座談会レポート 「今こそ話したい!これからの多様な働き方」
2020年12月01日
オンライン面接をこれから始める採用担当者に知ってほしいこと
座談会の概要
この座談会では、新しい時代の転換期においてそれぞれが感じている変化を不安として抱えるのではなく、前進するためのヒントにしていきたいと考えています。
6回目となる今回の座談会テーマは「効果的なオンライン面接」についてです。ジョブズリサーチセンターの宇佐川が進行役となり、リクルートジョブズ営業の市石さんが求人の現場で聞かれる企業担当者の悩みに対し、就職・転職面接コンサルタントの細井氏よりアドバイスをいただきます。
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細井 智彦(ほそい ともひこ)
就職・転職面接コンサルタント/細井智彦事務所(Office TH)代表株式会社リクルートキャリアを経て2016年3月独立し現職。採用側と応募者両方の立場に精通する経験を活かし企業と応募者の採用活動や面接場面での機会創出に向けた指導啓蒙に取り組む。新型コロナの影響で、オンラインでの研修やWEBによる面談・面接ノウハウの提供についても実施中。
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市石 喬(いちいし たかし)
株式会社リクルートジョブズ
営業本部 エリアマーケット営業統括室 エリア営業2部 広島1、2グループ
グループマネージャー2005年 リクルートHRマーケティングに中途入社し、『タウンワーク』『フロム・エー』などの営業に。首都圏でリテール担当1年、大手担当4年を経て、GM任用のタイミングで営業企画へ。2018年からは再び営業部に戻り、GMとして福岡・北九州・大分を経て、2020年4月より広島に着任。趣味の筋トレで心も体も鍛える営業マン。
興味はあるけど…?オンライン面接のメリットをおさらいしよう
宇佐川:今回のテーマは「効果的なオンライン面接」です。コロナ禍で進みつつあるオンライン面接ですが、従来の対面での面接に不安がある採用担当者にとって、オンライン面接は実施のハードルがまだまだ高いようです。まずこのハードルをどのようにすれば越えられるのか、お聞かせいただけますでしょうか。
細井:コロナ禍での中小企業の採用力向上支援に関わることがあり、オンライン面接の話も相談されることは少なくないのですが、全体的に興味関心はあるが実施率は低いなと感じています。企業担当者も必要性は理解しているのだと思います。ただ、従来の面接よりもデメリットがあるのではないかという思いがぬぐい切れない。興味はあるけどやる気はない…といったような微妙な状況があるのかもしれません(笑)。
宇佐川:デメリットが先行してしまう…というのはありますよね。
細井:デメリットもあればメリットもあるので、メリットを改めて考えるといいですよね。たとえば、ロケーションフリーな点。地方の会社では、交通利便性がよくないと応募するまでのハンデになることもありますが、オンライン面接であれば自宅と会社で面接が可能なのでその点をカバーできます。
次に、アルバイト・パートであれば求職者は若い方、女性の方も多いと思うのですが、オンライン面接への抵抗感はそこまで高くないですよね。Zoom等もスマホや身近なデバイスでできるので、面接を身近なものにできるのではないでしょうか。むしろ面接官のほうがここを難しく感じていそうですが…。
また、特に子育て中の女性の方は働き心地を気にされると思います。今後も感染拡大が懸念されるなか、リモートワークやオンライン面接などリモート対応できる会社かどうかで見方がかわります。オンライン面接を実施しているという事実が、その会社における働き方改革を表していて、採用力を上げることにつながると思います。
市石:そうですね、求職者側はスマホで対応できれば抵抗はそんなにないだろうと思います。となると、やはり企業担当者への後押しが必要だと思うのですが、メンバーからもよく聞くのは「パソコンがないから出来ない」という声です。
細井:おそらく一度使い方がわかればクリアできるものでしょう。たとえば、皆さんのような営業担当が隣でスマホ操作を見守りながら確認するだけでも理解は進むと思います。体験することが大事です。
市石:イメージが湧きます。当社では申込書の電子化を進めていて、当初は「紙の方がいい」というお客様の声も多かったのですが現在では7割近くのお客様に電子承認にご対応いただいています。実際に一度利用してみると意外と難しくなかった、というのはありますよね。
細井:実は私自身がその一人でもあります。コロナ禍前は電話すら苦手意識がありましたが、今では打ち合わせもこのような座談会、セミナーなどもオンラインで実施することになり、自分でも「意外とできるものだなぁ」と感じています。ポイントは、初回が大事ということ。従来との変化を目の前にすると誰しも否定から入りたくなる気持ちがあります。そこをぐっと乗り越えて、自分自身に成功体験を積み重ねることで対面同様に話せるようになります。
オンライン面接のメリットを十分活かすには「手を拡げすぎないこと」
市石:お客さまのオンライン面接の練習として、私たちとの打ち合わせをオンラインに切り替えるというのはすぐにできそうです。一方で「対面でないとわからないこともあるのでは?」という声や、「結局、店舗に来てもらったほうが実際の職場の雰囲気もわかるし、いいのでは?」ということも聞かれます。
細井:そのご質問は私もよく聞きます。オンラインの特性を理解して活かすという意味では、一気に面接のすべてをWEB化しようと手を拡げすぎないことがポイントです。おすすめはカジュアルな段階でコンタクトをとりたいときに使用することです。
たとえば、中途採用の場合に応募や面接までの動機づけとしてまず話す機会(面談)を設けたり、新卒採用の場合では先輩社員との座談会を実施したり、採用選考プロセスのなかでも面接の手前、初期の段階でまずは利用してみてはいかがでしょうか。
宇佐川:アルバイト採用でも職場見学の代わりに、例えば、スマホで店舗内を映して見てもらう、働いている方に、その場でインタビューして一言もらうなど工夫できそうですね。
細井:そうです。また、大事なことは、対面でもオンラインでも「求職者本人の素を引き出したい」というのは同じなんです。本人の素を引き出すためのテクニックは確かにあるのですが、本質を引き出すには、本音が話せる関係性づくりが根底に必要なことは対面もオンラインも同じです。
それでいうと、オンラインは面接特有の“圧”が伝わりにくいですし、求職者の緊張負荷は軽減されると思います。ちょっとイメージしてみてください。(下記のように図式化してみると)従来の面接とオンライン面接で求職者への圧のかかり方は違うと思いませんか。着席で物理的に向かいあっているよりも、オンラインの画面になると横に並ぶような関係に見えますよね。
これは関係性をつくるのにいいことで、たとえば未経験の方、専業主婦で仕事にブランクがある方など、面接という場に多分に緊張してしまい話せなくなってしまうような方でもオンラインという場だからこそ、話せる状況にもっていけると思います。
宇佐川:本音が話せる関係性づくりですね。
細井:はい、面接官に求められるスキルは対面でもオンラインでも同じで、「相手が話していることをいきなり肯定や否定せず、まず受け容れる「受容と共感」で傾聴しながら、「冷静に分析する」ことです。オンライン面接では非言語要素(たとえば服装、細かい身だしなみ、持ち物の扱いなど)をわかろうとするのは難しいので、従来の面接でその点を見られていた面接官は上記のようなスキルを改めて身に着けることが必要ではないでしょうか。
市石:ちなみに、オンライン面接の方が面接官のスキルも必要、面接における関係性づくりのための時間も必要になってくるのでしょうか。
細井:オンライン面接ならではのテクニックは必要になるとは思います。ただし、時間はそう変わらないのではないかと思います。従来の面接だと、面接前後の時間も話せるときがありますよね。私は「お散歩面接」といっているのですが、面接が終わりお見送りの際に「何か他に気になることありますか」「こちらもよく考えてご連絡しますね」など5分程度会話ができると思います。このような時間をオンライン面接でも意図的に作ることをおすすめします。たとえば、「以上で面接は終了です。ちなみにちょっと職場の雰囲気を映すのでご覧になりますか」とカメラで職場内をぐるっと映したり、働いているスタッフを少し映したりするだけでも、求職者にとっては情報です。このようなことをしながら、「何か気になることありますか」など問いかけると「この面接官なら話せる」という関係性づくりにも活かせると思います。
今回は「効果的なオンライン面接」をテーマに、まずは従来の対面での面接とオンライン面接の特徴についてお話をお聞きしました。実際に会った方が人柄もよくわかるし…と思われる方も少なくないと思いますが、細井氏より、本人の素を引き出すための関係性づくりにオンライン面接は活用できるとお話いただきました。後編は採用シーン別のオンライン面接のポイントについてお聞きします。
文/茂戸藤 恵(ジョブズリサーチセンター)