではの感覚を活かした接客に加え、店舗レイアウトや陳列を考えることもあるそうだ。「アルバイト、社員という垣根なく、KCAは自分なりのやりがいを感じられる仕事。毎日楽しいです! 私がイキイキ仕事をしているのを感じるのか、子供たちもいつも笑顔で『いってらっしゃい!』と送り出してくれるんですよ」と嬉しそうに話してくれた。

ママスタッフ同士支え合いながら

とはいえ、仕事に復帰すると決めた当初は不安もあったという。「最初は子供も小さかったので、急に休まなきゃいけないときどうしよう、保育所の春休みの間はどうしようと、とにかく不安でした。でも、周りのスタッフの心遣いに支えられて。子供を迎えにいかなきゃいけない。けれど接客中だったりするとなかなか抜けられない…なんてときはさりげなく接客を引き継いでくれたり、子供が熱を出したときも、必ず誰かが快くシフトを代わってくれた。人がいないときも店長が『私が入るから安心して』と言ってくれて。本当に、恵まれているなと感じます」。みんな子育ての大変さを知っているからこそ「お互いさま」で尊重し合える。そんな環境が、ここにはあるようだ。

エリアマネージャー 西久保江里さんに聞いた、吉馴真弓さんの働きぶり
子供がいることを、言い訳じゃなくて、強みにしてほしい

吉馴さんは、責任感がとにかく強いですね。お子さんがいることで、時間的な制限はあると思います。でも、自分がいないときには代わりに頼む人に向けてしっかりと指示書をつくったり、社員だから、アルバイトだからということ関係なく、イベントや普段の勤務でも積極的な提案をしてくれる。このスタンスが素晴らしいですよね。私自身も出産後仕事復帰をした一人ですが、仕事と子育てを両立するのはそんなに甘くありません。限られた時間の中で周りにちゃんと思いを伝え、仕事を進めていかねばならない。それには、吉馴さんのように、前向きな気持ちでみんなを引っ張っていくことが一番なんです。「結婚したら仕事は辞めないといけない」ではなく「結婚して、出産したからこそできる働き方」をこれからも提供できる場所であり続けたいですね。

人事部長・藤原裕史さんインタビュー ママだからこそ活躍いただける仕事を

戦略的なママ活用に2つの仕組み

マタニティや子供服アパレルを、主力事業として展開するミキハウス。主婦たちを戦力的に活用する中で独自に打ち出している制度が、マタニティ&ベビーの接客スペシャリストの「子育てキャリアアドバイザー」と、退職者を復帰しやすくするための情報提供コミュニティ「ミキハウスリンク」。人事部長の藤原さんに、主婦活用に関する意見を企業側の視点でお話しいただいた。

〈ミキハウス/ ママ活用の仕組み〉

育児経験が最大のスキル 子育てキャリアアドバイザー

「そもそも、子育て経験のある方をもっと販売現場で活かしていきたいと考えたのが15年前。そこでできたのが『認定子育てキャリアアドバイザー(KCA)』。1年間の研修プログラムに参加し、マタニティ&ベビーの接客スペシャリストとして、販売だけでなく子育てのアドバイスもできるスタッフの呼称です。KCAの約7割は子育て経験者。新生児のための出産準備品をそろえる「ミキハウスファースト」で、自身の実体験も交えながらの接客をしていただいています。もはや接客というより人生の先輩からのアドバイスという感じで、2~3時間相談に乗ることもある。これは、ママたちにしかできない価値発揮のカタチ。ミキハウスとしても独自の強みとなっています」

復帰のチャンスを増やすミキハウスリンク

もうひとつ、KCAの強化にも役立っているのが、ミキハウスの退職者が入会するコミュニティ「ミキハウスリンク」。会員は現在1200名いるそうだ。「辞めた後も、復職をしやすいようにコミュニケーションをとり続ける制度です。年に2回、会報誌と求人情報を送り、復帰したいママとのマッチングを図ります。土日だけとか忙しい月だけ来る、という復帰の仕方もご案内しながら、本格的な復帰を促します」。キャリア人材を上手に活かすWin-Winの仕組み。退職後も大切にされながら個人の事情や想いに寄り添ったサポートがあれば、ママたちもモチベーション高く復帰できるはずだ。

ママをリスペクトして職場復帰をサポートする時代

「仕事と家事・育児のバランスをどうとっていきたいかは、人それぞれ。無理をせず“自分らしく、ありのままで”仕事をすることが、結果的にやりがいを持って、輝いて仕事に取り組める近道なのではないかと思います。主婦であることに胸を張って、社会に飛び出していただきたいですね。これからは社会全体が、働きながら子育てをする女性の想いをリスペクトしつつ、自分らしく仕事ができる環境づくりをサポートしていく時代。企業も、ご家族もそのための工夫や協力が必要です。弊社の地道な取り組みが、それを考えるヒントになればと思います」

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「ありのママ採用」のススメ