人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2017年04月27日
ホールとキッチン、それぞれの強みの『パズワク』
今回クローズアップするのは「さん天」
今回取材したのは、「さん天」大宮大和田店。"揚げたての天ぷらが手軽に食べられる"と人気を集めるお店です。最新のマシンを入れて効率化されたキッチンを使い、パートの時間帯責任者の活躍で職場が活気づいている同店。個人のチカラをパズルのように組み合わせ活かしあう『パズワク』(パズルワーク)が、理想的なカタチで実現されている秘密をお聞きしました。
- ● 社名/サトレストランシステムズ株式会社
- ● 創業/1951年4月
- ● 本社所在地/〒541-0052 大阪市中央区安土町2丁目3番13号 大阪国際ビルディング30階
- ● 資本金/85億3,200万円
忙しくても、互いの様子を見てチームプレー
「さん天」大宮大和田店で、イキイキと働く2人の女性。パートで時間帯責任者を任されている、中村さんと小林さんです。14時から18時のアイドルタイムは2人だけで店を回すこともあるといいます。中村さんは主にキッチン、小林さんは主にホールを担当。「2人きりで忙しくなったときにはどうするのですか?」と聞くと、2人は「アイコンタクトをしなくても状況をわかってくれて、お互いがサッと仕事を手伝うんです」と声を揃える。たとえば、販売機の前で困っているお客様がいたら、中村さんがキッチンから様子を見て対応してくれたり、キッチンが混んできたときは、小林さんがサッとキッチンに入って手伝ってくれたり。忙しい中でも、チームプレーで仕事を進めているそうです。
異なる強みを組み合わせて、お客様満足度も上昇
なぜそのような「あ・うんの呼吸」が可能なのでしょうか?「いつの間にか...」と笑い合う2人に、さらに詳しくお話を聞きました。
前職はお蕎麦屋さんで働いていたというのが、キッチンの中村さん。「天ぷらを揚げるのが楽しい。スピーディーに、かつキレイに。一つの作業に黙々と打ち込むことが昔から好きなんですよ」と話してくれました。
一方ホールの小林さんは、以前はファミレスで接客業務を経験。ホスピタリティを持って接客するスキルに富んでいます。「さん天は基本的にセルフサービス。だからこそ、お客様に心地よく食事していただくための"瞬間の接客"を大切にしています。たとえば、お客様が入ってきた瞬間の笑顔や明るいお声がけで第一印象を大切に。毎日来てくださる常連さんには、少しでもお話しするようにしています」。
2人はお互いに対して、「働きぶりを見て私も頑張らなきゃ、と刺激になる」と切磋琢磨するコメントも。異なる強みを持つ2人だからこそ、パズルのようにチカラを組み合わせ、料理・接客両方のクオリティを高めていることがわかります。
「この商品は出せないわ」キッチン目線で、ホール目線で
「2人のチームプレーは、お客様へのサービスだけでなく、他のメンバーやお店の組織づくりも支えてくれています」。そう話すのは、店長の菊池さん。
「中村さんも小林さんも、社員に負けないくらい商品やお客様に対する品質意識がとても高いんです。たとえばあるとき、中村さんと一緒にキッチンに入っていたパートさんが揚げた天ぷらが、少しだけ失敗していたことがあったんです。中村さんはキッチン目線で『これは提供できないよ』と注意してくれました。しかし、パートさんも人ですから、一生懸命作った料理が提供できないとなると、少し抵抗があったのでしょう。『そうですか?』と納得していない様子。そこで小林さんがサッとやってきて『これはホールの立場でもお客様には出せないな』と言ってくれたんです。するとパートさんも納得して、気持ちよくやり直しをしてくれました。店長の私が一方的に注意するのではなく、同じパートの立場でありながら意識を高く、フロアとキッチン両方の視点で注意してくれたからこそのエピソードだと思います。1人では、他のメンバーへのサポートや教育・指導というのは荷が重いかもしれません。でも、2人が協力しあって、スタッフ教育まで担ってくれているんです」。
「店長の私1人では、立場的にも物理的にも、パート全員とコミュニケーションすることは難しいです。しかし2人は、スタッフとの距離も近い。『あの子最近元気ないのは、こういう理由みたいですよ』『こんなこと気にしていましたよ』など、勤務中に少し耳にしたスタッフの状態をさりげなく報告してくれたりもします。店長には聞きづらい、言いづらいことでも、2人が潤滑油のようにいてくれることで、マネジメントが行き届き、店舗全体が一丸となれるんです」。
良い店舗づくりのコツ。「最新機器で効率化」「信頼して任せる」
「このような理想的な組織が作れるのはなぜなのか?キーワードは「最新機器で効率化」「信頼して任せる」の2つだと、菊池店長は続けます。
「天ぷらを揚げるって重労働に思えますよね。油はハネるし、油の入れ替えも力仕事。その点、さん天はキッチンもフロアも女性目線で最新の設備にしているため、重労働が少ないんです。たとえば、油も大きな缶ではなく小分けされており、調理もシステム化されているから苦手意識があっても大丈夫ですし、やけどからも守ってくれます」。飲食のキッチンは重労働というレッテルを剥がすかのように、作業を効率化することで、働きやすさのベースを作っているのだそう。
「あとは、信頼して任せることですね。2人がシフトマネージャーとしても動いてくれているので、私の考えていることや会社の方針を話し、シフト組みも任せています。すると、3時間勤務の主婦の方や、学生の方などにもしっかり配慮して、柔軟にシフトを組んでくれるんですよね。『お子さんの送り迎えや介護など、ライフイベントは誰にでもみんな起こるから』と補い合ってくれる。一度帰宅してまた出勤、なんてのもあり。結果、皆の結束が強まり、小さいお子さんがいる主婦の方でも急に休むこともあまりないんです」。
社員とパートの枠も超える『パズワク』の未来形
「さん天」の運営会社、「サトレストランシステムズ株式会社」。「和食さと」でも有名な同社は、創業50年あまりの歴史を持ちながら、2014年より女性活用のための「短時間正社員制度(T職)」を導入するなど、一人ひとりの個性や働き方に合わせた職場づくりにも力を入れている企業です。まださん天事業部ではこの制度を利用した店長はいないそうですが、2015年度に「和食さと」では「短時間正社員制度」で登用した女性正社員から9名の店長が誕生しているのだとか。
店長の菊池さんは「近い将来、さん天事業部でも短時間正社員制度を活かし、店舗の組織体制を整えていきたいと思っています。さん天事業では現在、正社員の店長1人とパート従業員で店を運営していますが、今後は店長が2~3店舗を兼務する体制にし、各店舗でパートから登用された短時間正社員に、店長の仕事をお願いできたらと思っています。こういった構想を進めるためにも、まずは中村さんや小林さんのような時間帯責任者として働ける人材の教育を進めていきたいですね。今は店舗でのオペレーションを担当するだけでもいいと思っているパートの方が、共に働く中で、もっと成長したい、子供が成長したらもっと仕事ができるなど、仕事観が変化できるような職場でありたい。そして、その際に雇用形態を超えていろんな仕事のチャンスが持てるようにしていきたいと考えています」。
パートや正社員の枠を超えての『パズワク』。「さん天」が描く理想には、働き方の未来が詰まっているのかもしれません。