人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2016年07月15日

#シニア#小売業#採用

シニアの活躍は働く側と雇用側、それぞれの理解が成功の鍵

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン メイン写真

今回クローズアップするのは「セブン‐イレブン」

セブン-イレブンと船橋市がタッグを組み、シニア雇用の取り組みをスタート

人手不足が大きな問題となっている今、注目が集まっているのが、シニアの採用。多数の雇用を抱えるセブン-イレブンでは、2015年から福岡を皮切りに、自治体と共同でシニアの採用を進めています。その一つ、船橋市内の店舗を取材しました。

  • ● 社名/株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
  • ● 創業/1973年11月20日
  • ● 本社所在地/〒102-8455東京都千代田区二番町8番地8
  • ● 資本金/172億円

「新聞を見て即応募。絶対にこの仕事をしたい」

仕事説明会に応募し、3月29日から東船橋5丁目店で働いているシニアの一人が高橋藤江さん(76歳)。きっかけは1月開催の説明会を取り上げた新聞記事でした。「新聞で仕事説明会が開かれるのを知り、瞬間的にこれがいいなってピンときました。それですぐに問い合わせて、参加申し込みをしました。来ている人たちはみんな真剣で、私みたいに仕事をしたい人がこんなにいるのだと思いました。」と応募のきっかけを語ります。
一度目の面接では不採用となった高橋さん。「どうしてもセブン-イレブンで働きたいと強く思って、再度3月の説明会に参加しました。そのときは、セブン-イレブンで働きたいんだと熱意を強くアピールしたら、今度は即決で採用していただきました。」

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 写真1
シニアスタッフの高橋藤江さん

高橋さんの勤務は原則週3回で、朝7時から10時までの3時間。土曜日は8時から12時までの4時間働くことがある。「朝ウォーキングをしていたときに、いつもコンビニでコーヒーや朝食を買っているサラリーマンの方たちを見かけて、そんな人たちに『行ってらっしゃい』と声をかけられたら、どんなに毎日が充実するかしら、と思っていたのです。」
ほかにも、セブン-イレブンを志望した理由としては、「一番は勤務時間が短くても大丈夫なことです。また、接客で声も出しますよね。ある程度の力仕事で体も動かせる。お金のためじゃないんですよ。やっぱり社会の空気に触れながら、人と接して、体を動かしたいという気持ちが強いんです。土曜日は家族連れで小さなお子さんからご年配の方までいらっしゃるので、幅広い年齢の方と接することができるのも、得難い楽しさです。」
高橋さんにとっては数年ぶりの仕事。仕事をすることで1日にメリハリがつき健康面でも精神面においてもプラスになっているといいます。

働き始めて2カ月、現在の仕事は商品の検品や品出し、掃除など。今のところレジ回りには立っていません。「仕事をどんどん覚えていくというわけにはなかなかいきません。だから常にメモを取って確認しています。反復することで覚えられればと思っているのです。また、できるだけほかのスタッフが働いているところに一緒について、仕事を手伝いながら覚えるようにしています。」
仕事を始めるにあたって不安を抱いたか尋ねると、「不安なんか持たないようにしているんです。ネガティブなことは考えないようにしています。これからもっと仕事を覚えられれば嬉しいですね。」と笑顔で返事が返ってきました。

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「常にメモをとり、反復することで業務を覚えています」(高橋さん)

「シニアだからこそできる仕事がある」

実際に高橋さんと一緒に働き、指導をする東船橋5丁目店店長の候(こう)聖(たかし)さんはこう話します。「実際に一緒に仕事をするまでは不安もありました。特に体調面ですね。70歳を超えていますし、無理をさせて、体調を崩してしまわないか心配でした。でも高橋さんに関しては、これまでお休みは一度もありませんし、すごく元気なんです。自分がもっていた固定観念がガラッと崩れました。」
さらに、シニアならではの気配りや仕事の丁寧さにも学ばされるといいます。「例えばお客様が買い物をされる際、手にたくさん物を持っていたらすかさずカゴを渡してあげたり、お店で汚れているところがあれば、さっと拭いてくれたり。われわれでは気付かないちょっとした気配りがすばらしい。それに、野菜を売るときには、高橋さんが話しかけたほうがお客様も安心するんです。『この野菜は今が旬ですよね。こんな調理をしたら美味しいですよ』と声をかけると、お客様も乗り出して聞いています。高橋さんだからこそできる仕事です。」

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「繰り返し教えることで、仕事は問題なく覚えてもらえます」(店長の候聖さん)

「今こそシニアの力が必要。新しい売上のきっかけにも」

「セブン-イレブン東船橋5丁目店」のオーナー 伊藤定夫さんは、船橋市内に2店舗を経営しています。説明会を機に、最初に母店である船橋若松1丁目店で、「セブンミール」(食事宅配サービス)の配達業務に携わるシニアを採用。その仕事の様子からシニアが戦力になることを実感し、もう一つの東船橋5丁目店でも採用したといいます。「仕事説明会で、まだまだ元気で働きたいという高齢者がたくさんいる現状を知りました。そこで責任感や仕事の丁寧さ、時間の正確さなど、シニアならではの強みを活かして働いてもらいたいと考え、採用しました。」

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 写真4
「シニアの活躍は、お店にとって良い影響を与えてくれます」(オーナーの伊藤さん)

シニアを雇用するにあたっては雇用側の意識が大事と話します。「例えばシフトは本人の希望時間を超えないように。体調面など含め、無理なく長く働いてもらえるように注意していますし、私たちスタッフは、目上の方を敬う気持ちを持つようにしています。」とオーナーの伊藤さん。「時間がかかってもゆっくり教育すること。そして、出来ないことを無理にはお願いしません。求めすぎないことが大事です。かといってこちらで出来る、出来ないは判断しない。本人に確認を取りながら仕事をしてもらっています。」

高橋さんの場合は以前百貨店に勤めていた経験もあり、丁寧な接客でほかの従業員の手本になっているといいます。「既存のスタッフにも良い影響がありますね。それに、シニアがシニアを呼び、新しいお客様も来店するようになりました。若い人がなかなか集まらない今こそ、シニアの力が必要。働き方の提案次第で大きな戦力になり、新しい売上を作るきっかけにもなると考えています。」

「固定観念を取り払い、シニアがより働きやすい環境作りを目指す」

セブン-イレブン・ジャパンによると、シニア層の採用は今後も積極的に続けていくとのこと。仕事をするのに年齢は関係なく、市場の変化に合わせて働き方も変わるべきと話します。またコンビニは若い人が働く場所という印象が根強くありますが、すでに千葉県内の60歳以上のシニア従業員は県内全スタッフの約1割。シニアを雇用する上で当然課題はあるものの、人生経験が豊富で挨拶やマナーなど基本姿勢もしっかりしている、仕事に対する責任感や使命感があるといった強みを活かすことを考えることが大切です。今後はさらに多くのシニアに働いてもらうため、『高齢者だから』といった固定観念を取り払い、一人ひとりの経験や関心が活かせる環境づくりに取り組んでいます。
シニアが働くことは企業側の人手不足を解消するだけではなく、シニアにとっては社会とのつながりや生きがいを持つことにもつながります。超高齢化社会を迎えた今、まだまだ働きたいと考える多くのシニアに向けた労働環境づくりが、着々と進められようとしています。

「セブン-イレブン」の事例から学ぶ人材活用のポイント

無理のない勤務シフト
週3日、1日3時間で体調面に無理なく働き続けられるようにする
採用・雇用・配置
仕事の内容は、出来る、出来ないを勝手に判断せず、本人に確認を取りながら進める
職場環境の整備・企業風土改革
『高齢者だから』といった固定観念を払い、シニアの経験や関心が活かせる職場環境づくりに取り組む