人材活用事例 「わが社の"いいね!"」
2016年02月19日
違う文化を知るからこそ、新しい提案ができる
今回クローズアップするのは「ミキハウス」
- ● 社名/三起商行株式会社
- ● 創業/1978年9月
- ● 本社所在地/大阪府八尾市若林町1-76-2
- ● 資本金/2,030百万円
固定概念に捉われない発想が、売り上げアップに貢献
2月のある冬の日に「店頭にダウンコートを置いた方がいいのではないでしょうか?」という外国人スタッフ 安(アン)さん(中国籍)の提案に、店長の林さんは驚きました。例年、2月はダウンコートがあまり売れないため店頭から下げていたのですが、中国の旧正月には多くの中国人観光客が日本を訪れることを想定し、店頭にダウンコートを置いた方が良いのではないか?という考えからの提案でした。安さんのアドバイスの下、他店が返品した色とサイズのバリエーションを多数取り寄せたところ、予想が的中し、その店舗にしかない幅広い品ぞろえに中国人観光客が大満足した結果、想像以上の数が売れました。
安さんならではの、中国人のニーズに寄り添った接客を
「中国人のお客様の対応をできる人が足りない」という友達の誘いからアルバイトとしてミキハウスで働き始めた、大学在学中の安さん。店舗に配属され、中国人のお客様を中心に接客をはじめたところ、中国の文化を知る安さんならではの工夫が光り出しました。例えば、中国人観光客は「品質が高い日本製の服をこの機会にしか買えない」と考えた安さんは、一つの商品を求めているお客様に対してもコーディネートで勧めました。それがとても好評でセットで購入していくケースが急増しました。また、日本人スタッフが中国人のお客様の接客をする際に、サイズや色の説明に戸惑う姿を見て、日本人スタッフに中国語でのサイズや色の言い方を教え、日本人スタッフでも対応できるようにしました。さらに、店長の林さんが一カ月に数回、本社物流センターに商品の仕入れに行くときに、店頭の限られたスペースに置く色やデザインも、安さんが中国人好みのものを選び、それをなるべく多く取り寄せるという工夫もしています。
「日本で働き続けるために」が最大のモチベーション
現在大学4年生の安さんは、2016年の4月から大学院に進学する予定で、その後は日本で働きたいと考えています。その目標に向けて、安さんがミキハウスで吸収したいことは数多くあります。中国ではあまり関心のない店頭での陳列についても「日本では棚に洋服がきれいに並べられていて、本当に感動しました」と安さんは言います。丁寧な言葉遣いも、日本ならではだと考えています。「店長だけではなく同僚同士でも丁寧で、お互いへのリスペクトを感じます。」また、日本人のお客様の対応をする中で、敬語のスキルアップも図っています。ミキハウスには学ぶ環境が整っているからこそ、安さんのモチベーションも日々上がり続けています。
「何よりも人」だと気づかされた
店長の林さんは、安さんと働くことで外国人への意識が変わったと言います。安さんを採用する前は、文化習慣が違う外国人スタッフをマネジメントすることに不安を感じていましたが、安さんが職場に加わってから、「何よりも人」だと実感しています。「安さんがいると職場が明るくなる」と林さんは言います。一緒に働き、休憩時間も共に過ごすようになり、お互いの考え方を少しずつ理解することで、林さんはより多くの外国人スタッフを採用したいと考え始めました。今では、外国人スタッフを含む13名が一つのチームとして、SNSなどで常にコミュニケーションを取りながら、店舗の売り上げに貢献しています。
【人事部長 藤原氏インタビュー】
外国人と日本人スタッフ、それぞれが輝く環境へ
スタッフ・店舗へのケアで、働き始めを円滑に
ミキハウスでは、外国人スタッフをインターナショナルスタッフと称し、2014年から採用を始めましたが、採用を進めるにあたって、社内のインターナショナルスタッフへの考え方を「人材不足を補う人材」から「現場全体に貢献する人材」に変えていく必要があると考えました。
そこで、インターナショナルスタッフと日本人スタッフが初めから心地よく働ける工夫として、例えば、インターナショナルスタッフが配属される前に「目上の人を敬う」「約束を守る」「チームワークを大切にする」など、日本の職場で働く上での心得について指導したり、配属先では受け入れ期間を設定し、必要に応じて店舗間の異動も可能にし、インターナショナルスタッフと店舗の最適なマッチングを図ったりしています。
評価制度の改定で、全社員のモチベーションがアップ!
インターナショナルスタッフ採用を開始して、より公平に全社員を評価できる人事制度をつくる必要があると感じました。そこで、評価の基準を「販売スキル」と「言語スキル」の2つに分けました。インターナショナルスタッフは入社時、言語スキルは高いが、販売スキルは磨かなければいけないため、そこでのスキルアップに注力、逆に日本人スタッフは、販売スキルが高いものの、海外からのお客様の接客機会が増えるため、言語スキルの上達を目指しています。制度を改定することで、「販売スキル」「言語スキル」の二つの観点でのレベルアップを、全スタッフが自然と心がけるようになりました。
外国人と日本人の強みが、お互いの刺激に
インターナショナルスタッフ採用を始めて一年が経ちました。ミキハウスで採用している外国人は、日本語や日本の文化に興味を持ってくれています。だからこそ仕事への積極性があり、自ら考えて行動をしていて、周りに刺激を与える、とてもありがたい存在です。一方、日本人スタッフは真面目できっちり仕事を進められ、共に働くチームを尊重してくれます。インターナショナルスタッフと日本人スタッフそれぞれが持つ強みを活かし、シナジーが生まれることで、これからよりグローバルな舞台で戦える、強い職場になっていくと思っています。