座談会レポート 「今こそ話したい!これからの多様な働き方」
2020年10月20日
コロナ禍において求職者が安心できる仕事探しのために必要なこと
座談会の概要
この座談会では、新しい時代の転換期においてそれぞれが感じている変化を不安として抱えるのではなく、前進するためのヒントにしていきたいと考えています。
5回目となる今回の座談会テーマは「求職者が安心できる仕事探し」です。ジョブズリサーチセンターの宇佐川が進行役となり、求職者からの相談や問い合わせを受ける組織のお二人、公益社団法人全国求人情報協会で常務理事を務める吉田氏とリクルートジョブズ審査部の上林さんに、コロナ禍の求職者相談や求められる対応などについてお話をお聞きします。
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吉田 修(よしだ おさむ)
公益社団法人全国求人情報協会 常務理事島根県松江市出身。1977年に日本リクルートセンター株式会社(現:株式会社リクルート)入社、株式会社リクルート広報室課長、審査統括室長、株式会社リクルートジョブズ審査部長を歴任。2015年に公益社団法人全国求人情報協会常務理事に就任。趣味が高じて、2000年より築地双六館館長(http://www.sugoroku.net/)も務める。
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上林 幹敏(かみばやし まさとし)
株式会社リクルートジョブズ 経営統括室 審査部 部長1991年リクルートグループに新卒入社。入社以来一貫して人材求人領域を担当。東京・神奈川にて、営業職・営業マネジャー職を経験(通算約16年)。その後、人事マネジャー、ビジネスプロセスに関連する各種センターの運営管理や、ビジネスプロセスのアウトソーシング(沖縄、中国等へのアウトソーシング他)のプロジェクトリーダー等を経て、7年前から現職。
コロナ禍の仕事探しで抱く求職者の不安
宇佐川:今回のテーマは「求職者が安心できる仕事探し」です。コロナ禍で環境変化が大きい中、緊急事態宣言中など求職者にとっては就職活動がしづらい時期もあったかと思います。全国求人情報協会*(以下、全求協)やリクルートジョブズでは求人情報誌読者や求人メディア利用者からの相談や問い合わせを受ける窓口がありますが、どのような状況でしょうか?
*全国求人情報協会とは、全国の求人メディアが会員として構成される業界団体。求人広告適正化のための自主規制を行うために業界の有志が集まって1985年に発足。求人広告適正化以外にも障がい者雇用キャンペーンなど労働市場の活性化に取り組む。
吉田:全求協の相談窓口に3月~7月の間に寄せられた内容でコロナ関連のものは、「就職活動への不安」「求人メディアの相談窓口に電話がつながらない」「応募先企業と連絡がとれない」といったものが複数件ありました。「解雇、内定取り消し」「掲載企業への苦情」というものも多くはないですがありました。「就職活動への不安」が一番多いのですが、緊急事態宣言もあり、いつ活動していいのかわからない、先が見通せないという不安からくる相談内容です。また、求人件数が減っていることへの戸惑いなどもあるように思います。
上林:4月頃は当社の窓口も「応募先企業からの返信が遅い」「コロナ影響で採用活動が延期になった」など、緊急事態宣言が発出されたタイミングだったので、企業も対応が十分にしきれなかった様子がありました。ただ、求職者もコロナ影響による変更は理解している方が多い印象で、「状況はわかるので、採用を控えることになったのであれば求人掲載を取りやめてほしい」というご意見をいただくこともありました。5月以降からコロナに関する相談は徐々に減少し、7月以降は相当数減少している状況です。
また以前よりも採用活動が短期間になっている傾向はあるので、「応募したがすでに終了していた」といったお問合せもありました。こういったものは注意が必要なので、求人原稿にも一言添えるなど工夫が必要だと思います。
宇佐川:確かに、採用活動が短期間になっている傾向はありそうですね。採用できて募集が終了したら、掲載ページで終了をお知らせする、などの柔軟な対応が求められますね。
上林:これまでも同じような状況はあるのですが、コロナ禍ですと面接に行くのも今まで以上に勇気がいるというか…色々な気遣いも伴うと思います。ですので、そのうえで面接に行ったら充足できたので選考は終了したなどと告げられると疲労感も増えてしまいますよね。コロナ禍での仕事探しというのは、これまで以上に求職者の気持ちへの配慮が求められるのではないでしょうか。
宇佐川:そうですね。求職者としては頑張ったのに…という気持ちだけが残るとそのあと活動しづらくなってしまいそうです。求職者の気持ちで他に気になることはありますでしょうか。
吉田:オンライン面接への不安の声も聞いています。方法がわからない、どうしたらいいのか、というもので新卒の就職活動をされている学生からでした。
上林:当社でも「電話応募したが、お店側からオンライン面接と言われた。経験がないので出来るか不安。どう返答したらよいかわからない」といった相談をいただいたことがあります。オンライン面接は絶対やめてほしいという話ではなく、戸惑いの声です。
宇佐川:コロナ禍の採用活動に企業も徐々に慣れてきて、オンライン面接は拡がってきていると思います。それと同時に求職者の戸惑いの声も増えるのは当然のことですが、事前に何を準備したらよいか、接続方法や面接の流れなどを十分に伝えられていない企業もあるかもしれません。このあたりは我々も企業と一緒に考えていきたいですね。
募集から面接、内定、就業後まで求職者の不安を取り除く表現を
宇佐川:3月以降から現在まで、求職者からの相談やお問合せ内容をお聞きしましたが、その後はどのような対応をされてきているのでしょうか。
上林:当社では4~5月頃、いただいた内容や企業の状況も踏まえて、コロナ禍における求人原稿の表現例を追加し、社内共有しています。たとえば、コロナ感染防止対策の表記について考え方と具体例を示す、などです。業務に関係のない内容や排除表現などについても改めて注意喚起を促しました。
【感染防止対策の表現例(一部)】
- 〇 勤務中はマスクをお渡ししますので、装着をお願いします。
- 〇 新型コロナウィルスの影響で、選考日程が変更となる場合があります。
- × コロナに影響されない業種です。
(因果関係や根拠を明確に示すことができないため不可) - × 直近で海外渡航歴のある方はご遠慮下さい。
(排除表現は不可)
*( )は考え方
宇佐川:このような表現例があると、企業も自社の取り組みを改めて考え、伝えやすくなると思います。以前も座談会で求人情報は企業スタンスが表れると話していました。
(https://jbrc.recruitjobs.co.jp/session/session001526.html)
一方で、求職者向けに何かお知らせなどはされているのでしょうか。
吉田:全求協では「求人メディアによる求職者・求人者支援の取り組み」として、会員各社の取り組み(無料掲載や特集など)を日々更新しています。最近では地方行政と連携して雇用促進のための就職支援に関するイベントなども情報掲載があります。
1年前と比べると、仕事探しにかけるエネルギーがすごく必要になっていますよね。求人メディアはその後押しができるように、相談体制を整えたり、そこからわかってきたノウハウの共有がなされたりするといいのではと思います。たとえば、各メディアにあるFAQは応募や面接のプロセスなども記載ありますが、コロナ禍の状況を盛り込むことも必要ではないでしょうか。「応募先企業の感染防止対策により、電話で応募された方でもオンライン面接になる可能性もあります」などあると、事前に企業の状況もある程度わかると思います。
宇佐川:おっしゃる通りですね。在宅勤務が多い職場ですと、電話がつながりづらいのでメール連絡を推奨する、などコロナ禍で注意することはありそうです。
上林:そうですね。応募、面接、就業後のそれぞれでコロナ禍の状況や感染防止対策が伝えられるといいと思います。求人原稿でも、「面接中はマスク着用をお願いします」や「面接場所は会議室です。換気のため窓を一部開放しています」など。「職場は飛沫感染防止シートを設置しています」といった就業後もイメージできるようにすると安心して面接に臨めるし、応募先企業への信頼にもつながると思うので、これからも表現については注意してみていきたいと思います。
今回は「求職者が安心できる仕事探し」をテーマに、まず求職者の相談窓口に寄せられる求職者の声について共有いただきました。求職者自身の「就職活動への不安」、応募先企業から「返信がこない」といった対応に関する声などを踏まえ、全求協やリクルートジョブズでは情報提供や原稿表現の見直しを重ねて対応していることをお聞きしました。後編はこれから求められる応募者への対応について話し合います。
文/茂戸藤 恵(ジョブズリサーチセンター)