人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2021年05月11日

異業種人材の受け入れがもたらす人材育成の新たな視点

家電量販店大手「ノジマ」の販売スタッフ

今回クローズアップする人材活用の事例は「ノジマ」

異業種からの人材の受け入れには、企業側の創意工夫が欠かせません。今回は、コロナ禍で業績不振に陥った企業からの出向者を積極的に受け入れている、家電量販店大手の「ノジマ」に取材。人事・店舗それぞれの責任者から、異業種人材を受け入れるためにした準備や実際に起きた変化、今後の展望などを伺いました。

  • ● 社名/株式会社ノジマ
  • ● 創業/昭和37年4月
  • ● 所在地/神奈川県横浜市西区南幸1丁目1番1号 JR横浜タワー26階
  • ● 資本金/63億3000万円

新型コロナウイルスを背景に異業種からも出向者を受け入れ

新型コロナウイルスの感染拡大はさまざまな企業に影響を与え、特に飲食・観光関連業種は深刻な打撃を受けました。その一方、コロナ禍を追い風に業績を伸ばす企業もあり、ノジマも巣籠もり需要の拡大などを受けて、2020年4~12月連結決算で営業利益・純利益ともに過去最高を記録しています。

そういった中で、苦境に立たされた企業に対して何かできることはないかという話題が社内で上がり、すぐに話はまとまり、2020年11月に最初の出向者の受け入れを開始しました。

受け入れは半年~1年とコロナ禍終息までの限定的なもの。出向者は元の職場に戻ることが前提で、人によって出向に対するモチベーションも違います。その上で、「せっかくの機会ですから、ノジマで学ぶことがあった、働いてよかったと思ってもらえるような経験にしてもらいたい」と田中氏は話します。

また、受け入れるのは、業種は違うものの接客のプロです。そのため、出向者から学ぶことへの期待もあるとのこと。

「接客姿勢はもちろん、我々が当たり前と思っていること対して、もっとこうすればいいんじゃないかなど、気づきをもらう機会になればいいですよね。出向者を単なる一時的な労働力として考えてはいません。こちらが教える場面もあれば、逆に学び取る場面もある、そんな相乗効果があればいいと思います」。

インタビューに応える、取締役 兼 執行役 人事総務部長 田中義幸氏
「出向者の受け入れは会社がより良くなるチャンス」と話す、取締役 兼 執行役 人事総務部長 田中義幸氏

異業種人材の受け入れでは「相手の立場にたつこと」を意識

出向者のうち3名を受け入れているのが、横浜市にあるノジマセンター北店。この店舗には出向者を含めて社員、アルバイトなど約50名が在籍し、学生アルバイト、主婦、シニアと幅広い層が働いています。

さまざまな人が働く店舗とはいえ、異業種からの出向者の受け入れは初めての経験だったという、センター北店店長の佐伯さん。

「未経験の現場に来ることになり、出向者の方々は間違いなく不安なはずです。そこで、積極的にコミュニケーションをとって、まずは環境に慣れてもらう。そして、受け入れ前に自分たちの仕事の見直しをして、手本になる行動をしよう。これらを既存のスタッフたちと共有しました」。

また、この会社に興味を持って入ってきた既存のスタッフと出向者とでは、スタートが大きく違います。そのため、どのような仕事経験ならキャリアに有益となるものを提供できるか、どうすればこの仕事により興味を持ってもらえるかという、相手の立場にたった工夫が不可欠でした。

「接客スキルを学ぶための教科書どおりのレクチャーではなく、自分たちが商品を買うときに、どういう視点で見ればいいのか、どうやったらお得に買うことができるのかなど、消費者目線で見てもらうことで、この仕事に興味をもってもらえるのではないかと考えました」。

そして、実際に受け入れることで得たこともあったといいます。

「消費者目線での気づきや意見は有益ですし、教わるときに必ずメモを取る姿や丁寧な接客をする姿は、特に同じようなタイミングで入社したスタッフには、良い影響を与えてくれているように思います」。

その人の将来(キャリア)にどんなメリットを与えられるのか、消費者の目線を持つ大切さなどは、人材育成の観点での学びになったそうです。

インタビューに応える、センター北店の店長 佐伯遼平さん
「異業種からの出向者に対しては、より一層“相手の立場”にたつことを意識しました」(センター北店の店長 佐伯遼平さん)

ノジマの根底にある社会貢献と多様な人材活用の精神

このように、コロナ禍において異業種の出向者の受け入れを他に先駆けて行ったノジマ。根本には、会社の経営理念や以前からの土壌があると、田中氏は話します。

「ノジマの理念のひとつが“社会に貢献する経営”です。阪神大震災のときには関西の家電メーカーの方々を臨時で受け入れましたし、リーマンショックのときも内定切りにあった学生に対して枠を設けました。今回の出向者の受け入れも過去の経験と地続きですが、改めて企業理念を社内に発信する機会になりました。異業種人材の受け入れに対して、社内からはよい取り組みなので協力しますという声はあっても、ネガティブな意見はまったくありませんでした」。

ノジマでは人材登用も幅広く、先ほどのセンター北店だけではなく、全社的に女性、シニア、外国人といった多様な人材が活躍しています。

「“女性活躍”だといって無理に進めるのではなく、能力のある人がフェアに昇進していき、結果的に女性管理職の割合が増えていくことを目指しています。外国籍の社員についても10数年前から採用して増えていて、今、海外事業を統括しているのも、新卒で入社した外国人社員です」。

驚くべきは、大学生のアルバイトでも役職が付いているケースもあるということ。こういった幅広い人材の活用に対して、「性別、国籍、年齢関係なく、多様な人材が活躍することが、巡り巡ってよいプロセス、成果にもつながると実感しています。そして、さまざまな人が活躍する姿を見て、自分にもチャンスがあると感じてもらえるはず」と田中氏は考えているそうです。

結果的に失敗したとしても、会社が傾くようなものでなければ前向きなチャレンジは大歓迎だともいいます。この姿勢は、“出る杭は伸ばす”というノジマの人材育成方針をまさに体現するものといえるでしょう。

チャレンジの積み重ねで会社の成長を目指す

最後に、同社の今後の展望を田中氏に伺いました。

「ノジマは流通小売業というジャンルに入りますが、グループ会社全体ではキャリアショップ(通信のショップ)、通信のニフティ、通販のセシールなど、幅広くカバーしています。ノジマグループの中での人の行き来も含めて、新しいことに挑戦していきたいという姿勢は常にありますね。さまざまな属性の人がアイディアを出し合い、チャレンジしていった結果、10年後、20年後、『この会社に入ってよかったな』と従業員に思ってもらえるような会社に成長していければいいと思います」。

ノジマが持つ柔軟かつチャレンジングな風土は、今回の異業種人材の受け入れでさらに広がりを見せるでしょう。多様な人材の活用で成長を目指す同社から、今後も目が離せません。