STEP 2 世代感の考察

均等法施行から約30年 なぜ今“女性活用”なのか?

均等法世代が子育て卒業 今がチャンス!

とはいえ、職場での女性活用推進は、なにも最近にはじまったことではない。  2013年に、安倍首相が成長戦略の一環として女性の活躍の重視を明言したことは話題ではあったが、育児休暇制度はすでに法律制定から20年以上経っているし、今や共働き家庭は珍しくはない。
ではなぜ、今女性活用に注目すべきなのか。それは、いわゆる「子育て卒業ママ」の世代変化にある。
男女雇用機会均等法(以下:均等法)が施行されたのが1986年。それから約30年経った今職場復帰をする女性たちは、均等法施行後に一度社会人経験を積んでいる。かといって、育休・産休の活用が今ほど当たり前になっている時代ではない。「辞めずに休む」という選択肢ではなく「就職→結婚・出産で職場を離れる」という道を選んだ“出産退職世代”だ。
ただ彼女たちは、均等法施行前世代の女性のように「結婚したら専業主婦」というふうには思っていない。少しずつではあるが、「男は仕事、女は家庭」的な戦後の価値観が取り払われている世代。いわゆるキャリアウーマンを目指す女性も登場し、仕事における男女平等意識もある。
だからこそ、子育てという大仕事が一段落すれば、「また働きたい」という気持ちが生まれやすく、ダブルインカムという選択も自然になってくる。つまり今、一度は家庭に入った彼女たちの復職の波が一気にやってくるチャンスなのだ。

社会人経験があるから職場でも即戦力に

さらに特筆すべきなのは、彼女たちは社会人経験があるため、職場復帰後に職場で即戦力になりやすいということだ。
パート・アルバイトの現場で、社会経験のない若者には、振る舞いから教える必要がある。しかし、社会人経験のある子育て卒業ママには、その初期教育が必要なく、スムーズに業務に移行していける人材が多い。このように今の時代に職場復帰をはじめる“社会人経験のある子育て卒業ママ”世代を、当コラムでは、その人ありのままの能力で十分職場の戦力となり、採用難の救世主ともなる「ありのママ」と定義したいと思う。

ありのママ/世代考察年表

バブル、団塊ジュニア、氷河期 ありのママ三世代

では、この「ありのママ」とは一体どんな人物なのか? 彼女たちが生きてきた時代背景を右記の年表で見てみてほしい(ありのママ/世代考察年表)。「ありのママ」は、タイプとして三世代に分かれている。まず、第一世代と言えるのが「ありのママバブル世代」。1965年から1969年生まれ(2014年に45歳~49歳)のママたちで、高度経済成長期の日本に生を受け、学生~就職期にバブル景気を経験。仲間たちと夜な夜なディスコに繰り出し、休日はゲレンデで恋を満喫する青春……おかげで、楽観的、コミュニケーション能力が高い、反面、見栄っ張りなどさまざまな論調はあるものの、なにごとにもパワフルに取り組む世代とも評される。
次に、第二世代にあたるのが「ありのママ団塊ジュニア世代」だ。1970年~74年生まれ(2014年に40歳~44歳)のママたち。成人前後にバブルが崩壊したため、人によってさまざまな経験をしている。子供のころにアニメ、漫画、ゲームが流行。「ジュリアナだけは行ったことある」などバブルをかすった(?)ママもおり、第一世代ほどの派手さはないが、明るくミーハーなママが多い印象だ。
そして最後が「ありのママ氷河期世代」(氷河期と言われる時期が長いため、ここでは2014年に35歳~39歳のママたちとして定義する)。この世代の場合は、比較的早くに学校を卒業し、就職、結婚をした女性たちが、今ありのママとして職場復帰をしはじめている傾向だ。

不景気で家計を守る苦労

世代によってさまざまな経験をしているママたちだが、ひとつ大きな共通体験がある。「失われた20年」と言われる時代に、家計を守るという体験だ。
バブルやその残り香をあじわったママが、結婚後に体験した不景気。先行き不透明な中で、今までの感覚は通用しない。きっと戸惑いながらも家計を切り盛りし、力強く子供も育てた。苦労を頼もしく乗り越えていった世代であるとも言えそうだ。このあたりが、結婚・出産を好景気で迎えた一世代前の女性たちとは明らかに違う強みでもあろう。
つまり、ありのママたちはバブル周辺で培ったエネルギーと、その後の不景気の中での苦労で培った力強さを持ち合わせた、非常にバランスのとれた女性たちと言えるのではないか。

若者とコミュニケーションできる「若のチカラ」

そんなありのママが持つチカラは、大きく分けて2種類ある。“若のチカラ”と、“熟のチカラ”だ。“若のチカラ”というのは簡単に言えば、「若者と同じ土俵でコミュニケーションできるチカラ」。ひと世代前の母親とは一線を画す特長だ。
最近のママたちは、心身ともに若々しい。バブル周辺世代であることも手伝ってか、出産・育児を経ても美容に気遣うなど、若々しさを保っている。実際、35歳~45歳の主婦300人に、自身の感度に関する意識調査を実施したところ「もっとキレイになりたい」と答えた人は45.6%、「実際より若く見られたい」と答えた人は47.0%と約半数にのぼっている。そういえば、美魔女というジャンルの出現も彼女たちの志向を裏付けている現象のひとつかもしれない。

「休日は娘とショッピング♥」

さらに、彼女たちが子育てをしていた90年代後半から顕著になったと言われる“友達親子”。ありのママたちにおいては、そんな関係ももはや当たり前で「娘とふたりで買い物に行くのが趣味」「中2の娘と流行のアーティストのコンサートに行く」なんて日常茶飯事。子供と同じ土俵でコミュニケーションをするのが自然のようだ。
また、子供とフランクにコミュニケーションすることで、若者の間で流行していることを、自然にインプットできていることも、ありのママの若々しさの秘訣のようだ。これは、ある程度子供が物心がつき、対等にコミュニケーションができはじめる時期からの特権。「同じドラマを見て、どっちの俳優が好きか言いあったり(42歳/ありのママ)」と、娘との女友達同士の関係を楽しむママもいる。

バイト先の若者も仲間ととらえる

彼女たちの若のチカラは、パート・アルバイト現場においても影響をもたらしはじめている。ありのママたちは、「若者バイト」と「パートさん」という隔たりをつくることなく、若者たちと“同じ職場で働く仲間”として接するケースが多くなってきているようだ。年齢が違うからと職場で孤立することなく、他の若者に上手になじむ。ときに友人のように盛り上がり、ときに職場のみんなの母親役として、マネジメント力を発揮してくれる。ありのママの“若のチカラ”のおかげで職場は人間関係が円滑になったり、雰囲気がよくなったり、ひいてはサービス力のアップにつながっている事例まで出はじめている(具体例はP12〜)。

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「ありのママ採用」のススメ