座談会レポート 「今こそ話したい!これからの多様な働き方」

2021年08月31日

コロナ禍における高齢者の求職活動のいま

笑顔が明るい高齢者の男女

座談会の概要

この座談会では、新しい時代の転換期においてそれぞれが感じている変化を不安として抱えるのではなく、前進するためのヒントにしていきたいと考えています。
8回目となる今回の座談会は前回に引き続き、高年齢者就業確保措置を踏まえて、「高齢者を迎える職場に必要なこと」がテーマです。定年が引き上げられるということは、高齢の従業員が増えるということだけではなく、定年退職後に新たな仕事探しをする求職者のなかにさらに高齢者が増えていくことを意味します。どのような工夫が必要か、今回は社会福祉法人板橋区社会福祉協議会 アクティブシニア就業支援センター「はつらつシニアいたばし」のセンター長小菅氏とコロナ禍の現状や今後について、宇佐川と話し合います。

  • 小菅センター長

    はつらつシニアいたばし 小菅センター長
    社会福祉法人 板橋区社会福祉協議会 事業運営課 アクティブシニア就業支援センター

    2014年より高年齢者無料職業紹介所「はつらつシニアいたばし」に着任、相談員として高年齢者への職業紹介のほか、高年齢者が活躍できる仕事の創出を地元企業と取り組む。板橋区役所や公益財団法人 東京しごと財団、板橋区シルバー人材センター、前回座談会に登場した東京都健康長寿医療センター研究所など、外部機関との連携も図り、多様な人材が多様な働き方で就業できるよう支援体制を整えている。

高齢者の就業ニーズが多様化している?支援現場から見えること

宇佐川:今回は前回(「70歳定年でも高齢者が活躍できる職場づくりに向けた工夫とステップ」(前編)(後編))に引き続き、高年齢者就業確保措置を踏まえて、「高齢者を迎える職場に必要なこと」について考えを深めていきたいと思います。
まずは、「はつらつシニアいたばし」でのお取組みについて教えていただけますでしょうか。

小菅:本日はよろしくお願いします。「はつらつシニアいたばし」は東京都に11カ所あるアクティブシニア就業支援センターの一つで、概ね55歳以上の方を対象とした地域密着型の無料職業紹介所です。板橋区では、社会福祉法人 板橋区社会福祉協議会が運営しています。求職者はご自身で求人票の閲覧もできますが、相談員がご相談にのりながら求人を一緒に探したり、応募先企業との調整等をしたり…、就業後も半年後に状況確認を行うなど、求職者と企業双方にとってよいご縁になるように取り組んでいます。

宇佐川:シニア向け求人ということですが、来所される求職者はどのような方が多いのでしょうか。

小菅:ご利用されている求職者のうち半数以上が65歳以上です。やはり定年が引き上げられていることもあり、以前よりも70代の方が増えたような印象はあります。男女は半々くらいです。単発というよりも定期的に働きたい、といった就業意欲をしっかりお持ちの方が多いです。同じ建物内にシルバー人材センターもあるのですが、併用して利用していらっしゃる方もいます。

宇佐川:それはいいですね。しっかり連携されているのでしょうか。

小菅:そうですね。常に情報交換ができる関係性を続けさせていただいています。求職者のご希望をうかがい、適切なご案内ができるよう相互に連携を図っています。シルバー人材センターからの紹介でいらっしゃる方も多いです。また、求職者同士で情報交換されて、友人に勧められて来ましたという方もいらっしゃいます。中には友人同士で来所して、「あなたこういう仕事やってみたらいいんじゃない?」などと友人と一緒に就職活動をされる方もいらっしゃいますね。

宇佐川:友人同士で! 地域密着ならではですね。そのような傾向は以前からあるのでしょうか?

小菅:そうですね。友人がここで就職が決まったからといって相談にいらっしゃる方も何人かいらっしゃいました。また、ご主人の採用が決まったので今度は奥様がご相談にいらっしゃったり、ごきょうだいでいらっしゃる方もいます。小規模な職業紹介所ですが、その分相談員と顔と顔が見える関係性の中でご相談にのらせていただけるところが地域密着型の良さだと思っています。

シニア向け求人について求職者の相談にのる相談員のイメージ

宇佐川:コロナ禍で希望する条件などに変化は見られますか?

小菅:新型コロナウイルスの影響により、失業をされた方や就業時間が減った50代や60代前半の求職者も増えてきたことで、フルタイムやダブルワークを希望される相談が増えてきました。
私たちもこれまで以上に多様な希望に応えられるように、求人開拓に力をいれるとともに、企業担当者にも就業時間や仕事内容、柔軟に対応していただけることを求めています。

宇佐川:コロナ禍で感染リスクを懸念して就業を控える高齢者が増えているともいわれていますが、一方で高齢者の就業希望のバリエーションが拡がっているということもうかがえますね。

求人ニーズの変化よりも仕事理解に左右される高齢者の求職活動

宇佐川:求職する高齢者についてお話を聞いてきましたが、企業の求人内容についてコロナ禍での変化はありますか?

小菅:全体的に見て求人ニーズはさほど大きな変化はない印象です。もともと、清掃、介護、警備の求人が多いのですが、それらの求人ニーズは堅調です。飲食、調理などの求人については減少が見られました。ただ、まったくないわけではないので希望する方には以前よりも求人が少なく就職活動が厳しい現状であることをお伝えしながらご相談にのっています。

宇佐川:介護施設については、一時期コロナ禍により、外部の方との接触を少なくするために求人を出すことや面接などを控える、またその影響で求職者側も避けてしまうといった動きもあったと聞きました。ただ、やはり介護施設の仕事は、介助以外の仕事、たとえば食事サポートやレクリエーションのサポートなど、資格外でもできること、家事の経験からスキルとしてできることもあるので、比較的高齢者の方もできる部分から始めやすいというのがあると思います。

小菅:おっしゃっていただいたように、介護施設の仕事は資格がなくてもできる仕事はありますし、働きながら資格を取得する仕組みを整えている施設などもあります。また、介護施設と一言でいっても、イコール介護のお仕事だけではありません。清掃や運転、用務や事務、介護補助や調理や配膳・下膳など様々な仕事があります。施設側も柔軟に仕事内容を調整してくださるところが多いように感じます。ですので、求職者に紹介することも少なくないのですが、やはり求職者にとって介護施設での仕事は「資格が必要」「入浴介助のような体力を使う」といったイメージで、躊躇される方が多いです。

宇佐川:介護の仕事内容の理解と自分にできるかどうか、という不安の部分ですよね。それは前回でも話にあがりました。

介護の仕事に取り組むシニアのイメージ

小菅:私たちも求職者の皆さんがご自身の強みやできること、できないことをご理解いただく「自己理解」、そしてどのような仕事なのかをイメージする「仕事理解」が進むように、日々窓口でアドバイスをしています。ただ現在はコロナ禍ということもあり利用時間を1回30分以内でご協力をお願いしていることもあり十分にできないということもあるのが葛藤するところです。仕事理解については、求人票をよく読むことはもちろんですが、企業側の方でも、求職者が具体的に仕事内容をイメージできるよう、可能な限り詳しく求人票を書いていただきたいと思っています。また、求職者が気軽に質問できるような雰囲気を作ることや職場見学や体験会などの機会を作っていただくこともとても効果的だと考えます。

宇佐川:コロナ禍の求人ニーズ変化による求職活動の困難さに目を向けるよりも、そのような仕事理解を助ける機会をコロナ禍でも確保し続けることが大事ですね。

今回は「高齢者を迎える職場に必要なこと」をテーマに、まずは仕事紹介の現場でみられるコロナ禍の求職者の変化、求人ニーズの変化についてお話をいただきました。後編ははつらつシニアいたばしでの定着状況調査より高齢者の早期離職理由から、採用や定着について事例を交えながらお聞きします。