人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2019年09月30日
外国人社員の職場定着・活躍へ向けて仕事と生活、両面をサポート
今回クローズアップする人材活用の事例は「リクルートR&Dスタッフィング」
外国人労働者は140万人を超え、様々な業種や職種で活躍する姿が見られるようになりました。外国人の採用に積極的な企業がある一方で、「すぐ辞めてしまうのでは?」といった懸念から、なかなか採用に踏み切れない企業があるのも事実です。そこで今回は外国人社員を含む技術者の育成、職場定着に定評があるリクルートR&Dスタッフィングを取材しました。
- ● 社名/株式会社リクルートR&Dスタッフィング
- ● 設立/2006年2月
- ● 所在地/東京都中央区銀座8-4-17
- ● 資本金/2億2,500万円
外国人社員の採用は中長期の就業を見据えて、日本で働く目的意識に加えて生活面もヒアリング
リクルートR&Dスタッフィングは、メーカー各社や研究機関の製品開発、最先端技術研究のパートナーとして、技術者派遣とアウトソーシングを通し、技術開発支援をおこなっています。特に同社は採用後の研修やキャリアサポートが手厚く、技術社員が持つ高いスキルや職場定着の観点で派遣先企業から定評があります。2019年8月時点で外国籍の技術社員は全体の約1/4を占めています。優秀な技術者がほしいといったお客様のニーズに応えているうちに自然と外国籍の方が増えてきたと、首都圏ユニットのユニット長である谷口さんは話します。
「特に首都圏、北関東エリアには自動車関連の会社も多く、技術力のあるエンジニアがほしいといったご要望はお客様から数多く寄せられていました。技術力と仕事に対するひたむきな姿勢という観点がお客様からも評価されており、外国籍の技術社員は欠かせない存在です」。
同社に入社する外国人社員はいわゆる中途採用で社会人経験がある方が多い。しかも、技術力のある人材となると、これまでの経験を踏まえた今後のキャリアに対する目的意識が高く、仕事だけでなく日本での生活もしっかり考えている人が多いそう。
「当社の外国籍の技術社員はベトナム、中国、韓国などアジア圏出身の方が多いですが、採用時より『もっと技術力を伸ばしたい』『日本の技術に触れてみたい』などの目的意識は高いと感じます。当社の仕事を通してそれが実現できるかどうかを意識しながら話を聞き、時にはギャップを伝えることもします。
また、社員としての採用は中長期での就業になりますから、仕事以外の生活面についても話し合います。たとえば、出身の国や地域での食生活、家族構成、生活スタイル、日本に来ることを家族はどう思っているのか、などですね。家族を帯同した社員には日本で家族とどう過ごしたいかなども聞きます。単身の方でも母国の家族が応援してくれているかは把握するようにしています」。
慣れ親しんだ地元を離れ、海外で働くことは容易いことではないからこそ、家族の支えや日本に友人・知人がいるかまで聞き、どのような環境がいいか、どのようにサポートできるかまで包括的に考えている様子がうかがえます。同社では採用時のスカイプ面談のほか、入社が決まり日本に来る前には所属オフィスの担当者とスカイプ面談、また生活購入品の注文サポートを提供し、安心して働き始められるように取り組んでいるそうです。
スキル向上と生活基盤のバランスを保つ
群馬県の自動車関連の企業で働くベトナム人のヴィンさんは、今年から技術リーダーとしてチームを束ねる役割を務めています。もともと前職で2002年から日本で働いていたものの、同社に入社し2014年に群馬県に来た当時、ベトナム人はほとんどいなかったといいます。
「最初は仕事よりも生活がかなり辛かったですね。最初の1年目は単身で、2年目に家族を呼んで一緒に日本で暮らし始めました。その経験もあり、新しく入社したベトナム人には積極的に声をかけ、仕事と生活両面をサポートできるように心がけています。休日にはホームパーティをしたり、バドミントンクラブを作って一緒に運動したり。仕事だけではなく、家族の生活や育児なども大切なので、そのバランスが取れれば安定的に長く働けるようになります」。
もっともすべてを相手に合わせて優しくしているかというと、そこは技術リーダーとして厳しい一面もあります。
「私たちが担当するのは自動車の技術開発で品質保証が大切です。作業だけではなく、お客様への報告も行いますが、正しい内容をきちんと伝えることも大事です。ですので、チームメンバーはベトナム人ですがなるべく日本語で指示を出し、日本語で返してもらうようにしています。日本の自動車業界で働く以上、技術力とあわせて日本語力を高める工夫も欠かせないと考えています」。
外国人社員を採用後も寄り添うことで文化、習慣、言葉の壁を取り払う
谷口さんやヴィンさんも話すように、同社では仕事面のみならず生活面のサポートを重視していることが特徴的です。
外国籍の技術社員全員が入社前に受講するWEB研修では、技術専門用語、ビジネスマナーのほか、日本の生活マナー、食生活衛生、電車や道路・場所・郵便・気象・住居といった日常生活に必要な知識、病院のかかり方が学べるようになっています。ただ、日本で働くのが初めての場合、「わからない」「教えてほしい」などが言いづらいこともあり、それはこちらから困りごとはないか寄り添うことでサポートすることも必要と首都圏ユニットで営業を担当するニューさんは話します。
「私自身ベトナムから日本で働くようになり、困ったことがたくさんありました。現在、群馬県や栃木県の企業で働く技術社員50人ほどをサポートしていますが、日本人のほかにもベトナム、中国、韓国と多国籍の技術社員を担当しているので、それぞれの事情や文化、習慣などを理解しながらお話を聞くように努めています。
私も昔はそうだったので気持ちはわかるのですが、曖昧な表現を聞いたとき、わからなくても『大丈夫』と話してしまうこともあります。それは遠慮からなのか、わからなくても大丈夫なのか、私と話すことでため込まずに済むように少し気になることでも話せるように声がけをしています」。
外国人社員の採用・育成とともに企業も進化する
技術社員としても営業社員としても外国人が活躍している同社の今後について谷口さんに話を聞きました。
「技術社員は外国籍の方も採用することで、技術力のある人材が増え、新たなお客様との接点をつくることができました。優秀な技術者を派遣することで、さらなる期待をしていただけるようになり、私自身も彼らと接することで価値観や視野も広がったと実感しています。
これまでは彼らの技術力が発揮できるように研修や生活面のサポートなどを充実することに注力してきましたが、これからはさらに技術力を向上できるような取り組みもしたいですね。たとえば、ベトナムとのブリッジ案件拡大やあらかじめチーム体制をつくり、技術力を発揮する仕組みなど。外国籍の技術社員は日本での就業意欲が高く、我々も彼らの力と合わせて、どのような価値が提供できるか、まだまだ考えたいと思います」。
日本語はどれだけ通じるのだろう、同僚と馴染めるだろうか、いつまで働いてもらえるのだろうか・・・、外国籍の社員を受け入れる際に抱く不安は採用から定着まで幅広くあります。リクルートR&Dスタッフィングでは、働く側の不安を仕事面以外に生活面も含め幅広く取り除くことで、外国人社員の定着、活躍につなげていました。ジョブズリサーチセンターが実施した調査では、外国人留学生の4割弱が仕事探しに苦労しています*。日本で働きたい外国人から見たときに、自社の求人情報で外国人は安心して働けると思ってもらえそうか、あの取り組みを記載したらいいのではないだろうか、と再考することも必要かもしれません。同社の事例はそのヒントを与えてくれるでしょう。
*「留学生2,000人のアルバイト実態調査 vol.3 アルバイト探しの重視項目、はじめた理由、将来の希望」で「アルバイトで苦労すること」に対し「外国人留学生が働ける仕事内容が限られている」37.1%がもっとも多かった。
https://jbrc.recruitjobs.co.jp/data/data20190927_1234.html