人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2014年02月28日
"パートの主婦CFO" も輩出!主婦労働力活用を提案
今回クローズアップするのは「株式会社ビースタイル」
生産年齢人口が減少する中、労働力として社会経験がある「主婦」への注目が高まっている。かつてはビジネスの第一線で活躍し、結婚・出産でリタイアした主婦が「仕事もあきらめない」と派遣という働き方を活用してビジネス現場に舞い戻り始めているのだ。そこで、主婦層の人材派遣を手がけるビースタイルの三原邦彦社長に主婦労働力活用の秘訣を伺った。
- ● 社名/株式会社ビースタイル
- ● 設立/2002年7月
- ● 代表者/代表取締役 三原邦彦
- ● 本社所在地/東京都新宿区新宿4-3-17 ダヴィンチ新宿ビル5階
- ● 資本金/8624万円
- ● 従業員数/151名(2013年7月8日時点)
- ● 年商/37.8億円(2013年6月期)
主婦の活躍推進を阻害する要因は「仕事と家庭の両立が困難」
少子化および生産年齢人口の減少が進んでいる。"日本再生" をテーマに掲げてスタートした第二次安倍内閣は、「新たな成長戦略〜『日本再興戦略−JAPAN is BACK−』~」の中で、「女性が働きやすい環境を整え社会に活力を取り戻す」と銘打った、女性の社会進出を促進させる方針を打ち出している。そこでは、「女性の活躍推進の意義」として、「労働力人口の増加」「埋もれている優秀な人材の確保」「生活者の視点に立った市場の創造」が挙げられている。それとともに、"喫緊の課題" とする女性の活躍推進を阻害する要因として、「仕事と家庭の両立が困難」という古くて新しい課題も指摘している。
"家庭も仕事もあきらめたくない" と社会に復帰し始めた優秀な主婦層に着眼
こうした情勢の中、人材派遣の世界では"パートの主婦CFO" "パートの女性広報部長"が登場しているのはご存知だろうか。その名も「しゅふJOB エグゼクティブ」を2012 年9月から展開しているのは、主婦の人材派遣サービスを手がける株式会社ビースタイル。同サービス成立の背景について、三原邦彦社長は次のように説明する。
「そういった地位に就いていた優秀な女性たちが結婚・出産で一度リタイアしたものの、"家庭も仕事もあきらめたくない" と社会に復帰し始めたのです。従来は"家庭か仕事か" という二者択一を迫られていたところを、彼女たちはパートタイムという働き方で超越しようとしているわけですね。一方、中小企業においては、広報部長やCFO はフルタイムで出社してもらう必要はなく、週に2〜3日で事足りる場合が大半です。こうした両者のニーズがうまくマッチすることに着眼したわけです」
同社ではこの傾向は今後も進展すると見ており、「当該職域の拡大に取り組んでいく」と三原氏は言う。
ちなみに同社では、こうした優秀な主婦層との接点を持ち続けることを目的とした情報サイト『kashiko (かしこ)』を2014 年1 月21 日にオープンしている。
どの業務がパートタイマーに任せられるか分析する独自のツール
ビースタイルが設立されたのは2002 年7 月。人材サービス会社に在籍していた三原氏は、「少子化が進展し、若年労働人口が減少するのは明らか。そうなると、シニアか、外国人か、主婦が新戦力として期待されるようになる。今後優秀な主婦層が増えることは間違いない」と読み、同社を創業。以来、一貫して主婦の人材派遣サービスに取り組んできた。約8万名の主婦が登録し、「パートタイム型人材派遣・紹介」「スポット型人材派遣」「在宅型人材活用」「フルタイム型人材派遣」などのサービス形態を揃え、働く側・利用する側がより就業・活用しやすい環境をつくっている。
「企業にとって、主婦活用には大きなメリットがあります。社会経験が豊富で即戦力として活用できる一方、就労時間が短いことで、賃金を抑制できるなどコストダウンが図れることです。半面、フルタイムで働いてもらえないのはデメリットと捉えられますが、パートタイムでも十分対応できる業務は企業内にたくさんあるものです」と三原氏は指摘する。同社は、特に大企業向けに、社内のどの業務がパートタイマーに任せることができるかを分析する『COMPASS』というツールを開発・提供し、企業のパートタイマー活用を促進している。
生活スタイルの変化に応じてワークスタイルも柔軟に変える必要性
では、主婦層に活躍してもらうために、迎え入れる企業側にはどういったマネジメントや配慮が必要なのか。三原氏は次のように指摘する。
「あらためて言うまでもなく、家事もこなさなければならない主婦には時間の制約があります。そこを十分理解した上で、その制約の範囲内で彼女たちに仕事を任せることに尽きるでしょう」
女性は、結婚、第一子や第二子の出産・育児、子供の入学などとライフステージの変化ごとに生活スタイルが変わる。企業が仮に一人の女性を雇用し続けるとすれば、その変化の必要性を企業側が理解し、彼女たちの生活スタイルの変化に応じてワークスタイルも柔軟に変える必要があるのだ。しかし、現実的には「"柔軟な対応" は難しい」とあきらめている企業も多いのではないか。人材不足で悩んでいるそうした企業は、今一度"優秀なパートタイマー" に任せられる仕事はないか分析してみることも重要なソリューションといえるだろう。
モチベーションを高め「主婦労働力活用のコツ」
さらに、同社は次のような「主婦労働力活用のコツ」をホームページで公表している。一概にはいえない部分もあろうが、参考になるだろう。
●女性は"結果主義" より"プロセス主義"。男性のように業務の結果ではなく、プロセスに関するフィードバックを好む。
●女性は男性より五感が敏感。「トイレがきれい」なのは必須。オフィスにはちょっとした絵や花を飾る、加湿器を置く、弁当が温められる電子レンジを用意する、といった"ささいな"配慮でもモチベーションは高まる。
●女性は"チーム主義"。皆の前で自分一人が褒められることはあまり好まず、チーム全体が讃えられることを好む。
●家事を年収換算すると1280 万円に相当するという調査もある。重労働でもある家事や家庭生活についても理解し、残業の目処を早めに伝えたり、納期には余裕を持って仕事を依頼すること。
●主婦の就労には"社会参加したい" という思いもある。業務の改善点などについての意見を聞くこと。
●就学前の子供は、突然病気になることも多い。そういった場合の家族などによるバックアップ体制の有無を把握しておくこと。
そのほか、ビジネスの現場から遠ざかっていたことで、着ていく服装や言葉遣いなどに不安を抱く主婦は多い。会社側がそういった心配事を聞く姿勢を示すことも大切な心遣いだ。
お金をもらえての社会参加は一挙両得
同社に登録し、派遣でケータリングサービスの受注オペレーターとして働いている主婦の小林佳代子さん(43 歳) に話を聞いてみた。小林さんは高校卒業後、スーパーの販売職や百貨店のインフォメーション係、企業の受付などの仕事を約10 年間経験。その後、2 人の子供の出産・育児で10 年間専業主婦として過ごし、第二子が小学校に入学したことを機に働くことを再開した。
「専業主婦では考え方が固まってしまうようで、やはり社会との接点がほしくなったのです。 仕事することも好きでしたので、お金をもらえて社会参加できるのは一挙両得だと思いました」 第一子を産んだ後も働こうと考えたが、保育園に入れることができず、時間が中途半端で 休みも多いことから「無理しても会社に迷惑をかける」と諦めたという。
そんな小林さんは、10 年間のブランクを経て仕事に復帰することに不安はなかったのか。
「言葉遣いがビジネス現場にふさわしいものかどうかといった不安はありました。けれども、ビースタイルの担当者がいろいろフォローしてくれたので対処できました」
"マルチタスク" の家事をこなす主婦は会社でも周りをよく見られる
「オペレーターの仕事を選んだのは、販売職や受付など人と接する仕事の経験を生かせるとの考えから」と言う小林さんは、自分自身の強みをどのように自覚しているのだろうか。
「接客という基本スキルは共通しているので、あとは具体的な業務の説明を受ければすぐ仕事に就くことができました。今の勤務先では、給与金額が連動する能力テーブルが6段階に分かれていますが、アルバイトはレベル1 から、主婦が主体の派遣はレベル3 から始 まります。つまり、即戦力として期待されているわけで、それに応えられている強みを感じています」
主婦固有の強みはどうか、重ねて伺った。
「家庭の主婦は、子供の世話をしながらお料理をつくり、洗濯機を回すといった"マルチタスク" の家事をこなしています。ですから、会社の仕事でも一つのことをやりながら周りを見ることができて、機転が利くという強みはあると思いますね」
三原氏も、主婦特有の強みについて次のように言う。
「仕事を進める上では、周囲との間に発生する問題を逐次解決していくコミュニケーション能力が求められます。その点において、社会経験や人生経験が豊富な主婦は我慢強く対処していける強みがあると思います。そういった主婦層は確実に戦力になるという当社の提案は、多くの企業に受け入れられていますね」
人材不足に悩む企業は、こうした特質を備えた主婦を戦力として活用しない手はないはずだ。その活用を阻害しているのは企業自身にあるという自覚を持ち、どうすれば受け入れられるか検討する価値は大いにあるに違いない。
「ビースタイル」が企業に提言する主婦労働力活用のポイント
- 雇用条件
- 主婦の時間的制約を理解し、就業条件・就業形態は柔軟に対応する
- 職場環境の整備・企業風土改革
- 女性が好む(気にする)環境を理解し、整える
- 従業員の働きがいや働く意欲
- 「社会との接点」を求めて仕事に復帰する主婦の就業経験を尊重し、業務改善の意見も求める