座談会レポート 「今こそ話したい!これからの多様な働き方」

2020年09月08日

新しい生活様式で変わる働き方、働く意識に目を向けよう

新しい生活様式にあわせてマスクを着用しながら会話をする社員のイメージ写真

座談会の概要

この座談会では、新しい時代の転換期においてそれぞれが感じている変化を不安として抱えるのではなく、前進するためのヒントにしていきたいと考えています。
3回目となる今回の座談会テーマは「今求められる中小企業における人事の役割」です。ジョブズリサーチセンターの宇佐川が進行役となり、株式会社ソアーシステム代表取締役社長であり東京中小企業家同友会の共同求人委員会の委員長も務める大脇氏を中心に3人で前編に引き続き、後編は人事という専門組織がない中小企業も少なくないなかで、コロナ禍で求められる人事対応の悩みについて話し合います。

  • 大脇 耕司の写真

    株式会社ソアーシステム代表取締役社長
    東京中小企業家同友会 共同求人委員会委員長
    大脇 耕司(おおわき こうじ)

    高知県出身55歳。横浜国大卒。新卒で株式会社ソアーシステムに入社し、組込みシステムや業務システムの開発に従事。2009年同社取締役、2010年代表取締役。現在11期目。社員数45名。代表就任と同時に東京中小企業家同友会に参画。2015年共同求人委員長、2018年副代表理事。共同求人委員会では、合同説明会のほか、インターンシップや業界研究会などを主催し、学生に中小企業の姿を知ってもらう活動を行っている。

  • 村上 祥平の写真

    株式会社リクルートジョブズ 
    営業本部 エリアマーケット営業統括室 エリア営業1部 福岡1グループ
    村上 祥平(むらかみ しょうへい)

    2009年リクルートグループに新卒入社。地元中小企業のアルバイト・パートの求人担当として、東京は足立区、台東区浅草から全国津々浦々(浜松、岡山など)を経て4年前から福岡でマネージャーとしてチームを束ねている。首都圏でのタウンワークやフロムエーナビの代理店の渉外担当時の経験なども踏まえながら、各地の中小企業の立場に立った提案を行っている。

新しい働き方への見直しで見えてきた、採用業務の担当に必要なこととは

中小企業では人事部という専門組織がないことも多いなかで、新しい生活様式を踏まえた働く場所、オフィスや店舗といった職場環境や働き方の見直しが求められ、ローテーション勤務、時差通勤、県をまたぐ移動の制限など、検討が必要な採用や就業に関わる事項は多岐にわたります。実際に中小企業の採用担当者や人事担当者から聞かれる悩みをもとに話をお聞きします。

村上:中小企業のお客様の採用をお手伝いする際に、経営者も採用担当も「自社の強み」を意識して採用活動を行うことに難しさを感じている方が多いように思います。私は経験上、複数の企業を比較できるので、独自の人事制度や待遇があったり、素敵な先輩がいたりといった強みがあるのにもったいないと思うことがあります。「自社の強み」を認識するためにはどのようなことが必要でしょうか。

大脇:自社と他社を相対的に比較して、職場環境や人事制度などの「自社の強み」を自覚する機会は一般的にはなかなかないと思います。ただおっしゃる通り、そういったことは必要です。
私が参加している東京中小企業家同友会の共同求人委員会では、よく合同で採用イベントをやるのですが、私たちはお互いをライバルだとは思っていません。むしろ参加企業が一緒に採用力を上げていこうという考えでイベントに参加しているので、「今のプレゼンよかった!うちも真似させて」「このポイントはうちよりも優れているからもっと強調したほうがいいのでは」といったアドバイスを日常的にしあっています。
このような機会があると、自社の強みやアピールポイントを客観的に知ることができ、結果的に入社後のミスマッチが少ない、定着につながる採用ができると考えています。

他社との意見交換のなかで自社の強みやアピールポイントを見つけ出せているイメージ

村上:良い学びあいの場ですね。アピールポイントというのはどういった内容が話されたりするのでしょうか。

大脇:私も経験上わかっているのは、経営者が正直で情熱的で嘘を言わない、しっかりとした経営を行い、それを伝えること、これがきちんとできている企業に良い人材が集まると思っています。ですので、その点をきちんとアピールできているか、というのは意識しています。

宇佐川:他社と意見交換できる機会があるとそういった点も「自社の強み」として認識できますね。

大脇:そうですね。他社と意見交換すること、自社を客観的に捉えること、採用担当者も経営状況や採用計画を自ら考えるといった経営者目線を持つこと、この3つが「自社の強み」を認識するためには必要だと思います。

村上:採用担当者も経営者目線を持てるように、経営の透明性を高め、日常的に事業の方向性の共有やそのために必要な人材などについて話すといった先ほどの話とつながっていますね。(注:前編の内容を参照)

採用、人事担当者は働く人の意識の変化にどう対応していくのか

村上:コロナ禍での採用活動で、お客様より求職者の変化を聞くことが増えました。例えば、これまでは週2-3回などのパートタイムで働きたいという応募者が多かった企業に、フルタイム希望の応募者が増えたり…。そうなると、企業側はこれまでとは少し変えて、その応募者にあった説明などが必要になってくると思うのですが、そういった働く人の意識の変化についてはどう対応していけばよいでしょうか。

大脇:先日ジョブズリサーチセンターの調査を見ていてなるほどと思った調査結果がありました。仕事探しで重視したことについて、「勤務日数」「勤務地」「勤務時間帯」「勤務時間数」などは絶対条件として挙げる方が多い一方で、「会社の理念、ビジョン」「教育、研修制度の有無」などは絶対条件が低く、もともと関心がなかったという方が多いという結果です。

ジョブズリサーチセンター「求職者の動向・意識調査2017」の調査結果グラフ。「会社の理念、ビジョン」「教育、研修制度の有無」を絶対条件とする割合が低くなっている。

アルバイトや正社員といった就業形態で多少違いはあるかもしれませんが、これは企業側がきちんと「会社の理念、ビジョン」を伝えきれていないから、というのもあるのだと思いました。勤務時間などの条件が合致するだけでなく、入社後の定着や活躍できるかはここが大事だと思うのです。その点は、アルバイトも正社員も根本は変わらないでしょう。

宇佐川:調査結果をご覧いただきありがとうございます。特に若年層の仕事探しでは重要ですよね。新卒採用向けの就職サイトでは多くの企業で「会社の理念、ビジョン」などを伝えています。学生には、先輩の働き方といった自分のキャリアパスを想像できるような内容も人気です。同じことを伝えるにも、誰が言うのかもありますよね。

村上:そういえば以前、「~です、~ます」という文体で表現していた求人情報を、先輩スタッフが語る表現に変更したら、応募数が倍以上になったケースもありました。同じ内容なのですが、誰がどう伝えるかが大事だなと感じました。

従業員に理解できるようにメッセージを発信できている経営者のイメージ

宇佐川:コロナ禍で働き方、働く意識が変化するなかでは、自分に近い従業員の声はより求められるかもしれませんね。村上さんのお客様で採用活動を従来と変えられた企業の特徴や、取り組みを教えてください。

村上:今の状況を良い人材を確保するチャンスと捉えている企業は、通常業務においても変化に積極的に取り組んでいる印象があります。例えば、今までは経営者が忙しくて従業員にメッセージ発信できていなかった企業が、オンライン会議をいち早く導入し、発信し始めた企業があります。その対応や発信内容を採用担当者が自社の取り組みとして求職者に話し、この状況下における社内の雰囲気や働き方を知っていただくというのを聞きました。

宇佐川:まさに大脇様のおっしゃる経営の透明性を高める、ということですね。

大脇:そうですね。ただコロナ禍においてすべての企業が同じように取り組めるわけではなく、企業規模や業種により、取り組みは変わると思います。また、そのような取り組みの必要性を経営者に理解していただくことも時には必要かもしれません。
その際は、採用、人事担当者が求職者や働く人の意識変化から考えられることをぜひ経営者と話していただきたい。そして、自社と他社を良い意味で比べて自社の強みを知り魅力を理解すること。経営者目線で考えることを意識することで、変化に対して柔軟な取り組みが推進できると思います。

前編に続き、中小企業の経営者であり、中小企業家同友会の共同求人委員会委員長として多くの中小企業の求人活動をサポートする大脇氏とリクルートジョブズ営業の村上さんと一緒に、後編はコロナ禍で求められる人事対応の悩みについて話し合いました。すべての企業が同じように人事制度や採用活動を従来のものからガラっと変えるというわけではなく、まずは基本である自社の強みを改めて確認すること、この機会にどのような取り組みに昇華できるか、どう伝えていくか、といったことを経営者目線で考えることで、変化にもスムーズに対応できるといったアドバイスをいただきました。

文/茂戸藤 恵(ジョブズリサーチセンター)