人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2018年02月26日
世代を超えたチームワークで、シニアが大活躍
今回クローズアップするのは「カスタムメディカル研究所」
株式会社カスタムメディカル研究所は、グループホームや在宅ケアなど介護をはじめとした、地域密着型の福祉事業を展開する企業です。そのなかでも、「アカシヤの家」ではシニアの採用を積極的に進め、70歳を超えるスタッフが「体操のお兄さん」として大活躍しています。実際に働かれているシニアの方とホーム長に、シニアが持つチカラについてお話を聞きました。
- ● 社名/株式会社カスタムメディカル研究所
- ● 創業/1985年(昭和60年)5月
- ● 本社所在地/〒245-0002 神奈川県横浜市泉区緑園5-29-5 緑園KMプラザ3F
- ● 資本金/1,000万円
そばで一緒に働き、その人の理解を深める
「アカシヤの家」は、神奈川にあるカスタムメディカル研究所が運営する認知症対応型共同生活介護のグループホーム。ホーム長の宮崎さんによると、シニアの採用を積極的に進めているそうです。
「未経験のシニアの方も採用をしています。年齢にかかわらず、経験者と違って未経験の方は知識がなくて当たり前ですよね。だから、最初は注意深く見守りながら、仕事を手とり足とりフォローします」。
仕事に慣れるまで、先輩スタッフが伴走するのは時間も手間もかかることですが、結果的に職員全体のチームワークに良い影響があるそうです。
「そばでずっと一緒に働いていると、その人のことをより理解できます。何が得意で、何が不得意なのかが見えてくるので、その人の弱点をカバーしつつ、逆に強みを活かしてもらえるような役割分担を考えることができるんですね。たとえば、お料理が苦手な方には、得意な庭仕事を中心に働いてもらうなど。年齢に関係なくお互いをうまく助け合い、できることをどんどん伸ばしていただける環境だと思います」。
苦手をフォローしあい、得意なことを活かす
伊藤さんは、週5日(土日含む)フルタイムで働いています。午後に行うオリジナルの体操が入居者に大好評で、74歳にして「体操のお兄さん」の異名で親しまれています。
「体操は入居者が体を動かすことで体力維持をしたり、声をだすことで口周りの筋肉をほぐし夕食の誤飲を防ぐことにもつながったりするので大事な時間です。また、午後の時間はふらっと外へ出てしまいがちになるため、入居者が楽しめるような時間にしたいと思い、どうすれば興味を持ってもらえるかを考えていました。いろいろ考え、試行錯誤の結果、だんだんとみなさんが楽しんで参加してくれるようになったんです」。
現在のオリジナルの体操ができあがるまで、伊藤さんは自ら認知症に関する記事や本を読んだり、自身の長年の水泳経験を活かして、どの部位の筋力維持の体操を取り入れたらいいか考えたりしたと言います。実際、伊藤さん自身も「膝は弱ってきましたね」と笑い、入居者の方の体と気持ちに向き合っている様子がうかがえます。
「体操のお兄さん」としての活躍だけにとどまりません。伊藤さんは、定年退職するまでエンジニアとして働いていた経験を活かして、操作が難しいと職員を困らせていた入浴補助機械の取り扱いをメーカーに直接聞いて、機械の仕組みや操作方法を勉強。職場のみなさんに正しい使い方を広めることに貢献したそうです。
「最初のうちは右も左もわからなくて、入居者との接し方に苦労することもありました。慣れない作業が重なって辛いときもありました。でも、いつも宮崎さんをはじめ、周りの方がきちんとフォローをしてくれたんですね。自分の苦手をカバーしてくれるから、得意なことに専念できる。今は、自分の体操を心待ちにする入居者がいてくれたりして。それがやりがいです。逆に、苦手な料理は年に1回くらいしか当番がまわってきません(笑)。さらに最近だと、自分の体力を考慮して入浴介助の回数を調整してくれました。こっちから言わずとも、色々とフォローしてくれるのは助かりますし、とても働きやすい環境です」。
もともと介護の仕事はまったく考えていなかったという伊藤さんですが、今では入居者の方が心待ちにする「体操のお兄さん」となっています。必ずしも、これまでの仕事(特定)の経験だけが活きるわけではなく、水泳をしていた経験から自身の体の衰えを感じ、体操プログラムの考案に活かすことも、エンジニアとして培った情報収集力を体操プログラムの考案に活かすこともできています。
課題をみんなで話しあい、より強い連帯感を
アカシヤの家では月に1回全体会議を開き、職員が感じる課題を共有しあうようにしています。感じた課題をひとりのもの、誰かのものにせずに、全員で共有することで全体の課題として話し合うのです。すると、課題を感じた人も解決策がわかるほか、周りの協力も得られるため、連携もスムーズになります。また、それぞれの得手・不得手をふまえた役割の振り分けもそこで話し合います。
「シニアのチカラを活かすため、というよりも、職員同士の連携、チームワークをよくすることに取り組んでいます。なぜかというと、ここでは毎日9人の入居者に対して、3人の職員がお世話をします。ですので、うまく運営していくためには3人の協力がとても大事になってくるんですね。連携を深くするためには、同じ課題意識を持つこと、お互いを把握していることが大事だと思います」と宮崎さんは言います。
実際、20代から70代までと20名の職員の年齢幅がとても広いアカシヤの家ですが、世代を超えた強い連帯感が築かれているそうです。
「やはり大事なのは、お互いをきちんと理解することですね。シニアの方に対しても、もう歳だから、と邪険にしてしまってはそこまでだと思います。チームワークを意識し、近くで一緒に仕事することで、その方の得意なことは見えてきます。得意なことはどんどんお任せする。そして、その強みを活かすことができれば、本人もやりがいを感じやすくなりますし、職場の雰囲気も年齢なんて関係なく良くなっていきます」。
シニアが持つチカラを活かす、と聞くとこれまでの仕事経験に目を向けがちですが、伊藤さんのように未経験の仕事を通して、活かせるチカラに気づき、新たなやりがいを得ることもあります。シニアの方に未経験の仕事を担ってもらう際には「最初は伴走するという覚悟も大事です」と宮崎さんも言いますが、伴走はシニア本人のためだけではなく「お互いの理解をするために、職場全体に必要なもの」ということもアカシヤの家の例では示されています。アカシヤの家ではチームワークの良さがお互いの理解を促進し、得意なことをどんどん伸ばせる環境が、シニアが持つチカラを引き出しています。そうして入居者に好評の体操の時間が提供できているほか、そのチームワークの良さが入居者の居心地の良さ、満足度の向上にも繋がっているそうです。