採用の知恵袋

2023年06月14日

#人材不足#副業・兼業

採用の知恵袋 2023年6月号 ―副業・兼業で人材不足解消を―

人口減少・少子高齢化の影響で、労働市場は完全に売り手市場、特に若手層は争奪戦となっており、従来の手法での人材確保は非常に難しい状況です。そのような状況を、副業・兼業者を受け入れることで少し改善できるかもしれません。
「採用の知恵袋」では、企業から寄せられる質問に対して、調査研究の結果や企業・行政団体との取り組み事例をもとに回答します。今回はセンター長の宇佐川が答えます。

Q.

副業・兼業のニーズが高まっていると聞きますが、社外から副業・兼業者を受け入れることによってどんな効果があるのでしょうか。また、受け入れるにはどういったことがポイントになるか教えてほしいです。(関西エリア/製造業)

A.

正社員募集では採用できなかった人材を確保できるようになるかもしれません。転職には踏み切れないけれど、他社で自分の力を試してみたい、他業種・他職種も経験してみたいと考える層には、副業・兼業という働き方はメリットがあります。重要だけれど急ぎではない仕事、時間があれば考えたい・取り組みたいと思っても先送りにしてきたことなどから、副業・兼業用の業務を検討してみてください。

解説

◇ 副業・兼業の現状、背景

リクルートが行った「兼業・副業に関する動向調査2022」では、現在、正社員として働いている人のうち、副業・兼業を実施中の人と今後意向ありの人の合計は56.3%と半数を超えています。コロナ禍を経て、在宅・テレワークといった新しい働き方を経験したことで、自身の働き方やワークライフバランス、今後のキャリアを考えた人が多いことなども影響しているでしょう。あわせて、転職を考えていないものの、キャリアアップの機会を求める人にとっては、本業を辞めることなく、他社の仕事を経験できることも後押しになっていると考えられます。

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一方で企業側の受入体制はどうでしょうか。日本経済団体連合会(以下、経団連)が2022年に会員企業を対象に行ったアンケートを見ると、自社の従業員が副業・兼業することを認めている、あるいは認める予定の企業は70.6%であるのに対し、社外から受け入れている、あるいは認める予定の企業は30.2%と差が大きく、企業の受入体制は追いついていない現状です。副業・兼業用の仕事創出が肝といえそうです。

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◇ 副業・兼業者を社外から受け入れることの効果

前述の経団連調査によると、副業・兼業者を受け入れることの効果で一番多かったのは「人材の確保」でした。人材不足は「仕事に対する人数が足りない」数の問題と「仕事に必要な能力を担保できる人がいない」質の問題に分けられますが、後者の解決策として、副業・兼業者の受け入れは有効な策のひとつといえるでしょう。例えば、先端技術や販路拡大の知見、マネジメント経験も豊富な人材を確保できることもあります。

リクルートの調査では、「社内のデジタル化、IT化」や「業務プロセスの改善、効率化」などを副業・兼業として任せている企業が多く、従来の正社員では採用困難なIT人材など専門性が高い方を、副業・兼業であれば確保できる可能性があることを示しています。

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◇副業・兼業を受け入れる際のポイント

企業の受け入れが進まない理由として、「何を頼めばよいのか分からない」「いくら払えばよいのか分からない」「頼む人を選べない」といった声が挙げられます。前例のないものを導入する難しさはもちろんありますが、最初から完璧に仕事の範囲を決めなければ、と気負いすぎず、小さな業務でも、副業・兼業者と企業としてお願いしたいことを臨機応変にすり合わせていくことが重要です。
最初は、契約期間を短期で設定し、その間に企業と副業・兼業者が相互でうまくやれるか、必要な能力があるかを、実際の業務を通して確認し、契約内容の見直し、長期契約とすることでミスマッチを最小化することも可能です。

副業・兼業者が企業の集客課題を解決した事例を紹介します。
事例企業:SEN.RETREAT TAKAHARA

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副業・兼業は、単発・短期間で完了できる仕事や、成果報酬型で任せることが可能な仕事など相性の良い仕事も多いです。重要だけれど急ぎではない仕事、時間があれば考えたい・取り組みたいと思って先送りにしてきたことなどから検討してみてはいかがでしょうか。

【出典】
(図1)株式会社リクルート「兼業・副業に関する動向調査2022
(図2・3)一般社団法人日本経済団体連合会「副業・兼業に関するアンケート調査結果