インタビュー
2022年02月01日
長期インターンシッププログラムで学生が得たものは?「愛媛Food Camp」成果報告会レポート
愛媛大学農学部と県内の食品関連企業との産学連携による新たなインターンシッププログラム「愛媛Food Camp」が、「愛媛県の地方創生を食品業界がリードする」を合言葉に、2021年度よりスタートしました。農学部生命機能学科の学部・大学院修士課程学生を対象とし、地域産業と連携した実践型学習プラットフォームは、どのような学生の学び・成果につながったのでしょうか。
プログラムの最後の活動として行われた「成果報告会」では、9社での具体的な商品提案内容や試作づくりのプロセス、得られた学びについて発表がありました。その様子をレポートします。
※記事は、2021年12月4日の発表会の様子をお伝えしております。
愛媛大学農学部生命機能学科・大学院農学研究科生命機能学専攻と愛媛県内の食品関連企業が実施する産学連携によるインターンシッププログラム「愛媛Food Camp」。学部・大学院修士課程の学生を対象とした実践型学習プラットフォームになっている。 愛媛Food Campは、「愛媛県の地方創生を食品業界がリードする」を合言葉に、学生のキャリア支援に加え、大学と地域企業を結び、お互いのリソースを活かし合った地域経済の活性化への貢献を見据えている。 2021年度は、愛媛県内の食品関連企業18社及び学部1年から修士1年までの62人の学生が参加。製品開発プロセスに関して企業から提示される課題に取り組みながら、最終的には製品開発・販売を目指す。自己分析、企業研究から始まる9日間にわたるプログラムを通じて、学生は食品業界の仕組みや県内企業の取り組みに理解を深め、自らの「学ぶ」と「働く」をつなげていく。
発表① 朝日共販株式会社チーム「しらすラーメン、しらす入り魚肉ソーセージ」
しらすの好漁場である四国最西端の岬・佐田岬で、定番商品の「釜揚げしらす」を展開する朝日共販。インターンシップに参加した大学院 1年の三好陽麻莉さんと学部2年の吉森彩理さんは、「しらすを若年層や高年齢者にももっと食べてもらいたい」と、しらすラーメン、しらす入り魚肉ソーセージを提案しました。 「赤腹しらすやクリーム色しらすは、釜揚げしらすとして販売できないと知り、ここに付加価値をつけて商品開発できないかと考えました。白くないしらすは商品価値が低いのですが、すり身にすれば解決するのでは?とやってみることに。しかし、しらすの目玉の黒色により、すり身にすると全体が灰色になってしまうことが判明。そこで、灰色でも気にならない商品の提案として、ラーメンとソーセージの提案に行き着きました」 「しらすラーメンでは、しらすのすり身を麺に練り込むのが難しく、釜揚げの煮汁をスープに使うことにしました。優しい味の出汁になり、鍋などにも活用できそうなスープが完成。フリーズドライのしらすをトッピングし、しらすの風味を加える提案も行いました。しらす入り魚肉ソーセージでは、チーズ味と青のり味の試作品を作成。しらすの色が気にならない仕上がりになりました」
雨の中、船に乗ってしらす漁に行くことも。商品の原材料をどのように調達されるのかを見ることで、生産者の想いや苦労を知ることができた。
発表② キョクヨーフーズ株式会社チーム「野菜と食べる、味付きカニかま」
カニ風味かまぼこ「カニかま」の製造・販売を手掛けるキョクヨーフーズでは、学部3年 の星野遥輝さん、2年の嶋﨑颯真さん、松本涼佳さんがインターンシップに参加しました。1984年の創業以来、すり身に特化した自社工場で安定供給を続けてきた「カニかま」。強い看板商品がある中で、3人が考えたのが、野菜をたくさん食べるためのカニかまでした。「味付きでサラダに合う、高たんぱくなカニかま」を20~30代に届けたいと提案しました。 「カニかまの製造工程を見学後、自分たちで市場調査を実施。その結果、味がどれも似ていて、味より食感で勝負していること、高たんぱくである点をアピールできていない点が、商品開発につながる仮説として挙がりました。そこで、味のあるカニかまレシピを考案し、工場の開発室で試作したのですが、味が強すぎてしまったり、成型がうまくいかなかったりと苦戦。アレンジしすぎるとカニかまではなくなってしまうという、独自性の出し方が難しいポイントでした」
工場の開発室にて手作業で試作品を作る様子。慣れない作業に緊張したが、丁寧に指導してもらったことで無事完成したときは感動した。
発表③ 株式会社志賀商店チーム「みかん香る黒豆」
高い品質の豆商品が有名な豆の専門会社・志賀商店には、大学院1年の石田彩華さん、学部2年の小野遥香さん、坂本希美さんが参加。「みかんの皮と煮込んだ黒豆」の商品を提案しました。 「製造体験や試食で、黒豆の美味しさに感動しました。志賀商店のこだわりであるじっくり煮込んだ黒豆と、愛媛県の特産であるみかんを合わせることで、これまでとは違う新しいイメージの商品を作りたかった。そこで提案したのが、『みかん香る黒豆』です。北海道産黒豆と愛媛県産甘夏みかんを使用し、黒豆本来の甘さとみかんの酸味で食べやすい甘さに仕上げることで、お子さんから年配の方まで、普段は黒豆を食べない幅広い年代の方に楽しんでいただける商品にしたいと考えました」 「試作品では、甘すぎるという意見や、みかんの皮から出る白い綿が気になって美味しそうに見えないという指摘があり落ち込みました。その後、糖度を下げたり、皮の大きさを調節して見た目を改善したりと試作を繰り返しました」
こだわったパッケージデザイン。黒豆の黒に映える色のポイントや文字のバランスなど、社員からのアドバイスを参考に少しずつ改良した。
発表④ 四国乳業株式会社チーム「refresh yogurt」
『らくれん』ブランドで知られる四国乳業株式会社のインターンシップには、大学院1年の和泉光将さん、松岡亜祐さん、学部1年の岡崎真士さん、濱崎明日佳さんの4人が参加しました。 機能性表示食品を多く展開している強みに着目し、アントシアニン・GABAを配合した飲むヨーグルト「refresh yogurt」を提案。今後、本格的な商品化が決まっています。 「コロナ禍で多くのストレスや目の疲労を感じている若者にターゲットを絞り、商品案を考えました。アントシアニンは、目の疲労感を緩和する機能性関与成分であり、GABAはストレスを軽減する機能性関与成分として知られています。コロナの影響でスマートフォンやパソコンに向かう時間が増えたとのマーケティング調査結果をもとに、目の不調を感じている人の増加を仮説として挙げました。 また、同調査でメンタル不調や人間関係のストレスが増えたという声もありました。アイケア商品の市場規模の大きさや、ストレスケア市場規模が急拡大していることからも、アントシアニンやGABA配合のニーズは高いのではないかと考えました」 商品案が決まったときはうれしかったものの、自分たちの考えを商品開発のプロたちに伝える難しさを実感したという4人。バイヤーへのプレゼンで商品化を納得させることができず、みんなで自信をなくしたことも。でも、いつも全員で話し合い、試作品の試飲まで作り上げていったときには大きな達成感があったといいます。 「愛媛Food Campを通じて、酪農家見学、工場見学もさせていただき、実際に販売するにあたり足りないビジネス視点を指摘いただきました。苦労が大きかった分、これからの商品化が決まり、やってきたことが具現化される喜びを感じています。仲間と協力することで目標を達成できると学べたことを、これからの学生生活、その後の社会人生活に生かしていきたいです」
商品化するまでの流れをできるだけ学生に見せたい」という四国乳業さまのこだわりで、取り引き先の酪農家にも訪問させてもらった。牛舎の匂い、乳牛の息づかいなど、現地でなければ感じ取れない情報を得られた。
発表⑤ 株式会社中温チーム「栗ときな粉のガトーショコラ」
株式会社中温は、農産物加工品をシャトレーゼやラポールなどの食品メーカーに提供しているBtoB企業。学部3年の辻岡芽依さん、2年の原田向日葵さんは、中温の栗ペーストを使った「栗ときな粉のガトーショコラ」を提案しました。 「インターンシップでいただいた課題が、栗製品(甘露煮・栗ペーストなど)を用いたスイーツの開発でした。中温さんの強みは、優れた加工技術による、素材の良さをそのまま生かした製品です。そこで、濃厚な栗ペーストの良さが引き立つようなスイーツにしたいと“栗製品を用いた今までにないスイーツ”を考えました」 2人で作った試作品は、社員のみならず、取引先であるラポール持田店の方にも食べてもらい、フィードバックをもらった。
報告会には、中温社員もかけつけ応援してくれた。うまくいかなかったときに一緒に考え、アドバイスをくれたことで、納得できるデザートが完成できた。
発表⑥ 株式会社日東物産チーム「鶏むね肉のヘルシー総菜」
「スーパー日東」を県内に5店舗展開している株式会社日東物産では、学部3年の斧夢実さん、2年の平谷千晶さん、佐藤美里さん、1年の松本紗英さん、坂本茉優さんの5人がプログラムに参加しました。量が多く、満足感のあるお惣菜が人気のスーパー日東で、5人が提案したのは「健康ニーズに応えるヘルシー総菜」です。 「5人での話し合いの結果、鶏むね肉を使用することが決まりました。競合商品調査や、来店されるお客様、それぞれの周りの人への聞き込み調査により、『鶏むね肉のチャーシュー』を提案、商品化が決定しました」 健康ニーズに応える商品のレシピ考案や、“作りたいもの”と“作って売れるもの”を考えることに苦労したと話します。 「食材や容器、値段など決定することが多くて、商品化の難しさを実感しました。パッケージに入れるPOPやシール案は社員の方にプレゼンし、フィードバックをもらって改善しながら決めていきました」 インターンシップ8日目には、実際に店舗での販売がスタート。同様の商品の中で月の売り上げが2位になり、他店舗での販売も決まった。
自分たちが企画し、POPも作成した。社員のフィードバックでより満足度の高いクオリティにできた。
発表⑦ 株式会社ハタダチーム「銀のプリン」販促企画
タルトやケーキ、シュークリームなど洋菓子を主力商品とした製菓メーカー・株式会社ハタダでは、学部2年の門田奈々さん、金田梨沙さん、八木新葉さんがプログラムに参加しました。課題として取り組んだのは、人気商品である「金のプリン」と並んでシリーズ展開している「銀のプリン」の販促企画でした。 「なめらか食感の『金のプリン』に対して、『銀のプリン』はしっとり食感でとても美味しいプリンです。ただ、金と銀の違いが分かりにくいためか、人気が伸びていませんでした。そこで私たちは、20代の若い女性向けに“昭和レトロ”をコンセプトに打ち出しては?と提案。パッケージデザインをシールにして、レトロ感を出し、金と銀の違いを明確にしました」 完成したものを試験販売として、10日間にわたり10店舗で展開したところ、試験販売を行った期間の売り上げは、行わなかった期間に比べて10倍以上に急伸。「銀のプリン」だけではなく、「金のプリン」の売り上げも4倍以上になるなど、他商品の売り上げへの波及効果も見られたそうです。
店頭販売の様子。金・銀の違いが一目で分かる展示にしたことで、売り上げアップに貢献できた。
発表⑧ ピーコックフーズ株式会社チーム「鶏もも肉の酒粕味噌漬け」
食肉加工品を手掛けるピーコックフーズでは、学部3年の﨑岡莉子さん、2年の淘江千緑さんが参加し、「愛媛県産商材と鶏肉を融合させた新商品提案」という課題に取り組みました。 「提案したのは、40代男性という新たなターゲットに向けた『鶏もも肉の酒粕味噌漬け』です。ピーコックフーズの既存商品を参考にして、合いそうな愛媛の特産品を組み合わせて考えました。商品開発に当たって大切にしたことは、愛媛の日本酒『千代の亀酒造の銀河鉄道』から作られた酒粕と愛媛の麦みそ、そして愛媛県産鶏肉を使用し、“ALL愛媛”にこだわったことです。ただ、他社の既存商品との差別化が難しく、本当に商品として成り立つのかが不安でした」 そこで、社長の提案により販売方法を検討することに。「日本酒とセットにして、千代の亀酒造さんのネットサイトで販売しては?」というアイデアから、真空包装して冷凍販売しようと話が進んだ。
開始当初は自分たちに商品開発ができるのか不安が大きかったが、自分たちの提案した商品が好評価だったことや、社員とのやり取りの中で手ごたえを感じられるように。
発表⑨ 南商事株式会社チーム「湯上がりアイスギフト企画」
アイスクリームの卸売や乳製品の宅配販売を手掛ける南商事では、大学院1年の村上裕紀さん、学部3年の平野成菜さん、古川結唯さん、2年の藤田菜緒さん、森川夏帆さんの5人が参加しました。5人でアイスの良さを生かした「愛媛県ならではのギフトセット」を提案し、公式オンラインショップで2021年12月末からの販売を予定しています。 「公式オンラインショップの運営にあたり、画期的なアイスギフトを生み出したいというのが、企画のコンセプトでした。そこで出てきたアイデアが、愛媛が誇る今治タオルと、南商事の美味しいアイスクリームをコラボさせた『湯上がりアイスギフト』です。お風呂上がりのひとときにリラックスできるような商品を企画し、愛媛のこだわりの素材による“愛媛ならではのギフト”を全国に届けたいと考えました」 1回目の試食会では、トマト、アスパラガス、紅マドンナ、レモン、キウイ、ブルーベリ-、塩、バタフライピーの8種類のアイスを試食し、「自分たちが考えたものが現物となって試食できるという貴重な経験ができた」といいます。 「塩味が足りなかったり、果実味が足りなかったりとさまざまなフィードバックをもらい、2回目の試食会に向けて改善を重ねていきました。同時に、今治タオル様との打ち合わせや店舗視察を行ってタオルを選定し、南商事様のSNSフォロワーを中心にWebアンケートを実施して、価格や送料、ギフトに求める要素などを整理していきました。さらに、アイスクリームのカップデザインを決めていくなど、商品化に向けて具体的に詰めていきました」
DAY3のプログラムの様子。企業研究してきた内容を共有し、企業の皆さんと議論。商社として南商事がどのようなビジネスモデルなのか理解を深められた。
【総評】愛媛Food Camp成果報告会を終えて
企業の中に入ることで、将来の具体的なイメージが持てる。 厳しさも含め、仕事だからこそ得られる貴重な学びの機会に
愛媛大学 農学部生命機能学科長
関藤孝之さん
プログラムを通じて、責任の重さを感じたこともあったと思います。でも、それが社会に出たときのプレッシャーであり、本当の意味での実戦的な取り組みになったのではないでしょうか。
企業の方は、自社の手の内をさらけ出しながら、学生をしっかり指導してくださり、本当にありがたく思っています。学生の皆さんは企業のいろんな人と触れ合う中で、『こんな人になりたい』『こんな風に働きたい』と具体的なイメージを持てたのではないかなと思います。それが愛媛Food Campで得られる気づきであり、これからにぜひ生かしていってください。
コロナ禍で思うようにプログラムを進められない中、ご尽力してくださった企業の皆様、本当にありがとうございました。
取材・文/田中 瑠子


