人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2017年07月31日

#女性・主婦#短時間勤務

短時間勤務(プチ勤務)で「働きたいけど働けない」をなくす

株式会社プラシーズ メイン写真

今回クローズアップするのは「プラシーズ釜石工場」

岩手県釜石市では、時間の制約により働くことができない方と、人手不足に悩む市内企業とのマッチングを目的に、平成28年度に「釜石市眠れる労働力発掘人材マッチング事業」を実施しました。今回は、その事業の一環で短時間勤務(プチ勤務)を新たにつくったプラシーズ釜石工場と、事業を支えてきた岩手県沿岸広域振興局に、取り組みを通して得られた変化について取材しました。

  • ● 社名/株式会社プラシーズ
  • ● 創業/1932年8月
  • ● 本社所在地/〒026-0055 岩手県釜石市甲子町第十地割159-2
  • ● 資本金/1,000万円

ラインで働くスタッフの業務負荷を下げたい、でも新しいことは不安

プラシーズ釜石工場では、化粧品用のプラスチック容器の製造や口紅、マスカラ等の組み立てを手がけています。工場の生産ラインはいくつかあり、組み立てラインとシルク印刷やホットスタンプで化粧品容器に装飾するラインで、いずれも人手不足により一人ひとりの業務負荷が増していました。そこに、岩手県の担当者から短時間勤務の取り組みの提案があったそうです。
「少しでもラインで働くスタッフの業務負荷を軽減したいと思い、段ボールの組み立てを本部スタッフが行う・・・等、ラインのスタッフがやらなくてもよい業務の洗い出しや切り出しを検討していたところでした。ただ、短時間勤務の導入は新しいことなので、抵抗や不安も正直ありました」と工場長の阿部山さんは話します。

株式会社プラシーズ 写真1
工場長の阿部山さん

短時間勤務の導入のメリットをスタッフ全員で理解する

2016年12月から採用を始め、現在では9名の短時間勤務者が活躍しています。短時間勤務を新たに導入するにあたって工夫した3つのことを教えてくれました。

ひとつめは、工場長直下の組織を作ること。「基本的に短時間勤務者はその組織に配属としています。日々の生産状況を踏まえて、負荷の大きいラインに配置しています。それは効率的というだけではなく、短時間勤務だからこそ、多くの方とコミュニケーションできる機会を作りたいという意図もあります」。
ふたつめは、仕事に慣れるプロセスを作ること。「3時間の勤務でも、最初のうちは段ボールの箱を作ったり、出来上がった製品の梱包などの日常生活の中でもあるような仕事をお願いしています。仕事に慣れてきたら一人でも出来る簡単な組み立て作業をお願いし、最終的には量産ラインに配置します」。
最後は、以前からいるスタッフへの説明をきちんと行うこと。「毎朝のミーティングで『皆の業務負荷を下げるために、短時間勤務の採用を始める』ということを丁寧に説明しました」。

株式会社プラシーズ 写真2
短時間勤務者も周囲のスタッフとコミュニケーションとりやすく工夫されている職場

短時間勤務の私が言うこともちゃんと聞いてくれる

結婚後は子育てに専念、10年以上のブランクがあったという山崎さん(42歳)に、短時間勤務で働き始めたきっかけを聞きました。「以前から新聞の折り込みなどでも仕事は探していましたが、すべてフルタイム勤務ばかり。たまたま『仕事カタログ』*が市の広報にはさまっていて、週3日2時間~とあって、興味を持ちました」。
2人の子供も中学1年生と小学2年生と成長し、徐々に周りのお母さん友達も働き始めるなかで、働きたい気持ちはあるものの「フルタイム勤務だと家事がおろそかになりそう・・・」という不安もあったため、短時間勤務の仕事はまさに探していたものだったそう。また、「工場長のお人柄が優しく、工場見学も面白くて、化粧品が好きな私にとって、取り扱うものがキラキラして見えました」と笑顔で話してくれました。

株式会社プラシーズ 写真3
短時間勤務スタッフの山崎さん
9-12時で週5日勤務している

株式会社プラシーズ 写真4
*「プチ勤務」仕事カタログ
短時間勤務(プチ勤務)の求人情報のほか子育て中のママが働くことについての役立ち情報も掲載

仕事内容はラインで流れてくる部品を組み立てるもので、経験はなかったため、「最初はどんどん流れてくるので焦りました」と山崎さんは話します。ブランク10年以上、未経験、短時間の勤務でも仕事をスムーズに覚えられたのは、周囲の先輩スタッフや工場長のサポートがあったから。「わからないことがあった時、『○○さんに聞いて』と言われても制服で目元しか見えないので誰が誰だかわからなかったんです。名札をつけてほしいと工場長に相談したらすぐに対応してくれました。短時間勤務の私が言うこともちゃんと聞いてくれるのは嬉しかったです」。

仕事を続けて半年が過ぎ、最近では進んで30分や1時間程度残業することもあるそうです。「納品日時や納品個数の目標が記載されているものが掲示されているので、遅れているか等の現状がわかります。自分たちが帰った後のことを考えると、やれることはやりたいと思っています」。
家族にも山崎さんの思いは伝わっています。「先日は帰宅したら小学2年生の娘が『ふぅ、お茶碗を洗っておいたよ』とエプロンをして迎えてくれたんです」。家族の支えも自信につながります。

短時間勤務は業務負荷の軽減だけではなく生産効率の向上も

短時間勤務の導入により得られた変化は、忙しいラインの業務負荷の軽減だけにとどまりません。毎日の作業実績を記した作業日報をもとにすると、生産効率が上がっていることがわかっているそうです。
また、山崎さんのように後輩の面倒をよくみてくれる方がいることで、職場のコミュニケーションが活発になることも。工場長の阿部山さんは「今後も新たな勤務体系づくりなどに取り組んでいきたい」と話してくれました。

働けていない人が働けるように、行政機関で連携

短時間勤務の導入推進に取り組む岩手県沿岸広域振興局産業振興課長の二宮さんにもお話を聞きました。
「きっかけは、働くことをためらっている方が働けるように、という各行政関係者の思いがひとつになり事業化したこと」といいます。ただ事業とするばかりではなく、行政担当者が企業を訪問して短時間勤務導入の事例を紹介したり、一緒に求人募集の内容を考えたり、丁寧な伴走を続けてきました。その結果、現在では初めての訪問先でも「短時間勤務(プチ勤務)ならもう始めていますよ」という企業もでてきているそうです。
今後について聞くと、「プラシーズ釜石工場のように生産性向上につながる取り組みを広めたいです。また、県として取り組んでいる女性活躍推進などにもつなげていきたいですね」。
それらを推し進めるポイントについては「やはり行政機関の連携が欠かせません。今回の取り組みに限らず、釜石市、大槌町、ハローワークと月1回の定例会議を持ち、意見交換したり、実際に一緒に企業訪問したりすることで、今何が必要かを色々な役割からサポートできるようにしています」。
様々な事情で働くことをためらっている方でも働けるように、行政機関の連携で、地域の企業や住民が変わりはじめてきた岩手県釜石市について取材しました。

株式会社プラシーズ 写真5
岩手県沿岸広域振興局産業振興課長の二宮さん

「プラシーズ釜石工場」の事例から学ぶ人材活用のポイント

工場長直下の組織を作ること
配置先を固定せずに、日々の生産状況に応じて配置したり、短時間勤務でも多くのスタッフとコミュニケーションができるようになる。
仕事に慣れるプロセスを作ること
ブランクあり、未経験、短時間勤務の場合は特にいきなりラインに配置せず、梱包などの日常生活の中でもあるような仕事から徐々にできる作業を増やしていく。
短時間勤務の導入メリットの理解
勤務時間の長さで不公平感が生じないように、「業務負荷の軽減のため」といった短時間勤務の導入メリットを説明し、スタッフ全員が理解すること。

「プチ勤務」についての詳細はこちらをご覧ください。

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