人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2016年10月20日
留学生の学ぶ意欲・スキルを活かす職場 -前編-
今回クローズアップするのは「株式会社リクルートスタッフィング」と「コネクシオ株式会社」
人手不足が続くなか、外国人観光客の増加もあり、サービス業を中心に"留学生"が新たな戦力として注目されています。しかし、外国人従業員のマネジメントについては、難解な関連法規、文化や価値観の違いなどの要因で、雇用するのは難しいといった印象があるのも事実です。
そこで、丁寧で定期的なスタッフフォローを強みとし、法規制を踏まえた労務管理を実施することで留学生派遣を行っている派遣会社、リクルートスタッフィングの留学生派遣事業のポイントを聞き、派遣先であるコネクシオが店舗運営する「ドコモショップ赤坂見附店」を取材しました。
- ● 社名/コネクシオ株式会社
- ● 創業/1997年8月
- ● 本社所在地/〒160-6137 東京都新宿区西新宿8-17-1 住友不動産新宿グランドタワー37F
- ● 資本金/27億7,800万円
- ● 社名/株式会社リクルートスタッフィング
- ● 創業/1987年6月
- ● 本社所在地/〒104-8001 東京都中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル
- ● 資本金/9億3,940万円
派遣会社ならではの手厚いフォローで安定した就業を実
リクルートスタッフィングで当事業のマネジャーを務める塩澤真宏さんに留学生派遣のポイントについて聞くと、「適切な就業マネジメントを徹底することが大切です。初期のフォローアップが長期安定就業のための重要な要素となります」と教えてくれました。働き始めの段階を乗り越えれば、職場環境になじみ、人間関係も築かれるので、大きな問題なく定着するスタッフが多いそうです。
また、スタッフ教育、独自システムによる適法な勤務時間管理に加え、家賃保証会社と提携し留学生の登録を促進することに取り組んでいます。
派遣先は、今回ご紹介する携帯電話ショップの他に、百貨店、ドラッグストア、アパレルやコスメ販売といったサービス業が中心。「当社では、サービス業の人手不足という"不"の解決をベースに、インバウンド需要や繁忙期対応、社員の育児休業対策などのダイバーシティの推進にもお役に立てるような提案をしています。フルタイムで働くのが難しいママやシニアの方に平日の日中に活躍頂き、夕方以降の時間や土日のシフトは留学生に入ってもらうというイメージです。一人ひとりのライフスタイルにあった多様な働き方ができる、そんな環境作りのお手伝いができるといいですね」。
"お客様に笑顔になっていただけると嬉しい"
リクルートスタッフィングのスタッフとして派遣され、「ドコモショップ赤坂見附店」で勤務している王敬齢(オウケイレイ)さん(中国籍)にお話を伺いました。王さんは、中国での小学生時代に日本のアニメに出会ったことがきっかけで、日本に興味を持ち留学。将来は日本で同時通訳の仕事に就きたいという夢があり、「大勢の人に会えて、日本語の使い方を勉強できるのでこの仕事を選びました」と、話してくれました。
勤務は1日7時間で、学業がある時期は週2~3日、スマートフォンの操作説明、付属品の販売やお支払い料金の精算等を担当。ドコモショップで働くようになって半年、「まだまだ覚えることは沢山ありますが、もっとできることを広げていきたいです」と、意欲的です。仕事のやりがいについても「さまざまなお客様がいらっしゃいますが、丁寧な接客によって笑顔になっていただけると嬉しい」と、笑顔で話してくれました。
ドコモショップで働くようになり、「同級生から『日本語がうまくなったね』と褒められました」と語学の上達を実感しているものの、「売上につながる提案をもっとしたいのですが、私の日本語力ではうまくいかないところがありますし、知識もまだまだ足りていません」と、もどかしさを感じる一面も。それでもやりがいを感じながら仕事を続けていられるのは、「ショップでは店舗スタッフのみなさんが親切に接してくれますし、普段の生活で困っていることは無いかなどと聞いてくれます」と、職場のコミュニケーションの良さを挙げていました。
伴走してくれる人がいる安心感
王さんは仕事でミスをしてしまったときはショップのスタッフに報告・相談するほか、リクルートスタッフィングの担当にも話すそうです。「働く前だけではなく、働くようになってからもサポートしてくれるので、助かっています。この仕事だけでなく、これからも日本で仕事をするにはどうすればいいか、アドバイスをしてもらえます」。
王さんの上司にあたる店長の網野健太郎さんも、「リクルートスタッフィングの担当者とよく連絡を取り合っているのが伝わってきて、安心感があります。私が気づかないところで落ち込むようなことがあっても気軽に相談できているようですし、担当者が私に共有してくれるので、ありがたいです」と言います。
ひとりの戦力として期待
店長の網野さんによると、王さんには中国人顧客の取り込みにも期待を寄せているそうです。「中国語のポスター作りや、微博(ウェイボー、中国版ツイッター)での情報発信をしてもらったこともあります。他の店舗スタッフと同じように活躍してもらうだけでなく、自身の特性を活かしてもらいたいと思っています」。
王さんは持ち前の向上心でさまざまなことを学び実践するので、他の店舗スタッフにいい影響を与えていると言います。
「お客様からのアンケートで、王さんの丁寧な接客に『感動した、これからもずっとドコモにしたい』と、"賞賛"の声を頂いたことがありました。コネクシオでは、このような"賞賛"を頂くと、シールタイプの名札ではなく、名前を彫り込んだものに変わります。入店から半年の王さんが"賞賛"の声を頂いたことが、他のスタッフに大きな刺激になっています」。
安心して留学生が働けるサポート体制を準備していきたい
コネクシオは、今回取材したドコモショップ赤坂見附店をはじめ、全国で400店を超える携帯電話ショップを運営しています。同社人事担当に外国人の店舗スタッフを受け入れるにあたって工夫していることを聞くと、「当社の店長からは外国人の店舗スタッフを積極的に受け入れたいという声が出ています。そのような要望を叶えるためには、チャレンジ精神を持った留学生が安心して飛び込んでこられるようなサポート体制を準備することが大切だと考えています」と教えてくれました。
具体的なサポートの一つに、コネクシオの本社に新人を集めて行う"ニューフェイス研修"があります。国籍に関係なく新人の店舗スタッフを対象に、3日間かけて、接客時の挨拶から服装や身だしなみなど社会人としてのビジネスマナーと、通信業界の基本的な知識を学び、新人スタッフの就業不安を解消することに取り組んでいます。また、留学生は夏休み・冬休みといった時期以外はまとまった時間がとりづらいため、長期休暇の期間をうまく利用して研修を受けることができるような工夫をすることも重要といいます。
ショップでの良好なコミュニケーション、派遣会社の担当者による伴走、充実した受け入れサポートによって、スタッフ一人ひとりの良さを引き出すことに取り組んでいます。今後については「お客様から『いてくれてありがとう』と言ってもらえるスタッフを増やしていきたいです」と、スタッフの教育とサポートに力を入れていく姿勢がうかがえました。
「コネクシオ株式会社」の事例から学ぶ人材活用のポイント
- 就業不安を解消する受け入れの工夫
- 学業との両立、日本語での就業などの不安が払拭できるように、新人対象の研修制度を設けるほか、長期休暇の期間中に研修を設定する
- 仕事内容
- 語学力を活かした情報発信のほか、日本語習得・接客をしたいという意欲に応える仕事を任せて支援する
- 留学生が安心できる周囲のサポート
- 職場では仕事の相談はもちろん、普段の生活で困っていることなどもスタッフ同士でコミュニケーションできるように工夫。派遣会社の担当者とも連携をとり、いつでも誰にでも相談できる体制づくり。