人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2016年09月16日

#女性・主婦#採用

子どもの現場で光るママならではの強み

キッザニア東京(KCJ GROUP 株式会社) メイン写真

今回クローズアップするのは「キッザニア東京」

今年で創業10周年を迎えるキッザニア東京では、妊娠、出産、育児期間も女性をサポートする就労支援体制を整えるなど、女性が長く安心して活躍できる職場環境を目指し、さまざまな取り組みに力を入れています。その内容について、同社取締役 専務執行役員 キッザニア事業本部長の能勢幸次さんと、キッザニア東京でかつてプレミアスーパーバイザーを経験して、現在はダイヤモンドステージのスーパーバイザーとして活躍する、ママスタッフの塚本真紀さんにお話を伺いました。

  • ● 社名/KCJ GROUP 株式会社
  • ● 創業/2004年9月27日
  • ● 本社所在地/〒104-0051 東京都中央区佃1-11-8ピアウエストスクエア3階
  • ● 資本金/2億5,200万円

女性が働く会社ならではの職場環境作り

現在、キッザニア東京で働くアルバイトスタッフの数は約800人。「圧倒的に多いのは独身の女性スタッフですが、ママスタッフの数も増加傾向にあります」。一般的にママというと、シフトに融通が利かない、子どもの病気で休みがちになるなど、子育てと仕事の両立が難しいイメージも少なくないが、キッザニアではママスタッフを積極的に採用しているとのこと。「現場にママスタッフが一人いるだけで、子どもや保護者の方とのコミュニケーションが円滑になり、それが独身女性スタッフにとっても良い見本になっています」とキッザニア事業本部長の能勢さん。ママ視点でキッザニアの課題について意見交換する「ママ会」や、ママのクチコミ力を営業活動につなげる「ママネットワーク」など、ママスタッフの強みを活かした取り組みも多く実施されています。

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専務執行役員 キッザニア事業 本部長の能勢幸次さん

スタッフの自発的支援が働きやすさの証

働きやすい環境づくりのために、最初に着手したのはシフト組みの問題。専用のコンピューターに希望の勤務時間やこれまでの経験等のデータを登録することで、自動的にシフトが組めるデータベースを作成し、ウェブ上でも閲覧、エントリー出来るように改善。「それまで800人近い人数のシフトを紙で管理していたため、調整は至難の業でした」。新しいシフト割では、時間枠の区切りを細かく設定することで、隙間時間を利用して働くスタッフが増え、空き時間を極限まで減らすことに成功。「子どもの病気などによる急な休みについては、複数のパビリオンを経験したスタッフや現場経験のある事務スタッフが代行するなどでできる限り対処しています」。

年に2回実施される、パビリオンやスタッフを表彰する全体会議では、子連れで参加しにくいママスタッフを配慮し、事務所に簡易託児所を設置することに。「ママスタッフが表彰されている間は、マネージャーたちが子どもの面倒を見ます」。また、産休、育休を取っているスタッフには、安心して職場復帰できるようにと、キッザニアの最新情報をメールで発信。これは、スタッフの相談役を務める「スーパーバイザーアドバイザー」によるアイデアで「家にいる間もキッザニアを近くに感じてもらいたい」という思いから生まれた支援。どちらも企業からの強制や義務ではなく、スタッフの自発的なアイデアから生まれたもの。「お互いを大事に思い、大切にされていると思える空気が社内に流れていることが、スタッフにとって働きやすさを感じる一番のポイントかも知れないですね」。

キッザニア東京(KCJ GROUP 株式会社) 写真2
全体会議は全従業員が集まり、表彰者を皆で称えあう

ママならではの強みが仕事に活かせる喜び

2人の男の子を育てる専業主婦から、いまや「キッザニア東京」の「ダイヤモンドステージのスーパーバイザー」として活躍する塚本真紀さん。「キッザニア東京」への復職を決めたきっかけについて、「スタッフのイキイキと働く姿に魅了されたから」と笑顔で語ります。「私が初めてキッザニアを訪れたのは約10年前。オープンの4日後です。そこで働くスタッフのキラキラした笑顔、イキイキとした雰囲気にすっかり魅了されてしまいました。ちょうど、次男が小学生になった頃で仕事を探していたのもあり『働くならここがいい!』とすぐに募集要項をチェック。週3日、1日4時間からという勤務時間も子育てとの両立にはピッタリでした」。
とはいえ、前職を辞めてからのブランク期間は既に8年が経過。「若い人のなかに入って居場所がなかったらどうしよう。私みたいなオバさん、誰にも必要とされないのでは...」と不安に思う気持ちもあったそうです。
でも、実際に働き出してみると「キッザニアでの仕事は想像以上に楽しくて、周囲の人に『若返った!?』と言われるほど、生活にも表情にもメリハリが生まれました。現場では、日々子どもと暮らしているママならではの強みを活かせるシーンが多く、例えば、初めての来場で緊張気味な子には心をほぐそうとたくさん話しかけたり、誰があやしても泣き止まない子を笑顔に変えたり、私だからできることが働く上での自信になりました」。

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キッザニア東京・ダイヤモンドスーパーバイザーの塚本真紀さん

仲間を気遣う雰囲気がキッザニアの良いところ

キッザニアでは、全アルバイト従業員を対象に実績・評価をもとにステージ制度を設けており、研修制度も充実しています。
子どもについての専門知識、社会、コミュニケーション、表現、演習など7教科21科目を履修し、スキルが上がることでステージアップする仕組みで、塚本さんは2012年10月に、その最上位となる「ダイヤモンドステージのスーパーバイザー」に。そして、ダイヤモンドステージの中から更に、全てのスーパーバイザーの代表、シンボル的存在として選出される「プレミアスーパーバイザー」にも2013年11月~4月の期間、就任しました。従来の業務の他、施設運営会議への参加、マスコミへの広報活動、新人スーパーバイザーのトレーニングなど、幅広い業務を担当しました。

キッザニア東京(KCJ GROUP 株式会社) キッザニア東京のステージ制度と主な研修
キッザニア東京のステージ制度と主な研修(2016年時点)

また、ダイヤモンドステージのスーパーバイザーは、月に1回「ダイヤモンド・ミーティング」を行い、キッザニア東京がお客様にとって、より楽しく、良くなるために自主的な活動に取り組んでいます。

「現場ではスタッフの表情をしっかり見ることを一番に心がけています。スタッフの雰囲気は来場した子どもたちに影響するので、雰囲気作りが何より重要。いつもと様子が違うスタッフがいたら、こまめに声をかけるようにしています。誰かがどこかでしっかり見ている、みんなで認め合えるのがキッザニアの良いところ。私が約10年間楽しく働いてこられたのも『こんな私でも認めてもらえる!』という気持ちがモチベーションになったから。今は私がみんなの支えになる番です」。

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「来場するお子さまやご両親はもちろん、スタッフ同士も常に笑顔で接することを心がけています。」(塚本さん)

大学生になった長男と一緒に働くのが夢

小学生だった息子2人は、高校1年と高校3年に成長。「手が掛からなくなってきたので最近、勤務時間を2時間延長しました。今は週4日、8時から17時のシフトで勤務しています。子どもたちは、キッザニアでいろんな人と接する私の姿を見て育ったせいか、『ママは、いろんな人に頼りにされているからね』と率先して家事の手伝いをしてくれます。長男とは『来年、大学生になったら一緒にキッザニアで働こう』と約束しているんです。今はそれが一番の楽しみですね」。

空いている時間に働ける登録制度で復帰をサポート

10月5日に、10周年を迎えるキッザニア東京。新しい節目を迎えるにあたり、特に力を入れているのがキッザニア東京を辞めたスタッフが新たに登録することにより、簡単に復職できるという「登録スタッフ制度」という仕組み。登録スタッフは、他のスタッフと同じようにネット上でシフトでのエントリーが可能になります。「先日、キッザニア初の試みとしてスタッフのOBOG会を開催したのですが、そこに集まった50人に登録スタッフ制度の話をしたら、4人が登録を希望してくれました。弊社にとっては明日から働ける即戦力、OBOGにとっては数時間単位で働くことができる、相互にメリットがある登録スタッフの数はこれから増えていくだろうと確信しています」と能勢さんは話します。

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「塚本さんをはじめとしたママスタッフの力は今後ますます必要となります。」(能勢さん)

キッザニアが目指しているのは、働いたスタッフが、結婚して子どもを産み、一時キッザニアを離れても、子育てしながら現場に復帰。その子どもたちはもちろんキッザニアを楽しんで、高校生や大学生になった時にはキッザニアでアルバイトをして、最終的にはスポンサー企業に就職...という流れ。これをキッザニアブリッジと呼んでいますが、一過性の労働ではなく、次世代の子どもたちも含め共に成長したいというワークスタイルを指します。ママスタッフの就労支援もそのライン上のひとつと捉え、積極的に取り組んでいくとのことです。

「キッザニア東京」の事例から学ぶ人材活用のポイント

ママの力を活かす
施設内を歩く時の導線など、ママ視点での気づきを集約する「ママ会」など、ママスタッフの強みを引き出し、積極的に取り入れる
勤務時間の柔軟性
子どもの成長に応じて、ママの時間管理も変化、ライフステージの変化による勤務時間変更に対応する
連動するステージ制度と研修制度
全アルバイト従業員を対象に実績・評価をもとにしたステージ制度を設け、研修制度と連動することにより、一人ひとりの力を伸ばす