人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2014年01月17日

#採用#飲食業

歌って接客するアイスクリーム店。採用イベントはエキサイティング!

今回クローズアップするのは「コールド・ストーン・クリーマリー」

スタッフ全員が陽気に歌いながら、−9℃に冷えた石板の上でアイスクリームを混ぜて販売するスタイルが人気を呼んでいるコールド・ストーン・クリーマリー。販売スタッフとなるアルバイト採用は、「オーディション」と呼ぶエキサイティングなイベントだ。

  • ● 社名/コールド・ストーン・クリーマリー・ジャパン株式会社
  • ● 事業内容/アイスクリーム、ワッフル、パンの販売
  • ● 設立/2005年5月
  • ● 代表者/代表取締役社長 石原 一裕
  • ● 本社所在地/東京都港区麻布十番2-10-3 マイスクエアビル 7F
  • ● 資本金/5000万円
  • ● 従業員数/約860名(うちアルバイト約800名)

「ハッピークリーマリー体験」が人気を呼ぶ

フルーツやスポンジケーキなどを混ぜた好みのアイスクリームをオーダーすると、クルーと呼ばれる販売スタッフが陽気に歌いながら材料を混ぜてくれるアイスクリーム店をご存知だろうか。その名は「コールド・ストーン・クリーマリー」。1988年にアメリカはアリゾナ州のテンピーという街で生まれ、「ハッピークリーマリー体験」と呼ぶ、来店客においしさと楽しさ、そして幸福感をも提供するという販売スタイルが人気を呼び、現在では全米に約1400店舗のほか、日本を含め23カ国に430店を出店している。日本では、関東地区を中心に全国に32店舗を展開。六本木ヒルズなど都心部の有名スポットと、郊外はアウトレットモールに出店している。
全世界に共通して、その根幹には右の「Our Mission」と呼ぶ企業理念と「Core Value」と呼ぶ行動指針があり、これを末端のアルバイトスタッフまで浸透させているのだ。

「アイスクリームだけでなく幸せも届ける」

「私たちはクルーに対してこの言葉を暗記してほしいと思っているわけではなく、心で理解してほしいと思っています。そして、私たちはこの考え方になりきれているので、普段から『今の発言は"Do the Right Thing"じゃないよね』とか『今日も"Win as a Team"でいきましょう!』などと自然に口に出たりもしますね」とコールド・ストーン・クリーマリー・ジャパン株式会社(以下CSCJ)企業文化・人材開発マネージャーの小高千佳さんは言う。
同社には"Ice Cream is Our Star""Crew is Our Brand"という考え方がある。クルーが店頭で歌いながらアイスクリームを混ぜるのは、「自分たちは単なるアイスクリーム屋さんじゃない。こうしておいしいアイスクリームをクルーが楽しく元気に販売することで、お客様に幸せを届けているからこそ、報酬をもらえているのだ」という信念が共有されているのだ。
「私たちが一番大切にしているのは、このことなのです。だからこそ、従業員の大勢を占めるクルーになってもらうアルバイトの採用には力を入れています」

採用イベントは「オーディション」

店舗は、「キャプテン」と呼ばれる正社員の店長と、平均20名程度のクルーで構成され、ピークの時間帯には5〜7名程度が店頭に立つ。クルーは大学生アルバイトが60〜70%を占め、残りは高校生や主婦、フリーターなど。女性が85%と圧倒的だ。同社では、新入学生が誕生する春と販売のピークとなる夏前の年2回、クルーの採用を行っている。同じエリアの3店舗ほどが合同で20名ほどの応募者を集めて、「オーディション」と呼ばれる3時間かけた採用イベントを行うのだ。応募者の大半は客として同店に行き、「ここでバイトしてみたい」とホームページから応募してくる人がほとんどだという。
「地方の1店舗目の採用では、当店を全く知らずに来て、『えっ、歌うんですか!?』とびっくりされる人もいます。実は私もそうでしたが(笑)」と小高さん。
採用活動は応募の電話を受けるところから始めているそうだ。
「5~10分くらいかけて、お店の雰囲気について凝縮して伝えたり、応募者についていろいろ話を聞くなどして、できれば実際に私たちに会って話してみたいと思ってもらえるように心がけています」

先入観を防ぐために初めに履歴書は見ない

「オーディション」は、同社では「理念型採用」と位置づけている。顕在化しているスキルや能力で選考するのではなく、同社の"Our Mission "や"Core Value"に共感し、既存のクルーに溶け込んで店頭でパフォーマンスを発揮できる人かどうかを重視する。
「ですから、初めに履歴書は見ません。見ると先入観ができてしまうからです。履歴書は後で参考程度に見るぐらいで、これまでに履歴書の内容で不合格にしたケースはありません」
まず、CSCJのスタッフ含め全員がニックネームの名札をつけ、「イベントの間はお互いニックネームで呼び合おう」と指示される。そして、20名がその場で4人ずつアトランダムにチーム分けされる。次にCSCJスタッフ、応募者の順に自己紹介し、いよいよ3つのプログラムによるオーディションに入る。

「グループ全員で歌や振り付けを考え全員で演じる」という選考方法

1つめは、「Make People Happy体験」の発表。自分がこれまでの人生で人をHappyにした体験談を皆の前で話す。
2つめは、「あなたたちは世界一のアイスクリームショップの店員。その店では『Make People Happyアイス』を売っている。それはどんなアイスクリーム?」という問いに、画用紙とクレヨンを使い、グループ全員で話し合って答えを出すというグループワークだ。
「"食べてもなくならないアイス"とか"幸せの分だけお金をもらうアイス"などという答えが出てきます(笑)」と小高さん。
そして3つめは、グループ全員で店頭で歌う歌や振り付けを考え、全員で演じるというもの。中には寸劇をまぜるグループもあるという。
「とってもエキサイティングに盛り上がります(笑)。お互いが初対面で応募者としてはライバル同士のはずが、すぐに打ち解けて団結して取り組むところはいつ見てもすごいと思いますね」
終了後、採用する店の店長や小高氏などCSCJのスタッフが残り、議論しながら選考を行う。

「引っ込み思案な性格を変えたい」で応募する人も

チェックするポイントは、主に「第一印象」「チームワーク」「リーダーシップ」の3点。
 応募者の中には、「引っ込み思案な性格を変えたい」といった理由で応募してくる人もいるという。
「それが実現すれば素晴らしいことなので、そうした動機も加味して選考しますね」
なお、こうしたイベント型の採用は、「CSCJが大切にしている考え方が体感できること、多くの目でチェックできること、さらに3時間での20人の一括選考によるコスト削減効果というメリットがある」と小高さんは説明する。
採用後は、さらに1日がかりのオリエンテーションを行い、"Our Mission "や"Core Value"を再確認するという念の入れよう。そのほか、あいさつや声の出し方、歌い方などのスキルも学ぶが、基本的に店舗でのOJTが主体となる。

世界各国の代表が集まる「Global Creamery Cup」

クルーのモチベーションを高めるイベントにも力を入れている。毎年7月、各店舗が3人ずつクルーの代表を選出し、アイスクリームをすくう技術や商品知識、接客力、歌の表現力などクルーに必要なスキルを競い合う全国大会「All Japan Creamery Cup(AJCC)」が行われている。
「全国から応援含め400人ぐらいが集まる一大イベントとなっています。お互いに競い合ってレベルを高める機会ではありますが、普段は会えないクルー同士が知り合える貴重な機会となっています。北海道のクルーが九州のクルーと仲良くなって、お互いの街に遊びに行くといったことも起きています。まさに全体としての一体感がつくれる場ですね」
このイベントはCSCJが始めたもので、アメリカ本社は絶賛。そして各国が追随し、2013年から国ごとの代表が集まっての「Global Creamery Cup」が行われることになった。その第1回目の開催地に選ばれたのは発祥の地の東京だ。優勝したのはドバイのチームで、2位はナイジェリア、そして日本が3位となった。
「まさに異文化交流が繰り広げられ、非常に刺激的な場となりました」と小高氏は満足げに言う。

"Best of Crew"を選出しモチベーションをより高める

AJCCとは別に、年1回、各店舗が3名の"Best of Crew"を選出し、一同に集まって研修を行う制度もある。
「仕事に慣れてくるに従い、"Our Mission "や"Core Value"が薄れてくるのも仕方ないと思います。ですから、事あるごとにこれらの精神をもう一度思い起こし、リフレッシュする機会をつくっているのです。それだけ"Our Mission "や"Core Value"を大切にしている、ということです」と小高さんは強調する。
ちなみに、クルーを正社員に登用する制度もあり、毎年3〜5人が面接などの試験を受けて登用されているという。

CSCJでのアルバイトは中学時代からの夢

2013年度のAJCCで見事優勝した東京・池袋サンシャインシティALTA店の長迫めぐみさん(21歳)に話を聞いてみた。
「福岡出身の大学3年生です。中学生の時、友だちと東京に遊びに来て、「面白いアイスクリーム屋さんがあるよ」とここのお店に連れてきてもらったのです。そこでコールドストーンは初めて知ったのですが、歌まで歌ってくれて、こんなに楽しいお店って初めてだったので感激しました。私はアイスクリームが大好きなこともあって、絶対に東京の大学に進学してここのお店でバイトする、って誓ったのです(笑)。それ以来、それが私の夢になりました。そして、小さいかもしれませんけれど、こうして夢を実現させることができて、それだけで自信になったのです。実際にここで働いてみて、初めて来た時に私が幸せな気持ちになれた秘密を知り、ますますコールドストーンが好きになってAJCCで優勝できるほど頑張れました。私のチームが日本一、と見られていると思うとプレッシャーもありますが、でもやっぱり自信になりますね。今就活が始まったところですが、この経験は就活でも、社会人になっても絶対に活かせると思っています。どんなに辛いことがあっても、この3年間のことを思い出せば笑顔になれると思っています」

「コールド ・ ストーン ・ クリーマリー」から読み取れる人材活用のポイント

職場環境の整備・企業風土改革
アルバイトスタッフのモチベーションを高める(イベントなどの)機会を積極的に提供する
採用・雇用・配置
社員・アルバイトスタッフの区別なく企業理念や行動指針を徹底して浸透させる
職場環境の整備・企業風土改革
上記のためには、応募者がその中身を体感し 共鳴できるかどうかを判定する選考方法を採用する