座談会レポート 「今こそ話したい!これからの多様な働き方」
2020年11月10日
コロナ禍の仕事探し不安を軽減する応募者への対応とは
座談会の概要
この座談会では、新しい時代の転換期においてそれぞれが感じている変化を不安として抱えるのではなく、前進するためのヒントにしていきたいと考えています。
5回目となる今回の座談会テーマは「求職者が安心できる仕事探し」です。ジョブズリサーチセンターの宇佐川が進行役となり、求職者からの相談や問い合わせを受ける組織のお二人、公益社団法人全国求人情報協会で常務理事を務める吉田氏とリクルートジョブズ審査部の上林さんと話し合います。後編は応募者対応でこれから大事になるポイントについてお聞きします。
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吉田 修(よしだ おさむ)
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事島根県松江市出身。1977年に日本リクルートセンター株式会社(現:株式会社リクルート)入社、株式会社リクルート広報室課長、審査統括室長、株式会社リクルートジョブズ審査部長を歴任。2015年に公益社団法人全国求人情報協会常務理事に就任。趣味が高じて、2000年より築地双六館館長(http://www.sugoroku.net/)も務める。
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上林 幹敏(かみばやし まさとし)
株式会社リクルートジョブズ 経営統括室 審査部 部長1991年リクルートグループに新卒入社。入社以来一貫して人材求人領域を担当。東京・神奈川にて、営業職・営業マネジャー職を経験(通算約16年)。その後、人事マネジャー、ビジネスプロセスに関連する各種センターの運営管理や、ビジネスプロセスのアウトソーシング(沖縄、中国等へのアウトソーシング他)のプロジェクトリーダー等を経て、7年前から現職。
コロナ禍のいま応募者が気になることに対応できているか
宇佐川:面接時のマスク着用や選考日程の変更可能性などを記載することで、安心して仕事探しができるとお話いただきました。その他にも応募者対応で気をつけたほうがいいことはどのようなことでしょうか。
上林:応募者対応で重視したいのは、求人情報と実態との一致です。私どもが実施した調査でも、情報に間違いがないことを応募者はもっとも重視していることがわかりました。多くの企業はしっかり対応されているのですが、一部で「面接で求人にある勤務時間と異なるものを提示された」や「研修期間中の待遇が異なるといわれた」といったような相談をいただくことがあります。従来から相談がある内容ですが、コロナ禍ですと、たとえばオンライン面接で応募者と面接官の手元にある求人情報がそもそも異なるものを見ながら話している…ということも考えられるかもしれません。勤務時間、給与などの勤務条件は残業や研修など細かい点も含めて、まずは社内で情報共有し、誰が応募者対応しても応募者の認識と相違ないように進めることが大事です。
宇佐川:求人企業が時差出勤や在宅勤務などで社内体制も変更になっているケースも考えられます。そうなると改めて応募者対応の体制についても確認したいところですね。
吉田:在宅勤務含めて、企業のコロナ対応について、応募者は知りたいことがいろいろあると思います。たとえば、新人への教育と評価。在宅勤務で本当に育成できるのか、どう評価するのかなど。今までと方法や評価軸が変更になっているのであれば尚更知りたいところだとは思います。その他、ポストコロナの事業戦略や経営者自身がコロナ対応について語っているか、というのもあるかもしれません。
上林:確かに、私の部署でもコロナ禍を機に初めて在宅勤務で取り組んだ業務がありますが、先輩社員に聞きたいことを質問するにも直接の声がけというよりはチャットになるので、質問するまでのハードルがあがっていると思います。育成という観点は入社後で気になるところなので、できるだけ求人情報に記載したり面接で説明したりするほうがいいですよね。
吉田:労働条件の明示項目にはならないと思いますが、仕事の楽しさ・やりがいというのも個人的にはきちんと応募者と話してほしいと思います。
宇佐川:仕事の楽しさ・やりがいもコロナ禍で変化していること、変化していないことがありますよね。それが応募者のイメージとギャップがあるとミスマッチになりかねないのでその点も大事ですね。
これから求人メディアが担えること
宇佐川:応募者対応について企業担当者に求められることについてお聞きしてきました。最後に社会全体でのバックアップ体制や我々求人メディアに求められることについてご意見いただけますでしょうか。
吉田:全求協で求人メディアのチカラを8つにまとめたものがあります。そのうち「雇用開拓力」「マッチング促進力」「産業構造転換促進力」がいま強く求められるのではないでしょうか。つまり、求人メディアが工夫をして、コロナ禍で人材ニーズがある業界に人材シフトを促すということです。
また、ジャーナリスティックな視点を持つことも求められるでしょう。各求人メディアには編集記事や特集などそのメディアの切り口、メッセージなどの特徴があると思います。いまは特にその視点を持つことで、求職者が安心して、情報に信頼し、その求人メディアを利用して仕事探しをする時期だと考えています。
宇佐川:特集の切り口とあわせて求人の掲載があることは大前提ですが、そういった工夫は先ほどの8つのチカラに通じるところですね。
吉田:これまでも関心はあるところですが、コロナ禍になり企業における従業員の健康維持対応については関心が高まるところです。たとえば、受動喫煙防止対策は、喫煙率が低い若者や女性にとっては職場環境として気になるところだと思います。
宇佐川:健康維持という観点でいうと、社会保険適用の記載などもあげられます。
上林:そうですね。その点は現在も原稿表記で推進を図っているところです。今回テーマの求職者が安心できる仕事探しについては、基本的にはコロナ禍前と変わらず、信頼できる情報を伝えることだと思います。そのうえで、求人メディアの相談窓口としては、これからも変化する状況のなかで求職者からの相談や問い合わせを踏まえて、必要に応じて原稿表現を示す、応募者対応の注意喚起を行う、といったことに取り組み続けたいと思います。
今回は「求職者が安心できる仕事探し」をテーマに、前編では求職者の相談窓口に寄せられる求職者の声について、後編では求められる応募者対応について話し合いました。コロナ禍で求人企業も運営体制や募集内容の変化などがある場合は特に今まで以上に募集情報の間違いはないか、社内でしっかりと共有できているか、改めて見直したいポイントです。さらに、安心・安全に働くことが重要である今日は感染防止対策、健康維持施策に関する視点も大切だと考えられます。「求職者が安心できる仕事探し」の場をつくることは一朝一夕ではないからこそ、しっかり向き合いたいテーマです。
文/茂戸藤 恵(ジョブズリサーチセンター)