人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2024年04月02日
「長く働くなら正社員」という固定観念を捨てたことで、2名の採用に成功
(株)アーステクノは、火山活動や離島が多いという自然条件を持つ鹿児島で、地質調査・さく井(深い井戸を掘ること)・土質試験・地すべり対策などを行う建設コンサルタントです。同社が営業事務を採用することになり、正社員のみの募集を行っていましたが、なかなか応募がありません。そこで同社は、正社員とパート従業員を同時募集しよう、と方針転換しました。すると21人の応募を集め、パート希望の2名の採用に成功したのです。今回は、同時募集にあたりどんな配慮・工夫があったか、部門責任者の木下氏にお話をうかがいました。
- ● 社名/株式会社アーステクノ
- ● 所在地/鹿児島県鹿児島市新栄町26番6号
- ● 主な事業/地質調査・建設コンサルタント
- ● 従業員数/72名(2023年4月時点)
- 問題
- ■ 営業事務を正社員で募集したものの、応募がない
- 原因
- ■ 「長く働くなら正社員」という固定観念があった
- 対策
- ■ 正社員とパートの同時募集に転換
- ■ 正社員とパートは仕事内容も、各種手当支給・研修補助等の待遇も同等であり、同じ仲間として期待していることを伝える
- ■ その一方、勤務時間・日数は融通が利くことを丁寧に記載する
- 効果
- ■ 応募21人、約8割がパート勤務を希望。うち2名をパート従業員として採用
「長く働くなら正社員」という固定観念があった
(株)アーステクノでは以前もパート採用があったものの、その数は多くありませんでした。と言うのも、同社の事業が地質調査などのコンサルという特殊な分野である、という背景があったからです。
「当社の営業事務は、入札用の専門的な資料作成に関わることもあり、仕事を覚えるのに時間が必要です。そのため、長く働いてほしいという希望がありました」
長く働いてほしいから、正社員で…最初の募集時には、そんな考えがあったのです。しかし職種やエリアの特性を考えると、主婦・夫層が主な採用ターゲットになると想定できました。家事・育児を抱える主婦・夫層は、勤務時間・日数を重視します。
長く働いてもらえるのであれば、正社員採用にこだわらない。そう思い直した木下氏は、正社員とパートの同時募集に踏み切りました。
短時間勤務による締切のプレッシャーを解消し、パート従業員の意欲を活かす
正社員に主力業務を任せ、パートはサポート業務を…という具合に、正社員とパートで担当を分ける会社は少なくありません。しかし同社は違っていました。
「雇用形態の違いで仕事に差をつけようという発想は、私たちにはありません。もちろん入社して日が浅い方への配慮はあるものの、工事の積算や入札用書類作成といった主力業務は、みんながこなせるようになってほしい、と考えています」
正社員と同じ仕事というと、中には重荷に感じる人もいるかもしれません。木下氏は、その点についても配慮しました。
「これは以前から取り組んできたことなのですが、仕事の優先順位をつけ、“今日中に終わらせないといけない仕事”を極力なくすようにしています。過去に限られた人数で業務をまわしていた時期がありましたが、ミスも多く仕事の質が良くなかったのです。やはり時間に追われていては、いい仕事ができません。パート勤務の場合、事情に合わせて15時や16時に勤務終了しますが、その時間でできることをやってもらい、できなかった分は、翌日にやっても間に合うように、時間には余裕を持って、といつも伝えています。そのために増員も進めてきました」
“サポートだけでいい”と、パートを軽視しない。また“今日中になんとか”とプレッシャーをかける仕事の配分をしない。それによって、短時間勤務のパート従業員も安心して働けるような、多様な働き方を実現する姿勢が同社にはあったわけです。
子育て世代を中心に、21人が応募
同社では、パート従業員にも正社員と同様に家族・住宅・資格手当などが支給されます。また資格支援制度や、社外研修等の費用補助を行うのも正社員と同じ。違いは、勤務時間・日数とそれに紐づく給与システム(月給・時給)しかないのです。
募集広告では、仕事内容や手当・資格支援等はどちらも同じであると伝えつつ、パート勤務の場合は、時間・日数の融通が利くことを丁寧に記載。それにより、21人の応募を集めました。そのうち8割はパートを希望しており、子育て世代が多かったようです。
パート従業員として採用された大湊さんは
「地質調査コンサルという事業に興味を持ったのと、勤務体系が自分に合いそうだったので応募しました。募集広告にあったとおり、子どもの習い事の送迎ができるよう勤務時間等柔軟に対応してもらえました。仕事は確かに少し難しめですが、“先輩と分担しながら取り組む”と求人に記載されていたこともあり、不安はありませんでした。実際に働き始めても、皆さんのご協力により負担を感じることはありません。資格取得の支援もあり、今後営業部としてスキルアップできるような資格があれば積極的にチャレンジしようと思います」
と笑います。
「長く働いてほしいから」と正社員に固執せず、パートの募集に発想転換ができたこと。時間に制約のある働き方でも焦らず取り組めるよう、仕事の優先順位のつけ方を見直していたこと。そして「パートはサポート役」と決めつけず、正社員と同等の期待を伝えたこと。これらが、意欲の高い応募者を数多く集める要因となったのではないでしょうか。