人材活用事例 「わが社の"いいね!"」

2016年08月24日

#アルバイト・パート#外国人材#飲食業

多国籍での関わり合いから、一人ひとりがリーダーシップ発揮へ

物語コーポレーション メイン写真

今回クローズアップするのは「物語コーポレーション」

"個の成長"のために多様化を推進

「社員一人ひとりが自分で意思決定し行動することで『自分物語』を作ってほしい」
創業家で代表取締役会長・CMOの小林佳雄氏が社名に込めた思いは、一人ひとりの成長を強く望んでいます。同社では個の成長のために多様性は不可欠であるとの考えから、2008年頃より幹部候補として外国人採用をはじめ、人材の多様化を加速させてきました。徐々に各店舗のパートナー(アルバイト)でも外国人採用は進み、現在ではパートナー9,000名のうち230名が外国人と多様化は広がりをみせています。パートナーの約1割は外国人という店舗「焼肉きんぐ 簗瀬店」を取材しました。

  • ● 社名/株式会社物語コーポレーション
  • ● 創業/1949年12月
  • ● 本社所在地/〒440-0831愛知県豊橋市西岩田5-7-11
  • ● 資本金/26億9,934万円

「あたりまえをあたりまえとは思わない」

簗瀬店ではスリランカ、ネパール、ベトナム、中国と4カ国の外国人パートナーが働いています。店長の根本雄介さんは「国籍は関係なく、一生懸命働いてくれる人を採用の第一条件としていたら自然に今のようになりました」といいます。採用後は「公正に、公平に、特別扱いをしない」と日本人パートナー同様の対応を基本的な姿勢とし、従業員全員にもその考えを共有しています。

物語コーポレーション 写真1
「一生懸命働くという姿勢に国籍は関係ありません」(店長の根本雄介さん)

一方で、店長が外国人パートナーに対し丁寧に話しかけている様子もみられました。
たとえば、お客様が食事しているテーブルから空になったお皿を下げるとき、素早く下げることに気が集中してしまい、ガチャガチャと大きな音をたててしまったときは、「なぜ、そのような対応になったのか、その場ですぐに話し合います。育ってきた環境や文化が異なるので、日本人の感覚と本人の感覚が異なることもあります。ですので、単にダメと言うのではなく、考えを聞いてからその後どうしたら良いのかを話し合うようにしています」
その根底にあるのは「あたりまえをあたりまえとは思わないこと」、一方的な命令や指示ではなく、個と個で話し合うことを全従業員に求めています。

「多様性は店舗の活性化と個の成長につながっている」

店長は「外国人パートナーの存在は人と人との関わり合いを積極的にしてくれる」とも話します。
「もともと自分の意見をしっかり持っているパートナーが多いですが、外国人パートナーも率直に意見を言うので、パートナー同士のコミュニケーションも活性化している印象があります。そのような組織風土があるので、小さなミスやちょっとした認識の違いなどはあえて自分は介入せず、パートナー同士に任せ、自分たちで解決してもらいます。すると、自分たちで考える力がつく。店長の私だけがリーダーなのではなく、その場に応じて、一人ひとりがリーダーシップを発揮するようになります。それが一人ひとりの個の成長につながっていると思います」

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お互いの状況をみながら、ドリンクを作ったり、運んだりしています。

「将来の夢は通訳、お客様とコミュニケーションできるようになりたい」

簗瀬店で働く外国人パートナーは全員日本語を学習している留学生。その中のひとり、カルニさん(スリランカ国籍)は日本に来て3カ月経ったとき、友人を通して求人を知り、応募しました。スリランカでの日本語学習経験は1年と決して長くはなく、飲食業界で働くことも初めて。それでもカルニさんは「ドリンクを作ったり、メニューを運んだりするのは楽しいです。メニューは漢字が多く難しいですが、全部覚えました。やりがいを感じるのは、素早くメニューを運んでお客様から喜ばれるとき。私は誰よりも早く運べると思います!」と日々の仕事にやりがいを感じています。

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「働き始めてから日本語を聞く力が伸びました」(カルニさん)

働き始めて8カ月、今後チャレンジしたい仕事について尋ねると「ハンディー(注文を受ける際に使用する機械)を操作して注文を受けること、お客様と自然に話せるような接客ができるようになれれば・・・」と教えてくれました。また、「日本語を学習しているのは通訳になりたいから。そのためにも、日本語で自然に会話できるようになりたいです」と将来の夢も語ってくれました。 その思いは店長も理解しています。店長は採用面接の際に、なぜ日本語を学習しているのか、将来の夢についても必ず聞いており、本人が将来に向けて取り組みたいと思うことを大事にしながら日々接しています。

「一番重要なのは採用する側の考え方と受け止め方」

同社では毎年、お客様や仲間へのホスピタリティーを競う大会「ホスピタリティーパートナーズコンテスト全国大会」を開催しています。今年の簗瀬店代表は外国人パートナー。採用にとどまらず、活躍の場も国籍問わず、自ら意志を持つ人を支えています。
「店長として、外国人パートナーが活躍するために何か特別に工夫していることはありません。たまたまご縁があって、外国人を採用して、一緒に働いているだけです。一人ひとりが成長できる環境をつくるのが店長としての仕事です。今後は外国人パートナーが積極的に接客できるようにもっと教育に取り組みたいと考えています。言語や文化背景が異なるので、感覚で教えることができないというのは難しいことだと思います。しかし、外国人パートナーは理解しようと必死です。その気持ちに応えるためにも私たちも一生懸命に教えて、一人ひとりの成長に繋げていきたいと思います」

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簗瀬店は4カ国の多国籍の店舗各々の経験が混ざり合い、成長へ

外国人の採用・雇用は人手不足から必要性を語られることも少なくない中、物語コーポレーションでは経営理念の実践として、個の成長のため、人材の多様化に取り組んできました。これまでの取り組みで改めて重要だと感じたのは「採用する側の考え方と受け止め方」だといいます。外国人パートナーの定着も良くなり、最近は年間十数名を正社員へ登用。誰もが成長できる会社へ、一人ひとりが『自分物語』を描けるよう取り組みはこれからも続きます。

「物語コーポレーション」の事例から学ぶ人材活用のポイント

慣習や生活習慣の違いを意識
国による文化の違いはもちろん、慣習や生活習慣の違いがあるのは日本人同士でも当然なので、自身のあたりまえをあたりまえと思わず、考えを聞き、話し合うようにする
職場環境の整備・企業風土改革
小さなミスや認識の違いなどはあえて介入せず、パートナー同士で解決をするようにすることで、個々がリーダーシップを発揮できる組織につながる
採用・雇用・配置
本人が将来取り組みたいことなどの想いを聞いた上で、それに繋がるように意識して採用を行う