人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2023年10月03日
理念や仕事の意義を伝える努力が、学生の意欲を触発しロイヤルティーを促す
今回クローズアップする人材活用の事例は「ワンズオリジナル」
鹿児島県姶良市・霧島市で宅配ピザ「ピザウイリー」を経営する(有)ワンズオリジナル。同社の関社長は約20年前、創業オーナーからピザウイリーを受け継ぎました。以来、できる限り添加物を含まない肉・魚介・野菜などを使用し、おいしさにこだわったピザの提供を心がけて、着実にファンを増やしてきました。
そんな同社の大きな悩みが「学生アルバイトが急に休む、そのまま辞めてしまう」ということ。この問題に関社長がどう取り組み、解決に導いたか、についてお聞きしました。
- ● 社名/有限会社ワンズオリジナル
- ● 主な事業/宅配ピザ
- ● 従業員数/正社員4名、アルバイト・パート14名(2023/9/30時点)
- ● 店舗数/2店舗(2023/9/30時点)
「ワンズオリジナル社」の事例から学ぶ人材活用のポイント
- 問題
- 学生アルバイトの急な休みや、無断欠勤が多かった
- 原因
- 「シフトに穴をあけることの重大性」を学生が認識していない
- 対策
- ・「シフトに穴をあけることの重大性」を会社の理念や仕事の意義などとあわせて伝える
- ・上記をかたちで伝えるために、正社員と同様、アルバイトにも精勤手当を導入
- ・「お金を稼ぐ」以外に、店舗運営を通して就活や今後の人生に活きる場を提供
- 成果
- ・「お金を稼ぐ」以外の「ここで働く意義」を見出し、急な休みや無断欠勤をする学生アルバイトが、ほぼゼロに
- ・店舗運営や組織、商品について学ぶことで、自律的に考え行動する学生アルバイトが増えた
学生は重要な存在。前向きに取り組んでくれるための働きかけが大切
ピザウイリーは2店舗を4人の正社員と14人のアルバイトで運営しています。そのうち、学生アルバイトは10人。宅配業務はもちろん、厨房でのピザ作りにおいても学生は非常に重要な存在です。
ところが以前は、シフトに入る直前に休む学生が結構多かったのです。連絡なしで勝手に休み、そのまま辞めて来なくなったケースもありました。
若者が少ない土地柄もあり、学生は働き手として引く手あまたです。より時給のいい仕事もあるのでそちらを優先したり、飲み会を優先したりと、シフトに穴があくことの重大さを理解できていなかったのでしょう。
学生を雇うのは止めよう…と思わなくもありません。ですが、主婦(夫)やシニアは夜のシフトを希望する人が少なく、学生がいなければ店舗運営は成り立ちません。
関社長は、学生の仕事への意欲を喚起するため、様々な手を打ちました。
仕事の意義や会社の理念について、語りかける機会を増やした
まず取り組んだのが、シフトです。シフトを組む前にアルバイトの意向を十分に聞き、休みたい日は遠慮なく言ってもらいました。もちろん、休みの日に会社の都合でシフトをお願いすることはしません。
加えて、精勤手当を正社員だけでなく、アルバイトにもつけるようにしました。欠勤・遅刻がなかった場合、時給を30円プラスするのです。1日4~5時間、月15日働くと2,000円ほどの手当は、学生にとって小さな額ではありませんが、重要なのは手当そのものよりも、手当導入の背景を伝えることだったようです。
「一番に心がけたのは、仕事の意義を考えてもらうことです。精勤手当を付けるのは、仕事に自覚を持ってほしいからだ、と背景や期待を伝えました。あわせて、会社として大切にしていることも伝え、また、実際に自分たちでピザを作って食べてもらうなど商品への理解や愛着を持ってもらうことも心掛けました」
仕事の意義や会社の理念について地道に語りかけるうち、急に休んだり、辞めたりする学生は減っていきました。
理念の大切さや店舗運営の面白さを知ると、自律的に動き始める
以前は、学生アルバイトのうち半分は急に休んだり、そのまま辞めたりすることがありました。が、今やそういったアルバイトはほぼゼロ。前向きな姿勢の学生が増えました。
どうして、学生アルバイトの仕事に対する姿勢が変わったのでしょうか。シフト通りに出勤すれば時給が上がることにメリットを感じたのでしょうか。
「もちろん30円の時給アップにメリットを感じた人もいると思いますが、そこが大きな理由ではないと感じています。言われたことをその通りにやるだけの仕事では、『他に代わりの仕事はいくらでもある』『いつ辞めてもいい』と感じていたところ、働くことについて考え、店舗運営や商品のことを深く知ることで、『ここでなら何か学べそうだ』という気持ちに変わったように思います」
「デリバリーをこなせるようになった学生には、次のステップとして調理に携わってもらっています。そうすると、注文を受け、材料を準備し、ピザを焼き上げ、宅配する、というピザ店の流れが、全部分かるようになるんです。一つの店舗の運営サイクルを学生の間に一通り体験できるというのは、卒業してどんな業界に行った場合でも、いずれ必ず役に立つ財産になると思います。そういうことに気づいたのではないでしょうか」
と関社長は振り返ります。
仕事の意義や会社の理念、店舗運営を知るようになると、「そろそろこの食材を発注していた方がいいかも」や、「宅配から戻ってくるのが20分後。その時には次のピザができていないといけない」という風に、学生自身が自律的に考え行動してくれることが増えたそうです。
様々な機会を通じ、理念や思いを伝える。そして学生たちに「ここでなら、自分の将来に活かせる経験や視点を得られる」と実感してもらう。そういった努力が、職場に対するロイヤルティーを上げることに貢献するのではないでしょうか。