人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2019年10月25日
働き方改革で進める多様な働き方×多様な人材が活躍する職場づくりへの取り組み
今回クローズアップする人材活用の事例は「岡山県ものづくり女性中央会」
2019年4月から順次施行されている働き方改革関連法。皆さんの職場ではどのような取り組みがされていますでしょうか。岡山県ものづくり女性中央会では女性経営者が集まり、将来の事業を見据えてそれぞれの職場に必要な取り組みを改めて検討し、働き方改革を推進しています。そこで今回は中小企業の働き方改革のヒントをつかむため、一連の取り組みを取材しました。
- ● 社名/岡山県中小企業団体中央会
- ● 設立/昭和30年12月7日
- ● 所在地/岡山県岡山市北区弓之町4番19-202号
ものづくり業と自社の将来を見据えた働き方改革
岡山県ものづくり女性中央会は、岡山県中小企業団体中央会に所属するものづくり企業(主に製造業)の女性経営者の集まりです。2018年8月に設立され、会員10社で経営能力の向上や働き方改革などの施策推進、各種情報の収集、意見交換などを目的として活動しています。今年は「平成31年度 中国経済産業局における地域中小企業・小規模事業者の人材確保支援等事業」の一環として、さらに取り組みを深化させているそうです。その背景について事務局を務める岡山県中小企業団体中央会の企業人材支援課課長の板谷さんにお話を聞きました。
「岡山県の基幹産業のひとつである製造業ですが、もともと女性が少ないこともあり、これまで女性に特化した集まりはありませんでした。しかし、多くの企業をみていると働き方改革は女性の活躍、ひいては多様性がキーポイント。働き方改革に関心を持つ女性経営者同士で学びあい、具体的な提言や知見の共有を行うことは中小企業団体の発展にも寄与するのではと考えていました。そこで、ものづくり女性中央会の活動をさらに深化させるため、中国経済産業局の事業を活かして、将来の事業を見据えた経営、採用・雇用、職場づくりを推進する取り組みを始めました」。
働き方改革で課題解決ができるよう施策を連携
ものづくり女性中央会では、働き方改革のテーマを「多様な働き方×多様な人材の活躍」とし、主に4つの取り組みを進めています。ものづくり企業、中小企業の様々な課題解決につながるよう、各取り組みを有機的に連携させているといいます。それぞれのポイントについて板谷さんに教えて頂きました。
●採用塾
依然として厳しい状況が続く採用環境に対し、中小企業庁がまとめている人材確保支援ツールを用いて、自社の経営課題を分析、将来の事業を見据えて、必要な人材像、条件の明確化、人材活用方針の検討、求人、採用、育成の一連の流れを検討します。ものづくり女性中央会では、講師に日下氏(株式会社はたらこらぼ代表取締役)を迎え、客観的に自社の課題を分析することや参加者同士の議論の活性化を行っています。2019年4月から2020年3月まで毎月1回、半日~1日かけたプログラムで採用をフックにした雇用に関する必要施策を洗い出し、実行まで伴走しています。
●応援サイト
ものづくり女性中央会をはじめとした中小企業は自社の魅力発信に悩む企業も少なくありません。自社ならではの強みはある、働きやすい職場づくりを推進している、といった事実がありながらもその伝え方やPRは試行錯誤で取り組んでいるところもあります。そこで、「多様な働き方×多様な人材の活躍」をテーマに様々な情報を発信する応援サイトを制作。各社の働き方改革に関する取り組みや今後実施したいことをまとめた記事や採用塾といった活動の発信などを行い、製造業や中小企業に関心が高くない層に対してもその魅力知ってもらう取り組みを進めています。
[岡山ものづくり]女性経営者が推進する働き方改革応援サイト
http://www.kirari-okayama.jp/joseikai/
●リケジョホンネトーク
理系の女子学生=リケジョにとって、地元で興味ある仕事に就き、ライフステージにあわせて無理なく働き続けられる職場を探すことは容易いことではなく、中には県外へ就職活動に行く学生もいるといいます。ものづくり女性中央会では採用塾や応援サイトといった取り組みを通してリケジョにも価値ある情報を発信すると同時に、一緒に自社や業界のことを考える機会も設けました。リケジョホンネトークでは、女性経営者が学生の興味・関心を引き出しながら本音でグループトーク。「実は元看護師で・・・」や「業績が好調の時ほど危機感を感じる」など女性経営者の意外な一面もあり、ともに気づきがある場となったようです。(2019年7月6日実施済)
●就職フェア
多様な働き方×多様な人材が活躍する職場として、主に女性やシニア、学生といった多様な人材に向けた就職フェアを実施。採用塾で学びあい、取り組んできたことを活かして、企業ブースで自社の紹介、魅力を伝え、求職者との出会いの場をつくります。採用塾ではどのような人材に向けて何を伝えるかを徹底的に検討しました。また、普段企業担当者が求職者と会うのは面接という緊張する雰囲気ですが、就職フェアではまず関心・興味を持ってもらうことが重要と位置づけ、企業ブースも丸テーブルのカフェ形式にするなど求職者が気軽に立ち寄れる雰囲気づくりを心掛けているそうです。(2019年11月1日実施予定)
働き方改革への挑戦は難しいからこそ、共に励ましあい前進する
最後にこれらの取り組みを通して感じたこと、成果とこれからについて板谷さんにお話を伺いました。
「私自身、これらの採用塾、応援サイト、リケジョホンネトーク、就職フェアを通じて一番嬉しく感じたことは、それぞれの参加企業が自社らしい「働き方改革」に果敢に挑戦し、具体的な取り組みを開始されていることです。
もちろん、改革には痛みを伴うこともあれば、反発を招くこともあると思います。
1社では躊躇するような改革も、「岡山県ものづくり女性中央会」で同じ志を持つ経営者同士の繋がりを得たことで、労苦を分かち合い、また、共に励まし合いながら前進することができる。そういった連帯が岡山に整ったことは大きな希望であり、今後の発展、拡大を期待しているところでございます」。
ジョブズリサーチセンターが実施した調査では、働き方改革について実感している人は全体の15.7%でした*。影響があった人のなかでは「残業が減った」が55.5%で多い結果となりましたが、一部では残業抑制のために業務のしわ寄せが発生したり、繁閑に応じた働き方の難しさを感じたり何か空回りしているかもしれないといった不安な声も聞きます。本来この改革が目指すのは一人ひとりがいきいきと働ける社会です。そのためには、自社の経営課題、目指す方向性、そのための解決策を中心に据えて、必要な施策を考える必要があります。岡山県ものづくり女性中央会では10社がそれぞれの状況に応じて、継続的に取り組めるよう互いに学びあっている姿が印象的でした。「1社ではできないかもしれないが、力をあわせて取り組み、実現できることがある」と板谷さんも話していたように、働き方改革は、地域で、業界で、同じ課題感を持つ者同士で、もっと足取り軽やかに取り組み始められると相乗効果を生み、さらに推進されるのかもしれません。今後もものづくり女性中央会の取り組みに注目です。
*「働き方改革に関する意識調査」URL https://jbrc.recruitjobs.co.jp/data/data20190830_1215.html