人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2018年09月28日
人材育成にも有効。スキマ時間を生かしたeラーニングで資格取得 ~働く人の「学びたい」を後押しする仕組み~
今回クローズアップする人材活用の事例は「ココカラファイン」
ドラッグストア・調剤薬局と介護を中心に全国で事業を展開するココカラファイン。運営するドラッグストア・調剤薬局の店舗数はグループ全体で1300店舗以上に及び、「第2類・第3類医薬品」の販売ができる「登録販売者」の育成が重要です。商品知識の獲得や資格の勉強をサポートするために設けられている”eラーニング”といった社内の仕組みは、現場のスタッフにどのように活用されているのでしょうか。時間限定のパートで働きながら資格を取得し正社員になったスタッフと、その上司にあたる店長のお話をうかがいました。
- ● 社名/株式会社ココカラファイン
- ● 創業/2008年4月1日
- ● 本社所在地/神奈川県横浜市港北区新横浜3-17-6
- ● 資本金/10億円
「いっぱいわかった方がいいかと思って」と、気負わずに学ぶ姿勢
米村歩有子さん(33歳)が働く「ココカラファイン調布北口店」は、新宿駅から京王線特急で15分、調布駅を降りてすぐの場所にあります。便利な立地も相まって、平日お昼の取材でしたが、お客様の流れが途切れることはありませんでした。
米村さんはふたりのお子さんを育てながら、「ビューティスペシャリスト」として化粧品売場を担当しています。国家資格である「登録販売者」の資格も持っており、ヘルスケア領域(薬やサプリメント)にも通じている、全社でも希少なオールマイティなスタッフです。覚えなければならないことが多くて大変そうですが、米村さんは「いっぱいわかった方がいいかと思って」と、あくまで自然体です。
「お客様とのかかわりを大切にする社風が好きだから」
米村さんは、入社前はカメラマンをやっていたという異色の経歴の持ち主。当時の上司にコミュニケーション能力不足を指摘されたことから、お客様と密な意思疎通ができる仕事を経験したいと考え、ココカラファインのエステサロンでパートのスタッフとして働くようになりました。エステサロンで働き始めて約2年後、出産・引っ越しという転機が訪れます。産後、仕事を再開する際、新居の近くに同社のエステサロンがなかったため、OTC医薬品(一般用医薬品)を扱うドラッグストアに勤務することにしました。
この時も雇用形態はパートだったので、他の会社でエステサロンの仕事を続けるという選択肢もあったはずですが、米村さんは笑顔でこう話します。「『お客様とのかかわりが大切だよ』といってくれるココカラファインが好きなんです。経営理念というと大げさかもしれませんが、困っているお客様がいればお声がけすることをよしとする会社です。なので、出産してからも働かせてもらうことにしました」。実際、顔見知りになったお客様が化粧品やヘアカラーを購入し、「さっそく使ってみたよ、うまくできてるかな?」と再来店することも少なくないそうです。
従業員の成長をスキマ時間を活かして勉強できるeラーニングでサポート
米村さんはドラッグストアでの仕事と育児を両立しながら、勉強にも取り組み、「登録販売者」の資格を取得しました。勉強を始めたのは会社からの働きかけがあったのではなく、自発的なものでした。「お客様とのかかわりの中でお薬について聞かれる機会が多いのですが、資格がなければお答えすることができません。もっと答えられるようになりたいと思ったのが勉強を始めたきっかけでした。その時、会社が勉強会やeラーニングを用意していることを知り、利用しました。おかげで一度目の受験で合格できました」。
ココカラファインは「登録販売者」の資格取得を支援する充実した仕組みを用意しています。勉強会を1ヶ月に1度開催。その日は朝から夕方まで丸一日、勉強漬けになるそうです。また、注目したいのは豊富なコンテンツを持つ”eラーニング”です。スマホさえあればいつでもどこでも学ぶことができるので、「通勤中の電車やちょっとした空き時間に、自分のペースで勉強できるので助かりました」と、米村さんも大いに活用しました。
「勉強したことが人のためになる」から、もっと働きたくて正社員に
「学んだことはお店でとても役立っています。お客様から相談を受けた時、『こんな方法、あんな方法がありますよ』と、今までよりも幅広いご案内ができるようになりました。不安が解消して明るい顔になったお客様をお見送りできるのがうれしいです。学生の頃は勉強するのは自分のためだと思っていましたが、この仕事では勉強したことが人のためになるということを実感しています」と、”学び”を通じて米村さんの視野は大きく広がりました。
米村さんは資格を取った1年後に正社員になりました。「パートだと1日に働ける時間に制約がありますので、もっと働きたいと思っていたところ、統括店長からお話をいただき、正社員にしていただきました。フルタイムでお客様と接することができるのがうれしいですし、収入が安定することも生活面での安心につながりました」。
従業員が資格取得を目指して学ぶ環境をオープンにすることで意欲あるスタッフが生まれる
およそ15人のスタッフが働く同店では、現在3名が「登録販売者」の資格取得を目指しています。店長の喜山文裕さん(36歳)によると、「同じ店舗で3名同時というのは、全社でもあまりないことです。当店は1年半前に開店しましたので、資格取得を意識する人の受験タイミングが重なったのかもしれません。もちろん、米村さんの存在も大きいです。『わたしもあんなふうに働きたい』と感じる人もいると思います」。
同社のeラーニングは、社員だけでなく、パートやアルバイトの人も分け隔てなく利用できるという特長があります。このことを魅力に感じて同社に応募してくる人も少なくないのだとか。eラーニングで学ぶことができるのは資格に関することだけではありません。医薬品・健康食品・化粧品についての商品知識も動画で身につけられるようになっています。風邪の季節が近づいてくると、風邪薬の情報がアップロードされます。他には、個人情報の取り扱いといった社会人としてのルールも学ぶことができます。必要なら勤務時間内の閲覧も認められています。
コンテンツ充実から実践力を高めるツールとして人材育成にさらなる展開を
充実したeラーニングとその活用が徹底されている背景について、人事部採用チームのマネジャー蔦野秀樹さんにお話を聞きました。「我々はミッション(社会的使命)として、『地域におけるヘルスケアネットワークを構築する』と、『社会に必要とされる優れた人財を育成する』を掲げています。複数の企業が経営統合し、現在のココカラファインが生まれました。異なる企業文化に接してきた店舗とスタッフに、共通の理念とミッションを理解し、おもてなし水準や知識レベルを高い次元でそろえるために、すべてのスタッフがきちんと学べる環境づくりとしてeラーニングは不可欠なものだったのです」。
eラーニングで提供しているコンテンツは多岐にわたり、米村さんが活用した登録販売者の試験対策は一部に過ぎません。他には、新商品情報、管理栄養士作成のレシピ、法務室監修のコンプライアンス教育など、さまざまです。
これだけ豊かな内容を持つ同社のeラーニングですが、まだ改良の余地があると蔦野さんは言います。「店長育成や調剤などの専門的な教育体系において、集合研修とeラーニングとの連動をもっと強化したいと考えています。eラーニングを単なる復習ツールとするのではなく、実践力を高めるツールとして発展させるのが次のステップです」。
決して受け身にさせるのではなく、スタッフ一人ひとりの「学びたい」を引き出し、継続的にフォローし続ける仕組みが同社にはありました。働きながら新しい知識やスキルを学ぶことは決して楽ではありませんが、それを支える・評価する職場が増えれば、働きながらも積極的に「学びたい」と手を挙げる人が増えるのではないでしょうか。
「ココカラファイン」の事例から学ぶ人材活用のポイント
- 学びたい意欲に応える仕組み
- 働く人が「学びたい」と感じた時、その意欲を受け止める学びの環境を用意しておく。スキマ時間で利用できるeラーニングが最適
- パート・アルバイトでも利用可能
- 社員に限定せず、学びの環境はパート・アルバイトでも利用できるようにする。雇用形態に関係なく、働く人の成長を応援する
- ロールモデルとなる人材を育成
- 「学ぶことでよりよい仕事ができるようになった」、そんな人材を育成し、「自分もこんなふうに働きたい」という前向きな気持ちの連鎖をつくる