人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2017年01月24日
個人のチカラをパズルのように組み合わせて活かしあう『パズワク』
今回クローズアップするのは「株式会社トーエネック」と「株式会社Serge源's」
少子高齢化が進み労働力人口が減少する近年、時間の融通が利き、あらゆる業務を一人でこなせるような人材の採用は難しくなってきています。そんな中で注目されているのが、個人のチカラをパズルのように組み合わせて活かしあう『パズワク』(パズルワーク)という考え方。
"知識や経験が豊富なベテランシニア"と"意欲旺盛でPCスキルのある若手"の『パズワク』で新しい成果を生んでいる「トーエネック」と、"子供がいるママ同士"の『パズワク』で顧客満足度の向上に努めている「串焼き源's」を取材しました。
- ● 社名/株式会社トーエネック
- ● 創業/1944年10月
- ● 本社所在地/〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄1-20-31
- ● 資本金/76億8,000万円
- ● 社名/株式会社Serge源's
- ● 創業/2006年5月
- ● 本社所在地/〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄2-8-12 伏見KSビル5F
- ● 資本金/3,000万円
シニアと若手の『パズワク』で、育成と効率化を実現
中堅技術者の人材不足を、若手とベテランシニアで補完
中部電力グループの総合設備企業である「トーエネック」は、電気・情報通信・空調・電力供給設備の企画・設計・施工・メンテナンスからエネルギー有効利用提案まで、経験豊富な技術者が重要な仕事を手がけています。
かつての新卒採用が少なかった時期の影響などで、年齢構成にばらつきのある同社は、活況な建設市場に対し、一人で現場を任せられる中堅技術者人材が不足気味の状態。現場を任せられる人材を育成するために、新卒エンジニアを積極的に採用中です。
そこで、彼らにプロフェッショナルとしてのスキルや心構えを教える役割として、大きな存在になっているのが、ベテランシニア人材。知識や経験が豊富なシニアの方と勉強熱心な若手の『パズワク』で、中堅技術者の人材不足を埋めることができています。
古い建築現場のデータも、『パズワク』で再現可能
鈴木俊司さん(68歳)は65歳で一度会社を退職後、トーエネックでパート社員として働いています。勤務は週4日・1日7時間。体を動かしたいし、周りの友人も10人中8人程度は働いているので、働けるうちは働き続けるのが自然な流れだったそう。
鈴木さんの基本的な業務は、20代の若手社員の教育指導。OJTスタイルで、一緒に働くことで自らの経験や知識を伝えています。また、現場で起きた問題については、若手社員に解決策を考えさせるという方法で教育しています。
図面の手描きスキルにたけている鈴木さんは、逆にPCでの作業は不慣れ。そのため、鈴木さんが図面を手描きで作成し、ペアを組む若手がCADでデータ化。できあがったデータを鈴木さんが納期からコスト面まであらゆる視点で最終確認するという『パズワク』を実践しています。「私の手描きの図面をCADで具体化する作業を通して、知識や経験を身につけてほしい」と、鈴木さん。
鈴木さんとペアを組んで仕事を進めているのが、若手社員の江間匡貴さん(25歳)。江間さんが担当している現場の中には、かなり古い工場もあり、その多くは電気設備図がデータとして残っていないといいます。そのため、実際の現場を見て、あらゆる指示や判断をしなければいけないこともあるそうです。
その点、鈴木さんは電気設備図がなく実際の現場を見られない状態でも、建築図面だけで電気設備図が頭で描けるのだとか。これは、いくつもの現場とその設計図が頭に入っているベテランだからこそできること。このスキルを活かして古い工場の図面を鈴木さんが手描きし、江間さんがCADでデータ化。結果、データが残っていなかった古い現場の図面がきれいにデータ化されるという、画期的な取り組みになっています。
一緒に働く鈴木さんについて、「厳しいですが、自分に期待してくれているからこそ、厳しく指導してくれていると感じます」と話す江間さん。スキルの面でも、江間さんは鈴木さんと『パズワク』することで、「さまざまなケースでの設計パターンを学ぶことができ、自分だけでは見えていなかったパターンが、見えるようになってきた」と語ります。
【トーエネック 掛川営業所長 柴田朋浩さんインタビュ―】
数が限られている技術者人材は、世代間の『パズワク』で組織を支える
地方の技術人材は絶対数が限られており、例えば、40代の社員一人に現場を任せたいと言っても、人材の確保は難しいのが現状。その中で、シニアの存在はとても大きいです。
江間さんのような若手社員は、お客様からの技術レベルの高い要望を一人で完全にこなすことは難しい反面、PCやCADスキルが優れています。一方、鈴木さんのようなベテランシニアは、PCには不慣れですが、経験が豊富で、技術力や現場管理能力もプロフェッショナル。お客様からの信頼も非常に厚いです。若手とシニアのペアを組み『パズワク』で仕事を進めることで、若手社員に現場で経験や知識を伝えてもらっています。結果、古い建築現場の図面がデータ化されたり、業務の効率化につながったり、という成果に結びつき、満足度の高いサービス提供が可能となっています。
忙しいママの「働きたい!」を叶えてくれる『パズワク』
「3歳の双子を育てながら働きたい」受け入れてくれる職場は?
3歳の双子を育てる山崎由香里さん(29歳)は、お子さんが幼稚園に入学したのをきっかけに、「串焼き源's」で平日短時間勤務のアルバイトを始めました。「子供が幼稚園に入ったら、自分の世界を広げるためにも働きたいと考えていました」と話す、山崎さん。そんな中で出会ったのが「串焼き源's」でした。ランチタイムをリニューアルした効果でお昼時が忙しくなった「串焼き源's」では、ランチタイムに活躍できる人材が必要だったのです。
店長の山内さんは、山崎さんについて「平日に3時間の短時間勤務で働いてもらっています。時間は短いですが、その分人一倍、接客も上手で気配りができます。なにより楽しみながら一生懸命働いてくれるのが職場にとてもいい影響を与えてくれていて非常に助かっています」と話します。
臨機応変な接客と豊富な知識の『パズワク』
たとえば、いつも追加でスプーンを頼まれる常連さんがいたら、言われなくても提供時に一緒に渡してみる。するとお客様は驚いて感謝してくれる。山崎さんが、一番モチベーションの上がる瞬間です。このように小さなことでも一つひとつ「お客様はどうしたら喜んでくれるかな?」と考えることができる。また学生時代の飲食店でのアルバイト経験から、チームでの役割分担や仕事の進め方などを臨機応変に考えることができるので、率先してやるべき仕事を見つけられるのも、山崎さんの強み。
ランチタイムのみの出勤の中では、業務を一人でこなすことや長時間勤務でお店に貢献することは難しい。けれど、「接客力」や「臨機応変な対応」で、職場を引っ張っています。
対して、山崎さんと同じ時間帯にシフトに入っているのが40代アルバイトのBさん。山崎さんと同じくママであるBさんは、職場の先輩でもあり、子育ての先輩。子供の急な発熱などでの早退・お休みや、山崎さんが幼稚園の行事に参加したいときも理解してくれ、代わりにシフトに入ってくれることもしばしば。また、勤務年数も山崎さんより長いため、勤務中も豊富な知識で業務全体をフォローしてくれています。もちろん、山崎さんも、Bさんの都合がつかないときはフォローに入るなど、互いに補い合って働いています。
短時間でも「接客力」や「臨機応変な対応」でお店に貢献する山崎さんと、シフト上でも業務全体でも、経験を活かして山崎さんをフォローしてくれるBさん。強みは異なりますが、2人が『パズワク』をすることで、「串焼き源's」のランチタイムはスムーズになり、顧客満足度もUPしているそうです。
【串焼き源's 店長 山内雄司さんインタビュ―】
アルバイト同士の『パズワク』が、お店全体を支えてくれるはず
現状、私たちの店舗は少人数で運営していますので、アルバイトが足りないところは社員が補わなければいけない状態です。社員がきちんと休みをとるためにも、アルバイトの成長、そして活躍が重要。将来的には主婦アルバイトさんにランチタイムを任せていきたいと思っています。もちろん、どなたか一人が社員のようにすべて賄うのではなくて、個人のチカラを『パズワク』して、チームワークでランチタイムを作ってくれたら嬉しい。だからこそ、今後も山崎さんのように、強みを活かした人材採用とアルバイト同士のチカラを組み合わせて、成果を出せるシフトや環境づくりに力を入れていきたいです。