座談会レポート 「今こそ話したい!これからの多様な働き方」

2020年10月06日

派遣スタッフの在宅勤務(テレワーク)をスムーズに実施するには

コミュニケーションを取りながらテレワークするイメージ写真

座談会の概要

この座談会では、新しい時代の転換期においてそれぞれが感じている変化を不安として抱えるのではなく、前進するためのヒントにしていきたいと考えています。
4回目となる今回の座談会テーマは「コロナ禍における派遣業界の兆し」です。ジョブズリサーチセンターの宇佐川が進行役となり、リクルートジョブズで多くの派遣会社を担当してきた手塚さんと派遣業界の最新動向を知る川渕氏の3人で現状と兆しについて話し合います。後編は派遣スタッフの在宅勤務がテーマです。

  • 川渕 香代子さんの写真

    川渕 香代子(かわぶち かよこ)
    一般社団法人人材サービス産業協議会事務局部長 兼 一般社団法人日本人材派遣協会事務局事業部長

    経済産業省、株式会社スタッフサービスホールディングス、株式会社リクルートスタッフィングを経て2012年より人材サービス産業協議会にて派遣社員のキャリア形成支援プロジェクト、優良派遣事業者認定制度を担当し、2020年4月より、一般社団法人日本人材派遣協会にて広報を担当。

  • 手塚 美奈子さんの写真

    手塚 美奈子(てづか みなこ)

    1986年リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)入社。以来ほぼアルバイト・パート領域で営業職、営業マネージャー職、業界に広く浅く関わってきた経験をもとに2015年から現職(パートナー様の営業支援。主に人材業界の営業サポート)。1987年当時広報宣伝を担当しており、「フリーター」という造語(映画化)に関わったという経験も。

派遣スタッフも在宅勤務(テレワーク)推進、新しい働き方へ大きく変化

宇佐川:コロナ禍で派遣業界に起きた大きな変化のひとつとしては、やはり在宅勤務でしょうか。派遣先の業界や職種によるとは思いますがいかがでしょうか。

川渕:6月にJHR(人材サービス産業協議会)で調査を行ったところ、派遣先担当者の63.4%が派遣社員の在宅勤務を認める方針であることがわかりました。「積極的に推進する」「派遣社員の希望があれば、業務内容によって認める」「派遣会社から依頼があれば、業務内容によって認める」のいずれかの回答をした派遣先担当者の割合です。興味深いのは、地域別でみると首都圏は「積極的に推進する」、京阪神は「派遣会社から依頼があれば、業務内容によって認める」がそれぞれ最も多いことです。ここでも派遣会社に期待される役割の大きさを感じました。また、職種別でみると、やはりIT系、クリエイティブ系で認める方針のところが多く、8割を超えていました。

クリエイティブな仕事に従事するイメージ写真

宇佐川:派遣会社がサポートできることはありそうですね。IT系などはもともと在宅勤務で対応できた案件もあったかと思いますが、他の職種でも進んでいるのでしょうか。

手塚:この1ヶ月くらい、7月~8月にかけて全体的に在宅勤務OKの案件が増えてきました。また職種バリエーションも拡がっています。リクナビ派遣掲載の案件をみると、7月上旬時点では99%がIT系でしたが、現時点(8/31)ではその割合が4割程度になり、オフィスワーク(事務職)が4割程度に増えています。派遣の在宅勤務がポピュラーになりつつある、という印象を持ちます。
また、個人的に気になっているのはコールセンターです。個人情報を扱う業務特性上、コールセンターの派遣スタッフが在宅勤務するのは難しいのでは、と思っていましたが、既に取り組まれているところがあり、現時点でも40件程度掲載されています。すごく変わってきているなというのを感じます。

宇佐川:コロナ禍で一気に進んだということですよね。派遣スタッフのみならず、全体的に求人メディアでは「在宅勤務」というキーワード検索は増えているのは確かです。そのニーズに応えていくというのも大事ですが、在宅勤務を推進するにあたっては新たな課題が出てくるのも事実だと思います。派遣スタッフの在宅勤務についてはどういった点に注意するとよいのでしょうか。

川渕:派遣協会で派遣スタッフの在宅勤務導入時に留意することをまとめた冊子があります。この冊子は、派遣会社と派遣先担当者が一緒に派遣スタッフの在宅勤務について考えられるようにリスクや必要な対応をまとめています。なかでも巻末に付記しているチェックリスト10項目はわかりやすいと思います。
たとえば、「派遣社員の業務遂行状況の確認・報告・相談ができる体制になっていますか。」「在宅勤務にあたり使用するノートパソコンや周辺機器、携帯電話や通信機器等の情報漏洩対策を実施していますか。」などは、派遣スタッフ特有というよりも、従業員全体にいえることです。このようなチェックリストをみて、在宅勤務導入に際して何を必要とするかがわかるとスムーズになるのではないでしょうか。

テレワーク時の様々なコミュニケーションを整理するイメージ写真

宇佐川:確かに、派遣先担当者にとっては何が必要か、派遣会社にとっては何が必要か、ということがこういったものを踏まえて話し合えるといいですね。

手塚:派遣会社も派遣先企業も在宅勤務が導入されていないところで、派遣スタッフだけ在宅勤務導入、というのはなかなか難しいから全体的に話すことが必要ですよね。
ところで少し気になるのですが、派遣会社も在宅勤務の方が増えていると思うのですが、不便なことなどは発生していないのでしょうか。

川渕:4月頃はまだ在宅勤務にも慣れていなかったり、派遣のマッチングは事業所内でと法律で決められているからと、案件データチェックや登録者への連絡のためだけに出社している、といったような話は聞きました。今は在宅勤務でも情報セキュリティが確保されていれば事業所と同様と捉えてよいとなったため、そのためだけに出社するということはないようです。派遣会社のカルチャーにもよるかと思いますが、大手派遣会社は7割在宅勤務という状況ではないでしょうか。

宇佐川:派遣先企業や派遣スタッフもそれで困っている、ということはないんですね。

川渕:スタッフとの面談もオンラインでよいとされましたので、そのあたりは理解が進んでいるように見受けられます。ただ、派遣スタッフの時間管理についてはこれからルールを決めたりすることが必要かもしれません。契約で始業時間と終業時間は決められていますが、キリがよいところまで仕上げたいとつい終業時間が延びてしまうなど…そういった場合、出社している場合はその場で相談できていたものが、在宅勤務になり、少しだけ残業しますというのもなかなか言いづらい、見えづらいという場合もあると思います。このあたりはどう時間管理していくか、これから検討が必要なのではないでしょうか。

コロナ禍を経てこれからの派遣業界に期待されること

子育てをしながらテレワークする女性のイメージ写真

宇佐川:私はコロナ禍の仕事探しにおいて、派遣会社が果たす役割は大きいと思うんですよね。仕事探しのサポートや視野を広げるなど…そのあたりは業界全体としてはどういった機運なのでしょうか。

川渕:在宅勤務を希望する方々は子育てや介護との両立など、なかなか就職活動ができないという方もいらっしゃると思います。そういった方々の仕事探しのサポートができるというのは大きいと思っています。

宇佐川:派遣スタッフの在宅勤務の推進でこれまでは就業をあきらめていた方々も機会が増えそうですね。ちなみに、在宅勤務以外でも短時間(1日4時間など)、短日数(週2~3日など)の案件も出始めている…ということも聞きましたがこれからも増えそうでしょうか。

手塚:フルタイムの案件が短時間、短日数に切り替わっている、というのは一部状況としてみられるので、結果的に働き方のバリエーションが拡がっているのではないでしょうか。これまではフルタイムで働けなかった方々でも働きやすい案件が、在宅勤務の増加と同様に増えるのではと思います。

宇佐川:コロナ禍で多くの企業が経営や事業運営の見直しに迫られ、従業員の働き方、コミュニケーション手法も大きく変わっているなか、新規求人の視点からいくと、従来とは異なる働き方、条件での募集は従来リーチできなかった層をも惹きつけることにもつながります。短期間での変化が続く現在、企業と求職者両方のニーズを捉えることができる派遣会社の役割はやはり大きいですね。

後編は、川渕氏、手塚さんと一緒に派遣スタッフの在宅勤務をテーマに話し合いました。コロナ禍で一気に導入が進んだ在宅勤務ですが、派遣スタッフの場合は、派遣先企業、派遣スタッフ、派遣会社の三者それぞれが何をどう準備すればよいのか、しっかり話し合って確認することが求められます。まだ細かい時間管理などの課題はあるとのことですが、派遣スタッフの働き方における変化は、子育てや介護と両立されている方など時間に制約があり就業をあきらめていた方々にとってもチャンスの機会となりそうです。

文/茂戸藤 恵(ジョブズリサーチセンター)